王都への旅路③
その日の夜。
一行は街道沿いの宿へ泊まった。
理央は移動疲れで早々に夢の中だ。
小さな寝息が聞こえる。
葵は窓際へ立った。
夜風が気持ちいい。
「眠れないのか」
後ろから声がした。
レオンだった。
「少しだけ」
「不安か」
葵は少し考える。
「不安というより楽しみですね」
正直な気持ちだった。
「王都でどんな食材が見られるのか」
「どんな人が来るのか」
「考えるだけでわくわくします」
その瞳は輝いていた。
レオンは静かに見つめる。
本当に菓子が好きなのだ。
だからこそ眩しい。
「でも」
葵が続ける。
「レオンさんがいてくれて安心しました」
不意打ちだった。
「……そうか」
声が少し低くなる。
「はい」
葵は微笑む。
「ありがとうございます」
ただの感謝。
それだけなのに。
レオンの胸は妙に熱くなった。
◇◇◇
さらに数日後。
王都が見えてきた。
巨大な城壁。
果てしなく広がる街並み。
今まで見たどの町より大きい。
「わあああ!」
理央が歓声を上げる。
「おっきい!」
「すごい……」
葵も息を呑んだ。
王都は圧巻だった。
到着したその日。
商会の案内で祭り会場へ向かう。
多くの店。
多くの職人。
活気に満ちた空気。
そして。
「あなたがアオイさんですか?」
振り向く。
そこにいたのは若い男だった。
二十代半ばほど。
鮮やかな金髪。
端正な顔立ち。
どこか気品のある雰囲気。
「初めまして」
男は柔らかく微笑む。
「私はユリウス」
その視線は真っ直ぐ葵へ向いていた。
「ずっと会いたかったんです」
ーーその瞬間。
レオンの眉がぴくりと動く。
ユリウスは気付いていない。
葵も気付いていない。
理央だけが首を傾げた。
「れおんさん?」
「なんだ」
「なんかこわいかおしてる」
無邪気な一言だった。
だが。
副団長がいたなら間違いなく頷いていただろう。
王都へ来て早々。
騎士団長の恋敵候補が現れてしまったことに。




