第二十一話
AC歴七百五十五年
コンスティテューションの旧市長屋敷大広間を利用してアンギルダンは南部攻略作戦会議を始めた。
「さて、どこから行こうかのう」
巨大な戦斧を傍らに置きながらアンギルダンは楽しそうに言った。
皇帝イノスから南部攻略の指示がきたのは、アンギルダンがコンスティテューションの兵や傭兵を加えて自身の軍を再編成している最中だった。
「まずはシスバーガリかコンパルドの何れかでございましょう」
と部下の一人が言った。
「ほお、なぜだ?」
「チュワモントに攻める場合、シスバーガリとコンパルドの双方から挟まれる可能性がございます。であれば先にそちらを潰しておくが定石かと」
なるほど、とアンギルダンは頷いてみせ、
「セシル、どう思う?」
副官のセシル・リヴァイアに訊ねた。
「私もその通りかと思います」
「ふむ。皆の意見、よくわかった。だが儂はまずチュワモントを落とそうと思うとる」
アンギルダンの言葉に皆がざわつく。
「その場合、シスバーガリとコンパルドの双方に挟まれる可能性はどのようにお考えなのですか?」
他の者の想いをセシルが代弁した。
「シスバーガリはくるかもしれんが、コンパルドの腑抜けは動かんじゃろう。上手くいけばあの腑抜けどもは戦わずして降参してくるやもしれんぞ」
「コンパルドが動かないという根拠は何かあるのですか?」
セシルが詰め寄る。
「共和制などと謳っておるからよ。そういうやつらは勝てる戦は喜んでやろうが、勝つか負けるかわからんとなると途端に動かなくなる」
アンギルダンは豪快に笑いながら言った。
「それが根拠……ですか?」
セシルは呆れながら言った。
「そうじゃな。多少賭けに出ることにはなろう。多くの者が消去法を好む。それは自分で選択することができんからじゃ。自分で選べないから何かと理由をつけて選択肢を減らし、さもそれしか選べなかったという。チュワモントを攻めれば挟み撃ちに合うかもしれん。だが、コンパルドを攻めればディエイカーが出てくるかもしれんぞ。ではシスバーガリか? シスバーガリを攻めればチュワモントが加勢にくる可能性は高い。シスバーガリにはフォンドの本家があるからな。良いかお前達。消去法は非常に有効なものだが、そこで有用な選択肢を切り捨ててはならん」
アンギルダンは真面目な顔で言った。
「説得力のありそうなお言葉ではありますが、結局のところ根拠はなく、アンギルダン様の直感というわけですよね?」
唯一その場に飲み込まれなかったセシルが言う。
「その通り。直感よ」
アンギルダンは豪快に笑った。
「もうひとつ付け加えるなら」
アンギルダンは一口酒を煽り、にやりと笑った。
「儂は危ない橋が好きなんじゃ」
翌年、アンギルダンはチュワモント王国へ宣戦布告。同時にコンパルド共和国へ降伏勧告を出した。
コンパルド共和国への降伏勧告はチュワモント攻略中に定期的に出され続けた。
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