王都の菓子職人①
「ずっと会いたかったんです」
そう言って微笑んだユリウスに、葵は少し驚いた。
「僕にですか?」
「はい」
ユリウスは迷いなく頷く。
「クラウス様から何度も話を聞いていましたから」
金髪の青年は柔らかな雰囲気を纏っていた。
だがその瞳には職人特有の熱がある。
食材や技術を追い求める人間の目だった。
「私は王都で菓子工房を営んでいます」
「菓子工房?」
葵は目を丸くした。
この世界で菓子職人はまだ珍しい。
正確には、ユリウスは料理人だった。
だがクラウスの援助で果実を使った新しい料理を研究していたらしい。
「まだ菓子と呼べるものは作れていませんが」
苦笑するユリウス。
「アオイさんの話を聞いてから興味が尽きなくて」
そう言って見つめてくる。
純粋な尊敬の眼差しだった。
「よかったら会場を案内します」
「本当ですか?」
「もちろん」
葵は嬉しそうに笑った。
知らない土地で案内してもらえるのはありがたい。
何より同じ職人との話は楽しい。
「ありがとうございます」
その笑顔にユリウスも微笑む。
「……」
その後ろでレオンは黙っていた。
黙っていたが。
非常に機嫌が悪かった。
「れおんさん」
理央が袖を引く。
「なんだ」
「おなかいたいの?」
「違う」
「じゃあなんでむすっとしてるの?」
「……」
返答に困った。
五歳児に嫉妬しているとは言えない。
◇◇◇
会場は広かった。
各地の料理人。
職人。
商人。
様々な人々が集まっている。
「こちらは南方の果実です」
「へぇ……」
葵の目が輝く。
見たこともない食材ばかりだった。
黄金色の果実。
青い果実。
花のような香りを持つ木の実。
どれも魅力的だ。
「この果実は加熱すると香りが強くなります」
「面白いですね」
「でしょう?」
二人の会話は尽きない。




