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アーカー大陸:楔 活躍するやつほとんどジジババ  作者: 一戸雄基


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第十一話

クリスへの手紙を鳩に託し、ラービングは孤児院へ行く準備をする。まだ昼でギルドの窓口業務も残っているが、そんなものは後回しだ。いつの間にか小走りになっていて、孤児院に着いた頃には息が上がっていた。深呼吸をして息を整えてから孤児院の扉を叩くと、中から小さくか弱そうな少女が出てきた。


「何か御用でしょうか?」

 扉を開けてエステルが尋ねた。


「初めまして。私、この街でドレイクさん達のお手伝いをしております。ラービングと申します」

 ラービングが丁寧に言った。


「はあ」

 エステルは曖昧な返事を返した。


「イズさんに御用でしょうか?」

 エステルが訊ねた。


「イズさんが別におられるということは、貴方はエステルさんでしょうか?」

「はい? そうですが……なぜご存じなのですか?」

 エステルは訝しんだ。


「はい。ドレイクさんやバジルさんのお手伝いをしている者ですから」

「イズを呼んできますね。少々お待ちください」

 イズなら分かるのだろうかと思いながら、エステルはイズを呼びにいった。この間にラービングは三人が名前を名乗っていないのではないかと推測した。


「私がイズですが……」

 聞いていた通り、細い女が出てきて言った。


「イズさん、初めまして。私、この街でバジルさんやドレイクさん、BDさんのお手伝いをしております。ラービングと申します。以後どうぞ宜しくお願い致します」

 ラービングは丁寧に言った。


「はい。宜しくお願い致します。どうぞ中へ」

 ラービングの丁寧さにつられながらイズは言った。


 大小ばらばらな椅子と、大きいが古い洋卓のある大広間に案内されるとラービングはお辞儀をしてイズの対面にあたる小さな椅子へ腰を降ろした。


「本日は今回の寄付金と、お手紙をお届けに上がりました」

「寄付ですか?」

イズが訊ねた。イズの後ろには少女がしがみついている。その少女にラービングは訊ねた。

「貴方はノエルさんですか?」

 少女は頷く。


「BDさんのお腹で眠るのはどんな感じでしたか? 私も一度でいいからあの毛に包まれて眠ってみたいと思っているんです。教えて頂けませんか?」

 ラービングは笑顔で訊ねた。


「すごく、温かいです」

 ノエルが笑顔で応える。あの大きな犬と、男達の友達なのだろう。イズとエステルも気付いたようだ。


「どうにもこうにも、あのお二人は雑でいけませんね。まさか名乗りもしていなかったとは」

 ラービングが呆れながら言った。


「すみません。私達もお名前を頂戴していなかったもので……」

 イズとエステルが申し訳なさそうに頭を下げる。


「いえいえ、あなた方に全く非はありません。それでは早速ですが、今後の寄付についてお話させて頂きます」

 ラービングはそう言って、今後毎月自分が寄付金を届けにくる旨を伝えた。


「子供達は十名ほどと伺っておりますので寄付額については十分であると思っております。しかしながら不測の事態もおありでしょうから、その際は都度ご相談ということで如何でしょう」

「そんな、もう十分すぎます」

「ありがとうございます。それではそのように」

 イズの答えを了承と判断したラービングが言った。


「いえあの、これでは十分過ぎるといいますか、多過ぎます」

「イズさん。毎月渡したからといって、全て使えというわけではありませんよ。それに、一つ条件もあるんです」

 ラービングがにやりと笑って言った。


「条件……とはなんでしょうか?」

 イズが恐る恐る訊ねた。


「月に一度、必ず子供達全員を連れて城下の定食屋で美味い飯を食べること。です」

 ラービングは胸を張って言った。


 イズとエステルは涙が込み上げてくるのを耐えようとしたが、出来なかった。


「最後にこちらのお手紙をお届け致します」

 そう言ってラービングは手紙をイズへ手渡した。エステルが涙を拭きながら覗き込む。


〝当該孤児院をエイトフレンズの名に連ねることを承認する〟

〝クリス・ロジャース〟

〝シーリー・シュワイマー〟

〝足跡〟

〝ルールー・ルークウェット〟

〝メイガン・リュウ〟

〝アーノルド・バーストン〟

〝エマ・グリーン〟


推薦者

〝バジル・オーレリア〟

〝肉球〟

〝ドレイク・ルブラン〟



「ご確認頂けましたでしょうか。イズさん、エステルさんの同意が得られましたら、これより皆様はエイトフレンズの保護下に入ります。皆様に害を与える者があれば彼等が排除します。それが例えフォンド家であろうと、リーチェン家やカデラック家であろうと、国であろうと」


 ラービングは続けた。

「宜しければ即座にアーカー大陸中のギルドへ通達が出される手配が整っております。イズさん、エステルさん、彼等に名を連ねることに同意頂けますでしょうか?」


 これは役得だと、ラービングは思った。アーカー大陸中に数多くいるギルド職員の中で、こんな仕事を任される者がいるだろうか。こんなに心を温められて給金を得るだなんて、役得という言葉では表現しきれないくらいだ。けれど、ここに至るまでにそれなりの苦労はあったのだから、この役くらい自分がやっても良いだろう。


 ラービングはイズ、エステルからの返事を持ってギルドへ戻ると、すぐに用意していた手紙に二人の署名を添えて鳩を飛ばした。


 伝書鳩はオールドークへ飛び、そこから各地のギルドへ飛んで、通達が出されることだろう。


 それにしても、とラービングは思った。


 あの乱暴者の二人が孤児院に寄付をするようになるとは思ってもいなかった。資産は十分にある。今から死ぬまで遊んで暮らすことも可能だろう。けれどあの二人が求めているのは金ではない。いつだって暴力の矛先を探している。そんな二人が孤児院に寄付を……。


 あの赤子の影響なんだろうか。だとすれば、あの二人にはもう少し赤子と共に過ごして欲しいものだとラービングは願った。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


kindle出版しているアーカー大陸:楔の本編をこれから毎日最後まで公開していきます。


少しでも面白いと思っていただけましたら、ページ下部の【ブックマーク】や【☆評価】を押して応援していただけると、本当に嬉しいです!よろしくお願いいたします。

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