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前足をぽんと立方体の上に置いてみる。特になにかが起こるなんてこともない。
んーと、ミケちゃんが扱ってたときの様子を思い出すにたぶんこれ、手で触れてる部分から透明立方体の中に魔力を込めていくと、その部分から少しずつ色が無色透明から白に変化していきます、って道具だよね。
……わたしでも使えるのかな。
ころん、と前足で立方体を転がして、側面の透明部分が上になるようにする。なんとなく、銀色の枠で覆われてるところより透明なところのほうが魔力のやらの通りがよさそうじゃない? あまり関係ないかもだけど、気分の問題ってやつです。
あたらめて立方体の上にぽんと前足を置く。これで、ええと、集中集中……集中ってなにに集中すればいいんだこれ。魔力とか言われてもそんなものが体内にあるなんて考えたこともなかったから、自前の魔力とかいう代物がわたしにも備わっているのかどうかもまず不明である。とりあえず立方体に触れてる前足の肉球に意識を集中すればOK?
こういうのってさ、漫画やアニメなんかじゃわりと定番シチュだよねー。身体の中を血流のように巡る力を思い浮かべて――とか、丹田のあたりにあるほのかに暖かい力を意識して――とかそういう。
まあ、わたしにはなーんにもなかったわけですが。
集中はちゃんとしてましたよ。前世で読んだり観たりしたフィクションからの知識も参考にしてみましたとも。でもなんにも起こせませんでした。身体が熱くなってくるとかそれまで見えてなかった光が認識できるようにとか、なんにもなし! もちろん立方体も無色透明のまま。どうやらわたしには魔法チート能力は授けられてないようです。知ってた。
いや、期待してたわけじゃないですよ。さすがにチート能力は期待してなかったけど、チートじゃない才能というか、せめて透明キューブがほんのり白くなるくらいは起きてもよくない?
これってさ、そのへんの猫に魔力なんぞねーよってこと? それともわたしが自分の魔力をちゃんと捉えられてないとかでコツを掴めばワンチャンある感じのやつ? 前者か後者かで大違いなんだけど、どう判断すべき?
うーん、魔力、魔力、魔力ねえ……。魔力ってどんなものなんだろう。そもそもこの世界の一般的な猫って魔力を持ってるものなんだろうか。というか猫以前に人間にしても、魔力量に個人差があれど万人が魔力を有しているパターンなのか、魔力を持って生まれてくるのは少数の選ばれし者だけパターンなのか、どっちなんでしょうねこの世界。
思案しながら立方体をころころ転がす。うーん、転がして遊ぶならやっぱりボールの形したものが一番だなー。サイコロ型はシンプルに転がしにくい。もっと小さければよかったんだけど、このサイズだとちょっと力込めないと転がらないし、テーブルの上面はあまりつるつるしてないため、滑らせるように動かそうとしてもあまりすんなりいかない。
結論、金属枠つき透明立方体は猫の玩具としてはイマイチです。
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