光の玉と騎士③
翌日。
騎士団の駐屯地で朝食をご馳走になった葵は驚いていた。
硬いパン。
肉の塩焼き。
野菜の煮込み。
どれも美味しい。
食後、理央がきょろきょろと辺りを見回す。
「あおくん」
「どうしたの?」
「ぷりんたべたい……」
切なげな一言に、周囲の騎士達が首を傾げた。
「ぷりん?」
「きいろくて、あまいの」
理央は当然のように答える。
だが、料理番の女性も不思議そうな顔をするだけだった。
「食後などに甘いものを食べないんですか?」
葵が尋ねる。
「甘いならルーナの実がありますよ」
差し出された果物は甘かった。
だが。
「お菓子とかデザートは?」
「……?」
通じない。
周囲の反応を見る限り、本当に存在しないらしい。
パティシエとして衝撃だった。
(こんなに食材があるのに……)
甘い文化が果物だけなんて。
もったいない。
理央も少し残念そうにしている。
「ぷりん、ないの?」
「ないみたいだね」
「そっかぁ……」
その日の夕方。
理央は慣れない場所に緊張していたのか、いつもより口数が少なかった。
食事の後も葵の服をぎゅっと掴んだまま離れない。
「あおくん、おうちかえれる?」
不安そうな声に、葵の胸が痛んだ。
「帰れるよ。きっと」
そう答えながらも確かな保証はない。
だからこそ、せめて理央を安心させたかった。
葵は決意して厨房を訪ねる。
「お願いがあります」
「なんだ?」
レオンが振り返る。
「理央のために、お菓子を作らせてもらえませんか」
「菓子を?」
「知らない場所でずっと不安を我慢していて……あの子の好きなものを作ってあげたくて」
レオンは少しだけ目を細めた。
そして頷く。
「好きに使うといい」




