王都からの客人①
休日から数日後。
おひさまのおみせはすっかり町の人気店になっていた。
朝になれば焼き菓子を求める客が訪れ。
昼にはタルトが売り切れる。
最近では近隣の村からわざわざ足を運ぶ人までいた。
「アオイ君!」
「今日のおすすめは?」
「ミエルの実の焼き菓子です」
葵が答えると、常連達が嬉しそうに笑う。
理央も入口で元気よく手を振っていた。
「いらっしゃいませー!」
すっかり看板息子である。
◇◇◇
その日。
店の前に見慣れない馬車が止まった。
深い紺色の車体。
側面には金色の紋章。
明らかに高位の貴族のものだった。
周囲の住民達もざわめく。
「王都の馬車じゃないか?」
「どうしてこんな町に?」
扉が開く。
降りてきたのは三十代ほどの美丈夫だった。
栗色の髪。
整った顔立ち。
柔らかな微笑みを浮かべている。
「ここがおひさまのおみせかな」
穏やかな声だった。
◇◇◇
男は店内へ入るとショーケースを見て目を見開いた。
「これは素晴らしい」
並ぶケーキやタルト。
焼き菓子。
どれもこの世界では見たことのないものばかりだ。
「いらっしゃいませ」
葵が笑顔で迎える。
その瞬間。
男は少し驚いたような顔をした。
金にも見える淡い薄茶色の髪。
優しい瞳。
柔らかな笑顔。
噂以上だと思った。
「王都から来たんですか?」
「ああ」
男は頷く。
「私はクラウス・フェルナー。この店の評判を聞いてね」
王都で商会を営んでいるという。




