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欲を言えば色々とジルドナート青年に訊きたいことはあるんだけどね。迷宮内の魔物ってわたしが見たあの紙粘土製アート作品風お魚みたいなの以外にどんなのがいるのー?とか、すっごく気になるし。
にゃーにゃーだけでジルドナート青年にそこまで察しろというのは無茶振りもいいところなので、いまは諦めるけど。
お疲れ様の意を込めて本をめくっているジルドナート青年の右手に顔をすりすりしてみたら、「頼むから本で爪とぐなよ」と言われた。失礼な、そんな行儀の悪いことしないですよ。わたしはそんじょそこらのキャットとはひと味違うのです。
とはいえ、ここはご期待に応えて普通の猫らしいことしてみるべき? 書籍に対する破壊行為はしないけど、猫っぽく本を読む人間の邪魔をするとか。
まずは控えめに、ジルドナート青年が読んでいるページの端っこに顎を乗っけてみる。いきなり本のど真ん中にでーん、というのはちょっとねー。
ジルドナート青年が読んでいるのは、B5ほどの大きさの本だった。硬そうな表紙で、厚さは六十枚綴りのノートくらいかな。中身は見開きにずらっと記号と短めの文章、あるいは単語が並んでいるという、どういう内容の書籍なのかわたしには推測すらできない代物だ。ぱっと連想したのは化学式とか化合物の構造式とか編み図とかそういう、まず使われている記号の意味などを知っておかないと見てもイミフで終わるようなやつ。
もしかしてこれ、なにかのテキストの類だったりする? ジルドナート青年、勉強中? もし真面目に読んでるなら邪魔するのは悪いかなあ。
ジルドナート青年の読書妨害は一旦保留して、じゃあバスケットの中で気持ちよさそうに爆睡しているリオニルの上にでも乗っかってみようかな。こいつには遠慮する必要はない。なんせ先に睡眠中わたしを下敷きにしてきたのはリオニルなので。
いやでも、暖をとりたい季節でもないのに、なにが嬉しくて自分より体温高い生き物にひっつかねばならんのかという気持ちが少々。
それと、リオニルって翼ある爬虫類じゃないですか。こいつの翼って皮膜じゃないですか。こいつの上に乗っかって、うっかり猫が翼に爪立てちゃったりしたら、皮膜にぷすっと穴空いたりしない?
さすがに竜の翼が猫の爪ごときで穴空きになるとかないわー、と思いたいものの、なんかこいつの翼の皮膜、すっごく薄く見えるんだよねえ。
まあ、仮に仔猫の爪サイズの穴がぷすぷす空いたところで、飛行に悪影響があるとか穴が塞がらないとかはないだろうけど、一度可能性を考えちゃうとねー。
……となると、残っているのはミケちゃんである。
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