王都からの客人②
クラウスはショーケースを眺めながら言った。
「できれば店内で食べさせてもらえないかな?」
その言葉に葵は少し困ったように笑った。
「実はうち、店内で食べるための席はないんです」
「そうなのか」
「普段は持ち帰りだけで営業しているので」
クラウスは残念そうにショーケースを見る。
すると葵は周囲を見回してから、小さな声で続けた。
「ただ……普段はしていないので内密にお願いしたいんですが」
「うん?」
「よければ奥の作業用のテーブルをお貸しします」
クラウスは目を瞬かせた後、楽しそうに笑った。
「それはありがたい」
葵に案内され、店の奥へ向かう。
「ありがとうございます」
「いえ」
そして運ばれてきた焼き菓子から順番に味わった。
一口。
そして静かに目を閉じる。
「……美味しい」
次にタルト。
ケーキ。
どれも丁寧に味わう。
やがて深く息を吐いた。
「なるほど」
「お口に合いましたか?」
「合ったどころではない」
クラウスは笑った。
「王都でも十分通用する」
王都。
この国で最も栄えた場所だ。
そこで通用すると言われる意味は大きい。
◇◇◇
その後もクラウスは何度も葵へ話しかけた。
「このクリームはどう作るんだい?」
「こちらの果実は?」
「菓子作りはいつから?」
興味津々だった。
葵も質問には丁寧に答える。
商品は違えど同じ商売人同士。
話していて楽しかった。
だが。
店の隅から冷たい視線が飛んでいた。
レオンだった。
たまたま巡回中だった。
本当にたまたまである。
決して様子を見に来たわけではない。
たぶん。
「団長」
副団長が小声で言う。
「なんだ」
「怖いです」
「何がだ」
「顔が」
レオンは無言だった。
だが視線はクラウスから一切離れない。
楽しそうに話す葵。
それを見つめるクラウス。
妙に距離が近い気がする。
気のせいかもしれない。
だが気になる。
非常に気になる。




