香果の祝福①
菓子祭り当日。
王都は朝から活気に満ちていた。
広場には色とりどりの屋台が並び。
職人達が腕を競い合う。
見物客の数も凄まじい。
「ひとがいっぱい……」
葵は思わず呟いた。
おひさまのおみせのある町とは比べものにならない。
「すごいねぇ」
理央もきょろきょろしている。
小さな手はしっかり葵の服を握っていた。
「緊張していますか?」
ユリウスが声を掛ける。
「少しだけ」
そう答えながらも。
葵の目は楽しそうだった。
新しい食材。
新しい人々。
新しい挑戦。
職人として胸が躍る。
◇◇◇
今回出品する菓子。
その名は――
『香果の祝福』
南方の香果を使った特別なケーキだった。
ふわりと軽い生地。
香果のクリーム。
花のように飾られた果肉。
見た目も香りも華やかで。
まるで春そのものを閉じ込めたような一品だった。
開場と同時に客が押し寄せる。
「これが噂の!」
「綺麗……!」
「食べてみたい!」
歓声が上がる。
葵は手を止めることなく切り分けた。
一口。
そして。
「……!」
誰もが目を見開く。
香果の香りが広がる。
優しい甘さ。
軽い口当たり。
余韻の長い幸福感。
「美味しい……」
「なんだこれは」
「初めて食べた」
次々に感嘆の声が上がった。
◇◇◇
気付けば長蛇の列になっていた。
評判はあっという間に広がる。
「王都一番人気だぞ!」
「もう売り切れる!」
「急げ!」
祭り会場がざわめいた。
理央は誇らしげだった。
「ぼく、しってた!」
「何を?」
葵が笑う。
「ぜったいにんきになるって!」
胸を張る姿が可愛らしい。




