花冠と初めての休日①
理央が迷子になりかけた事件から数日。
おひさまのおみせは相変わらず賑わっていた。
朝から客足は途切れず、焼き菓子は昼前には売り切れてしまう。
「アオイさん!」
「今日のタルトはありますか?」
「ありますよ」
葵は笑顔で応じながら手を動かす。
忙しい。
けれど楽しかった。
客が喜び、理央が笑い、店が少しずつ町に根付いていく。
それが何より嬉しかった。
一方その頃。
理央は店の裏庭で真剣な顔をしていた。
「りお、なにしてるの?」
近所の女の子が覗き込む。
「ひみつ!」
理央は慌てて隠した。
小さな手の中には色とりどりの花がある。
先日のこと。
勝手にいなくなってしまい、葵とレオンを心配させてしまった。
だから。
どうしてもお礼がしたかった。
◇◇◇
夕方。
店を閉める頃になってレオンがやって来た。
最近は仕事帰りに寄るのが当たり前になっている。
「アオイ」
「お疲れ様です」
「今日はどうだった」
「焼き菓子が完売しました」
「そうか」
短い会話。
だが自然だった。
いつの間にか、そんな関係になっている。
「れおんさん!」
理央が駆け寄る。
「なんだ」
「これ!」
差し出されたものを見て、レオンが目を瞬いた。
花冠だった。
少し歪で。
編み方も不揃いで。
けれど一生懸命作ったことが伝わる。
「……私にか?」
「うん!」
理央が大きく頷く。
「このまえ、ごめんなさいとありがとう!」
真っ直ぐな言葉だった。
レオンはしばらく黙り込む。
花冠を見つめ。
理央を見つめ。
そして。
「……そうか」
ぽつりと呟いた。
それだけなのに、どこか声が優しい。
「つけて!」
理央が言う。
周囲が静まった。
騎士団長。
花冠。
似合わない。
誰もがそう思った。
だが。
レオンは何も言わず花冠を頭へ乗せた。
沈黙。
そして。
「ふふっ」
葵が吹き出した。
「アオイ」
「すみません」
全然反省していない。
肩を震わせている。
「似合います」
「そうか」
「はい」
理央も満足そうだった。
「かっこいい!」
レオンは何も言わなかったが、花冠は最後まで外さなかった。




