看板息子と店の名前②
そんな様子を外から見ている人物がいた。
近所の若い女性達だ。
「素敵な人よね」
「アオイさん」
「優しいし格好いいし」
ひそひそ声が聞こえる。
レオンの眉がぴくりと動いた。
「……」
無言になる。
近くにいた副団長が察したように目を逸らした。
(団長)
分かりやすすぎる。
女性達は店へ入っていった。
「アオイさん!」
「今度開店したら絶対来ます!」
「楽しみにしてますね!」
葵は笑顔で応じる。
「ありがとうございます」
その柔らかな笑顔に女性達は頬を染めた。
店の外。
レオンは腕を組んでいる。
機嫌が悪そうだった。
「団長」
「なんだ」
「顔が怖いです」
「そうか」
自覚がない。
いや。
認めたくないだけかもしれない。
女性達と話す葵を見て、胸の奥が妙にざわついた。
理由は分かっている。
分かっているが。
認めるにはまだ少し勇気が必要だった。
◇◇◇
その夜。
二階の住居部分で。
理央は眠そうな目をこすりながら葵に抱きついた。
「あおくん」
「ん?」
「ここ、すき」
ふわりと笑う。
「れおんさんもいるし」
葵は少し笑った。
「そうだね」
「みんなやさしい」
「うん」
理央は満足そうに目を閉じる。
やがて規則正しい寝息が聞こえ始めた。
その小さな身体を抱きしめながら。
葵は窓の外を見る。
異世界へ来た日から、まだそれほど時間は経っていない。
けれど。
少しずつ居場所ができている。
店ができる。
仲間がいる。
理央も笑っている。
そのことが何より嬉しかった。
だからまだ気付かない。
レオンが向ける視線が、ただの親切ではなくなっていることに。
そしてレオン自身もまたーー
アオイを手放したくないと思い始めていることに。




