開店祝いのホールケーキ②
夕方になる頃には店の前へ人が集まっていた。
職人。
騎士達。
近所の住民。
皆が開店を楽しみにしている。
「すごい……」
「綺麗……」
ケーキを見た人々が息を呑む。
異世界では誰も見たことのない菓子だった。
葵は切り分けて配る。
「どうぞ」
まずは理央。
ぱくり。
そして満面の笑み。
「おいしいー!」
その一言に皆が笑う。
続いて周囲の人々も食べ始めた。
「甘い……」
「柔らかい……」
「果実がこんなに美味くなるのか」
「幸せな味だ」
感嘆の声が広がる。
葵の胸は温かさでいっぱいになった。
誰かを笑顔にしたくて菓子を作り始めた。
その想いはこの世界でも変わらない。
◇◇◇
「アオイ」
隣へレオンが立つ。
「はい?」
「開店おめでとう」
低い声。
真っ直ぐな視線。
その言葉に葵は少し驚いた。
「ありがとうございます」
「君なら成功する」
迷いのない言葉だった。
信頼が込められている。
葵は自然と笑った。
「頑張ります」
その笑顔を見たレオンの胸が静かに熱くなる。
守りたい。
幸せでいてほしい。
その想いは日に日に大きくなっていた。
◇◇◇
その頃。
理央は近所の子供達に囲まれていた。
「りお!」
「お菓子ちょうだい!」
「また来る!」
理央は得意げに胸を張る。
「ぼくのおみせだから!」
皆が笑う。
「看板息子だな!」
誰かが言った。
その言葉はあっという間に広まった。
翌日には町中で。
“おひさまのおみせの看板息子”
として理央は知られることになる。
そして。
店の開店と共に。
アオイの菓子は少しずつ、この世界を変え始めるのだった。




