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アーカー大陸:楔 活躍するやつほとんどジジババ  作者: 一戸雄基


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第十六話

AC歴七百四十七年


ラービングへ


 孤児院の移設、ご苦労だったね。皇帝イノスは大陸統一を本気で成し遂げるつもりのようだ。当面の目    標は北部地域掌握のようだが、モントンが戦場になるのは時間の問題だ。アルファルに空物件があったことも含め、良い機会だったように思う。


 その街、グレーリーホール王国領アルファルはモントンと比べても大きな街だ。グレーリーホール自体もチュワモントより大きいし、環境も悪くないはずだ。


 さて、本題に入ろう。

僕は君にアルファルのセーフハウス管理人になって貰いたいと考えている。

ギルドは常に優秀な人材を求めている。

同じように僕達も各地のセーフハウス管理人を求めている。僕達が主要な都市にセーフハウスを持っていることは君ならもう知っていると思うが、その特性上管理人を任せられる者は少ない。


君がアルファルの管理人になってくれるなら心強い。待遇は現職以上を保証する。表向きの事業は君の好きにして構わない。

 これはギルドの顧問としての依頼ではなく、僕個人からの願いだ。

 返事は急がないから、ゆっくり考えてみて欲しい。


                               クリス・ロジャース






AC歴七百四十八年


 依頼を終えたバジル達はオールドークへ帰る準備をしていた。ドレイクとBDが買い出しへ行き、バジルはカエンと街を歩いていた。


「パジー、あのこたちはなにをしてるの?」

 カエンは五歳になった。拾ったときの年齢などわからないから、出会ったときから換算して五歳だ。この頃になるとドレイクもバジルもこの子に対する愛情を隠すことはなくなっていた。


 カエンが指差したのは道の端に座り込んでいた孤児だった。ひどく痩せていて、無表情で物乞いをしている。


 ここはコンパルド共和国の首都タリオン。タリオンに限らず、大きな都市には少なからずこういう孤児達がいた。


「お金やご飯を貰えるのを待ってるんだ」

「どうして?」

「……親がいないからお金がなくて、誰かに貰わないと生きられないんだ」

 バジルは少し考えたあと正直に伝えた。


「どうしてパパもママもいないの?」

「それは色々あるさ。病気で死んでしまったのかもしれないし、獣や魔物に襲われたのかもしれない」

「カエンのママみたいに?」

「ああ、そうだな」

 母親のことは、これくらい話ができるようになると伝えておくほかなかった。


「でもカエンにはパパとパレーとパジーがいるよ?」

「ああそうさ、お前には俺達がいる。だからお金もご飯もある」

 カエンはどうにも納得できていないようだった。


「カエンのママはしんじゃったし、ほんとのパパはわからない」

「ああ。だが俺達がいる。俺達だってお前のパパなんだ」

「じゃあどうしてあのこたちにはパパもパレーもパジーもいないのかな?」

 バジルは言葉に詰まった。


「わたしとあのこたちはなにがちがうの?」

「それは……」

 こういう時に限って何故あの馬鹿はいないのだろう。


「パジー?」

「それは……運が悪かったんだな」

「うんってなに? パジーもかてない?」

「いや、俺達は運になんて負けないさ」

「じゃああのこたちもごはんをたべられるようになる?」

「カエンはあの子達にご飯をあげたいのか?」

「そうだけど、そうじゃなくって、パジーが〝うん〟よりつよくて、やっつけてくれたら、あのこたちもだいじょうぶかなっておもったの。だって〝うん〟をやっつけたら、あのこたちにもパパやパレーやパジーができるでしょう?」


 バジルの心が動いた。


 運が悪かった?

 親がいない?

 ならなってやる。俺が、俺達が、誰の親にもなってやる。


 お前達には運がなかった。だからそいつを自分の力でどうにかできるくらいまで育ててやる。


 ドレイクとBDがたくさんの荷物を持っているのが見えた。カエンはBDを見つけると、

「早く〝うん〟をやっつけてねパジー」

 と言って、一目散にBDの元へ走って行った。


 バジルはカエンがBDに抱きついたのを確認すると、振り返って歩き出し、孤児の元へ行った。


 タリオンで拾った二人の孤児に食事を与え、オールドークに戻る前に少し遠回りしてアルファルへ寄ることにした。バジルは道中でドレイクとBDに相談した。これから自分が何をしたいのかを。


「いいんじゃねえか。この際だから言うが、俺はずっとカエンを連れて歩くのもどうかと思ってたんだ」

 ドレイクはそう言いながら煙草に火をつけた。


 バジル達が仕事に連れて行くのでカエンにはどこかに定住するという経験がない。ほとんどが野宿で、時々街の宿に泊まるくらいだ。


 ただ、バジル達は野宿であっても出来るだけ快適な環境となるように努力してきた。


バジルの火で温かい食事を作り、夜はBDを布団に眠った。魔獣や獣、野盗などが近づこうものならすぐにBDが察知し、ドレイクが飛んで行ってあっという間に倒したし、体調を崩した時には三人が付きっ切りで看病した。オールドークに近ければBDが走ってシーリーの元へ連れて行ったこともある。


 行商人の一家や旅芸人の一座など、カエンと同じ境遇の子供がいないわけではない。その子達と比べても不自由のない暮らしをさせようと努力してきたつもりだ。


「この前熱を出した時だって、正直俺にはどうしていいか分からんかったし、俺達はただ傍に付いてただけだ。それでもよ、その分依頼をこなすのは遅れたろ?」

「ああ、そうだな」

「だからな、いっそどこかに落ち着いてそこでカエンを育てながら孤児共の面倒を見るってんならそのほうがいいと思う。何も毎回俺達全員で仕事に行かなくても何とかなるだろ」

 バジルの案にドレイクは賛成した。BDも了承しているようだ。カエンと共に旅をしてから二人が喧嘩することは減ってきていた。


 アルファルの孤児院に着いてイズに事情を話すと、イズは快く孤児二人を迎え入れてくれた。

 その後、四人はオールドークへ戻り、リトルアジア北部開拓の話を聞くことになった。






同年


 コンスティテューションのギルドから一羽の鳩が手紙を抱いて飛び立った。

 その鳩は四日かけてオールドークへ辿り着くと、すぐにギルド本部を騒がせた。



コンスティテューション支部より報告


 アンギルダン将軍がコンスティテューションを離脱。

 それだけでなく、彼は帝国軍の傘下に入りました。

 理由、動機、原因いずれも不明。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


kindle出版しているアーカー大陸:楔の本編をこれから毎日最後まで公開していきます。


少しでも面白いと思っていただけましたら、ページ下部の【ブックマーク】や【☆評価】を押して応援していただけると、本当に嬉しいです!よろしくお願いいたします。

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