香果のケーキ①
「れおんさん、やきもちなんだ!」
理央の爆弾発言によって。
部屋は完全に静まり返った。
レオンは固まっている。
葵は意味が分からず瞬きを繰り返した。
「やきもち?」
「うん!」
理央は元気よく頷く。
「おみせのおねえちゃんがいってた!」
嫌な予感しかしない。
「すきなひとが、ほかのひととなかよくするとやきもちなんだって!」
「り、理央」
葵が慌てる。
だが理央は止まらない。
「だかられおんさん――」
「寝る時間だな」
レオンが即座に遮った。
理央はぽかんとする。
「え?」
「もう遅い」
「でも――」
「寝る時間だ」
有無を言わせない声だった。
結果。
理央はあっさり布団へ入れられた。
「むぅ」
不満そうだったが。
旅の疲れもあり、数分後には寝息を立て始める。
部屋に静寂が戻る。
「……」
「……」
葵もレオンも気まずかった。
特にレオンは。
理央の言葉が頭から離れない。
子供の戯言だ。
そう流せれば楽だった。
だが。
図星だった。
「理央、最近いろいろ覚えてきましたね」
先に口を開いたのは葵だった。
「そうだな」
「変なことまで覚えちゃって」
苦笑する。
その横顔を見ながら。
レオンは小さく息を吐いた。
やはり気付いていない。
驚くほど。
綺麗に。
◇◇◇
翌日。
祭り本番へ向けた準備が始まった。
会場には各地の料理人が集まっている。
ユリウスの工房も忙しそうだった。
「アオイさん!」
朝から元気な声が飛んでくる。
「おはようございます」
葵も笑顔で応じる。
「例の香果ですが」
ユリウスが箱を差し出した。
南方の珍しい果実。
淡い金色の果皮。
花の蜜のような香り。
「少し試してみませんか?」
「ぜひ!」
職人の顔になる。
理央が見ても分かるくらい目が輝いていた。




