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ミケちゃんさー、人の話はちゃんと最後まで聞きなよー。
ちょっと呆れてるわたしが半眼で見守る中、ミケちゃんが両手で持つ透明立方体が、端っこのほう、ちょうどミケちゃんの手に近いところから徐々に乳白色に濁っていく。二十秒ほどかけて全体が白くなったと思ったら、ぼんやり光りだした。光るといってもほんとにぼんやり、よーく見れば光ってるなーこれレベルの、小さな蝋燭にも負けかねないくらいの弱々しい光だ。
「ほら! できただろ!!」
「あー、そうだなー、えらいえらい」
ジルドナート青年、その反応はテキトーすぎじゃない?
ミケちゃんもわたしとまったく同じ感想を抱いたようで、「ちゃんと見ろよ! 本なんか読んでないで!!」とキレ気味に文句を言っている。
「見てるって。――ちょい時間はかかってるが、ちゃんと発光までいけてるってことは、基準量の魔力を体外に放出することはできてるわけだろ。で、そっちとこっちとで、要求される魔力の量の最低限はまったく同じだ」
こっち、と言いながら、ジルドナート青年は最初の立方体をテーブルの上に置いて、とんとんと指先で叩く。
「必要量の魔力はちゃんと自前で持ち合わせていて、内から外に向けて動かすこともできてる。なら、魔力操作に不慣れなせいで、狙った一点に魔力を集めることすらできてないのがうまくいかない原因じゃねえの。いまのお前の場合はたぶん、魔力を込めるまではできていても中で分散したままなんだよ。魔力をある程度集められないと白点は出ない。とりあえずぼやぼやでもなんでもいいから点が出せるようになるまで地道にやれとしか。この段階じゃあ魔力を集めたい場所をしっかり意識しましょうね、以外に言えることねえんだよ。ああ、あと、そっちのやつももっと短時間で光らせられるようになるまで反復しとけー」
この金属枠つき透明立方体の形をした魔法学習教材、段階別に違う機能のものが用意されていて、一つをクリアしたら次のやつ、って具合に学習を進めていく感じのものっぽい。ミケちゃんがあとから持ち出したほうの立方体が、おそらく学習者が一番最初に挑戦する教材なのだろう。
ミケちゃんが二個目の立方体もテーブルの上に放り出したので近くに寄ってまじまじと観察してみたけど、こっちもただのすごい透明なサイコロ型物体にしか見えないなー。
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