はじめての町と約束の店①
葵が作った菓子は、あっという間に騎士団中の話題になった。
翌朝。
食堂へ行くと、昨夜の料理番たちが目を輝かせて待ち構えていた。
「アオイ! 昨日のあれはないのかい?」
「また食べたいんだが!」
「今度はもっと大きいやつを頼む!」
口々に言われ、葵は思わず笑ってしまう。
「そんなに気に入ってもらえたんですね」
「当たり前だろう!」
騎士たちは真顔だった。
どうやら本当に衝撃だったらしい。
果物は食べてきた。
甘い味も知っている。
だが、あんなふうに姿を変えた甘味は初めてだったのだ。
ーー食後。
レオンが現れた。
「準備はいいか」
「準備?」
「店の候補地を見に行く」
そうだった。
昨夜の話は本気だったらしい。
「今日ですか?」
「今日だ」
即答だった。
◇◇◇
駐屯地から馬車で一時間ほど。
葵たちは王都に次ぐ大きさだという地方都市へ到着した。
高い城壁。
石畳の道。
赤茶色の屋根が連なる街並み。
異世界らしい景色に葵は思わず見入った。
「すごい……」
「おっきー!」
理央も大はしゃぎだ。
きょろきょろと辺りを見回している。
市場からは香辛料の香り。
焼かれた肉の匂い。
聞き慣れない呼び声。
まるで物語の世界だった。
「手を離すなよ、人が多い」
レオンが言う。
「はい。りお、ちゃんと手を繋ごうね」
「うん!」
小さな手がぎゅっと葵の指を握る。




