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アーカー大陸:楔 活躍するやつほとんどジジババ  作者: 一戸雄基


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第十二話

ドレイク達はオールドークへ向けて忙しい旅を続けた。


 赤子はよく笑うようになっていたが、糞尿の処理は二人にとって楽しいものではなかった。近くに川か湖があればまだよかったが、ないときは半日ほど赤子の糞と共に歩いた。その時のBDの険しい表情ときたら、とても見れたものではなかった。


 三人は昼寝もままならなかった。赤子が泣くと、まずおしめを確認した。濡れていない時は孤児院で教えて貰った通り食事をさせた。


 穀粉を沸かしたお湯で溶かし、冷ます。なぜこんな手間をかけなければいけないのかと思いながらもバジルはその作業に慣れ始めていた。


 ドレイクが溶けた穀粉を指で触り、熱さを確かめる。熱くなければそれをそのまま赤子の口に持っていき舐めさせる。今から飯だぞという合図だ。赤子はドレイクの指を舐めると笑顔を見せた。ドレイクの指を掴んだまま離さないこともあった。そのまま眠りに落ちてしまうことも。そんな赤子を見て三人は自然と口元を緩ませていた。


 三人はオールドークに着いた後、赤子をどこに連れていくかの話で盛り上がった。

 海を見せたらどんな反応をするだろうか?

 オールドークで流行っていた冷たい甘味を与えたらどうなるだろうか?

 娼館には連れていけるのか?

 いや、まずはシーリーの所へいってBDに赤子の籠を乗せられる鞍を作って貰うのが良いか、と。いずれも、引き取り手が見つかるまでの短い間の話だった。


 それなのに目的地が近づくに連れて不思議なことが起こった。三人の会話が減って、足が進まなくなってきたのだ。


 オールドークへ着いたら、そこで良い引き取り手を探して赤子から離れる。三人は又、自由な旅に戻る。そのはずだった。なのに、この手間のかかる赤子との旅を終わらせたくないかのように目に見えて速度が落ちていた。


「なあ、孤児院とか里親ってのはよ、貧乏かもしれねえよな?」

バジルが話し出した。


「孤児院はまあ裕福ではないだろうが、里親ならこっちで選べる。金持ちそうなやつに預ければいいだろうが」

 ドレイクはいつものようにバジルを否定してしまう。


「そうか。それもそうだな」

 バジルが反論してこないことにドレイクは苛立ちを感じたが、なぜ苛立つのかは分からなかった。


 グレーリーホール王国の東、オールドーク西側入口で三人はクリスから伝言を受け取った。


 ギルド本部の執務室で待っているとのことだったが、恐らくフォンドの件で叱られるのだろう。いつものように聞き流す他ないと思いながら三人はクリスの元へ向かった。

 

オールドークは大きく四つの区画に分かれている。グレーリーホール王国に面したウェストオールドーク、ディエイカー王国に面したノースオールドーク、ノウサ連邦に面したイーストオールドーク。そして中央で海に面し港もあるセントラル。一般にオールドークと言えばこのセントラルを意味することとなる。大陸一栄えている巨大な都市は各区画から入ってセントラルに向かうだけでも時間を要する。セントラル以外の三つの区画は主に居住区となっており、今も増え続ける人口を支えるべく外周を広げ続けている。それに対して商いの中心地であるセントラルはこれ以上広がりようがなく、その土地価格は高騰の一途を辿っていた。その中でも一等地にあたり、潮風を感じることができる場所にギルドの本部はあった。


 開け放たれた大きな扉を潜り、冒険者でごった返す広間を通り過ぎる。その先の階段を上ってさらに奥の部屋へ向かう。ここまでくると喧噪も収まり、波風の音が聞こえてくるようだ。BDも当然のようについてきている。


「俺達だ。入るぞ」

 言い終わらないうちにバジルは扉を開ける。


「おかえり」

 書類仕事をしていたクリスは顔を上げて三人に言った。


「フォンドのことなら悪かった。でもよ、糞みたいな野郎だったんだぜ?」

「ああ、もちろんそれも話したいが、まずはその赤子をどうするか考えよう」

 クリスがBDの背に括られた籠を見ながら言った。


「僕とゴリアテでいくつか知人を当たってみた。子供を望んでいる裕福な家庭がある。会ってみるかい?」

 バジルとドレイクは顔を見合わせた。そのために帰ってきたのではあるが、話が急すぎる。二人とも口には出さないが、もう少し赤子と過ごせるものと思っていた。BDは露骨に嫌そうな顔をしている。ラービングの優秀さを余計なことだと思う日がくるとは思ってもいなかった。


「ああ、そうだな。それなら会ってみよう」

 ドレイクの口から本音は出てこない。バジルは何やら複雑な顔をしていた。クリスは引き出しから三枚の紙を取り出して、二人に渡した。


「里親候補の家の地図だ、どの家庭も問題はない。オールドークでも裕福な家だし、人柄も問題ない。念のために何日か監視もしたからね。もう話は通してあるから、あとは実際に会ってみて決めるといい」


 三人はクリスから地図を受け取ってギルド本部を出た。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


kindle出版しているアーカー大陸:楔の本編をこれから毎日最後まで公開していきます。


少しでも面白いと思っていただけましたら、ページ下部の【ブックマーク】や【☆評価】を押して応援していただけると、本当に嬉しいです!よろしくお願いいたします。

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