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ミケちゃんはジルドナート青年の対面、真正面よりちょっとだけずれている位置に席を確保し、両手をテーブルの上に伸ばして、なんか勉強をさぼってだらけている小学生みたいなポーズになっていた。
ミケちゃんの手には、形、サイズともにルービックキューブっぽい物体がある。一辺が五、六センチ前後ほどの立方体だ。もっとも、ルービックキューブらしいのは形状と大きさだけで、ミケちゃんが持っている立方体のほうはルービックキューブのようにガチャガチャ動かせそうな感じではない。
銀色をした金属製の枠の中に、ガラスか水晶かアクリル樹脂――アクリルがこの世界にあるかどうか知らないけど――のような、つまりは透明な立方体が収まっている。立方体の上と下の二面は金属の枠で覆われ、残る四面が枠の中の透明物質そのまま剥き出し。なんかああいう置物ってあるよねー、樹脂の中に植物の葉っぱや花を閉じ込めて、って。ミケちゃんが手に持ってる立方体は、見たところ中にはなんにもない、ただの透明なサムシングだけど。
テーブルの上に顎を乗っけて、じーっと手の中の立方体を眺めているミケちゃん、をじーっと眺めるわたし。その四角いやつって見つめていてなにか面白いものなの?
ミケちゃんがいまなにをしているのか、それともなにもしていないのか、そこんとこちょっと判断つかないんだけど、ともあれいまのわたしは猫らしい行動をしてみたい気分なので、猫らしくミケちゃんの視線を遮るように金属枠つき透明立方体の上に覆い被さり――って、猫らしい行動ってどんなんだっけ? なんとなーく、人間の手元作業を妨害してたら猫っぽい、みたいな漠然としたイメージなんだけど、これ合ってる? 合ってるよね?
どうもミケちゃんの視線は立方体の側面に向いていたようなので、そこを意識して自分の胴体で側面を隠すように、ってやってたら、テーブルの向こうから伸びてきたジルドナート青年の手で後ろ首を掴まれ引き剥がされてしまった。
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