光の玉と騎士②
風が吹いていた。
草原だった。
見たこともない大地。
二つの月。
遠くに広がる深い森。
「……ここ、どこ?」
理央が不安そうに服を掴む。
「あおくん……」
「大丈夫」
そう言いながらも、葵自身も混乱していた。
知らない場所。
知らない空。
どう考えても日本ではない。
葵は理央の手をしっかり握り、周囲を見回した。
このまま草原にいても仕方がない。
人がいる場所を探そう。
そう考えた二人は歩き始めた。
だが、どれだけ進んでも見えるのは草原と森ばかりだった。
道らしい道もなく、異世界へ来てしまったという現実だけが重くのしかかる。
「大丈夫だからね」
葵は何度も理央に声をかけた。
しかし、自分自身も不安でいっぱいだった。
もし人が見つからなかったら。
食べ物は。
寝る場所は。
考えれば考えるほど胸が苦しくなる。
それでも理央を守らなければならない。
二人は必死に歩き続けた。
やがて理央の足取りがふらつき始める。
「あおくん………もうあるけない」
小さな声に、葵は慌ててしゃがみ込んだ。
「ごめんね、理央。疲れたよね」
抱き上げると、理央は安心したように葵の肩へ顔を埋める。
「おうち、かえりたい……」
「うん。帰ろう。だからまずは人を探そう」
そう励ましながらも、葵の声は少し震えていた。
その時。
地面が震えた。
馬の蹄の音。
金属が鳴る音。
振り返れば、武装した騎士達がこちらへ向かってくる。
◇◇◇
「子供連れだと?」
「はい、団長」
先頭にいた男が馬から降りた。
銀灰色の髪。
鋭い蒼の瞳。
長身で、立っているだけで周囲の空気が引き締まる。
「私はレオン・ヴァルグラン」
低く落ち着いた声だった。
「君たちは何者だ?」
葵は事情を説明した。
もちろん信じてもらえるとは思わなかった。
だがレオンは最後まで黙って聞いていた。
「……転移者か」
「信じるんですか?」
「過去にも例がある」
あっさりと言われて目を見開く。
「今は保護しよう。子供もいる」
「ありがとうございます……!」
理央も安心したように葵へしがみついた。
その姿を見たレオンの表情がほんの少しだけ和らいだ。




