香果のケーキ②
厨房へ入る。
まずは香果を切る。
刃を入れた瞬間。
ふわりと甘い香りが広がった。
「すごい……」
葵は思わず呟く。
まるで花畑のような香りだった。
果肉は柔らかい。
水分も多い。
そのままでは焼き菓子に向かない。
「一度煮詰めてみましょう」
鍋を用意する。
細かく刻んだ香果を鍋へ入れる。
少量の果実蜜。
ほんの少しの水。
弱火でゆっくり煮る。
木べらで混ぜるたび、果肉が崩れていく。
香りはさらに濃くなった。
「この段階でも美味しそうですね」
ユリウスが笑う。
「ええ」
葵も頷く。
「でもまだ足りません」
次は生地作り。
卵を泡立てる。
空気を抱き込むように。
何度も。
何度も。
白く軽くなったところへラル粉を加える。
混ぜすぎない。
泡を潰さない。
ふんわりと。
優しく。
生地は雲のように柔らかかった。
「ここで香果を入れるんですか?」
「少しだけです」
葵は説明する。
「香りを残したいので」
煮詰めた香果を少量加える。
そして焼く。
石窯の中で生地が膨らみ始めた。
焼き上がるまでの間。
二人は新しいクリームを作る。
ミルカ乳を冷やし。
ゆっくり泡立てる。
そこへ香果の煮詰め液を少し。
淡い金色のクリームが出来上がった。
「綺麗ですね」
ユリウスが見惚れる。
「香りもいい」
「成功かもしれません」
焼き上がった生地を冷ます。
半分に切る。
クリームを挟む。
さらに香果を飾る。
最後に花びらのように果肉を並べた。
完成したのは。
金色の花を思わせるケーキだった。




