香果の祝福②
昼を過ぎた頃には、貴族達まで姿を見せ始めた。
「君がアオイか」
「素晴らしい菓子だった」
「ぜひ我が家の茶会へ」
次々に声を掛けられる。
葵は戸惑いながら頭を下げた。
「ありがとうございます」
ただ本人は営業が得意ではない。
褒められるたびに照れてしまう。
その姿がまた人を惹きつけた。
当然。
レオンの機嫌は悪化していた。
非常に。分かりやすく。
「団長」
護衛として同行していた騎士が声を掛ける。
「なんだ」
「顔が怖いです」
「そうか」
「そうです」
即答だった。
その時、一人の若い貴族令息が葵へ近付いた。
柔らかな栗色の髪。
整った顔立ち。
年齢は二十歳前後だろうか。
「アオイ殿」
「はい?」
「先程の菓子、本当に感動しました」
礼儀正しい青年だった。
「ありがとうございます」
「もしよろしければ祭りの後に王都を案内させていただけませんか?」
葵は困ったように笑う。
「えっと……」
どう答えようか迷っていると。
「必要ない」
低い声が割り込んだ。
全員が振り返る。
そこにはレオン。
無表情。だが圧が凄い。
「れおんさん?」
葵は首を傾げる。
なぜ出てきたのだろう。
「護衛対象だ」
レオンが言う。
「不用意な外出は認められない」
もっともらしい理由だった。
実際には半分くらい私情である。
「そ、そうですか……」
令息は気圧されたらしい。
苦笑して去っていった。
葵は不思議そうにレオンを見る。
「そこまで厳しいんですか?」
「当然だ」
「なるほど」
納得してしまった。
ーーやはり気付かない。




