香果の祝福③
一方。
理央は全部見ていた。
「れおんさん」
「なんだ」
「いまの」
「?」
「やきもちだよね?」
レオンは無言になった。
理央は満足そうに頷く。
「やっぱり」
◇◇◇
夕方。
祭りの結果発表が行われた。
広場には多くの人々が集まっている。
葵も理央も。
ユリウスも。
レオンもいた。
「今年の菓子部門優勝は――」
静寂。
誰もが息を呑む。
「アオイ・ミナセ!」
歓声が爆発した。
広場中が拍手に包まれる。
「おめでとう!」
「当然だ!」
「香果の祝福、最高だった!」
葵は目を見開いたまま動けなかった。
「え……」
信じられない。
本当に。
自分が。
「やったぁー!」
理央が飛び付く。
「あおくん!」
「理央……」
ぎゅっと抱き締める。
胸が熱かった。
そして。
少し離れた場所でレオンは静かに微笑んでいた。
誰も気付かないほど僅かに。
だが確かに。
誇らしかった。
自分のことのように。
◇◇◇
その夜。
祝賀会へ向かう準備をしながら。
理央がぽつりと言った。
「あおくん」
「ん?」
「れおんさんとけっこんすればいいのに」
葵は盛大にむせた。
「げほっ!?」
一方。
レオンは飲んでいた果実水を危うく吹き出しかけた。
「り、理央!?」
「だって」
理央はきょとんとしている。
「いつもいっしょだし」
「ち、違うから!」
「そうなの?」
純粋な疑問だった。
レオンは額を押さえる。
理央は無邪気すぎる。
だが。
その言葉は。
誰よりも自分の心を大きく揺らしていた。




