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ちょっと思うんだけど、魔法の治癒促進効果のおかげで少し酷めの怪我でも少し休んでいればきれいに治るっていうのはいいことなんだけどさ、怪我して迷宮から出て治療兼休憩時間を少し取って回復し次第また迷宮へ、って精神的に負担になったりしないんだろうか。さっき負傷したばかりの場所へすぐに舞い戻るわけでしょ? ここの探索者たちみんなメンタル鋼鉄製ですか。
そしてジルドナート青年、ヒーラー系魔法の使い手ってことは後方支援要員でしょ。救護活動するならまず自分自身の安全確保からが鉄則でしょ。なんでこう何度も派手に負傷してるんだろう。それだけ迷宮内の状況がよろしくない?
怪我を負っている左腕は使わず、右手だけでテーブルの上に広げた本をぱらぱらめくっているジルドナート青年のほうに近づき、少々思案する。怪我している左腕は触れないほうがいいよねえ。いえ、ちょっかいかけたいとかじゃなく、これなにがあってこうなったのー?と質問したいだけなんですが。怪我したところをたしたししながらにゃーにゃー鳴いたら察してくれないかなーなんて。
開かれた本のそばで考えていると、ジルドナート青年に「ん? これが気になるのか?」と訊かれた。
そういうわけじゃないんだけど。いや、言われて初めてページを見てみたら、見開き二頁がなんかびっしり細かく記号と文字で埋め尽くされていて、これはこれで気にはなるんだけど。
とりあえず初志貫徹ってことで、テーブルの端っこギリギリまでジルドナート青年に寄っていって、布で覆われた左腕に向かって片前足をちょいちょい動かしながら鳴いてみた。
「にゃあ。にゃあ~ん?」
と、ミケちゃんがあまり可愛くない顔でケッと笑った。
「兄ちゃん、猫にもバカにされてるじゃん」
は???
いやいやいやなに言ってますよミケちゃん。勝手に猫の代弁しないでいただきたいんですけど!?
断じて馬鹿にしてるとかないからね!? わたし負傷者に追い討ちかけるほど性格悪くないですから!
「まあ、しょうもないドジ踏んだのは事実だからなあ」
ほんと馬鹿になんてしてないので! わたしが怪我人見て嘲笑ったの前提で話すのやめい。
顔面の怪我のときもそうだったけど、腕の怪我もこれ肉がざっくり抉れるんじゃないかなー、な感じ。想像するだけで貧血になりそう。本人は呑気な顔で本読んでるけど。
いま、迷宮の内部どうなってるんだろ。途切れることなく臨時救護所に人が送られてくるってことは強ーい魔物が五十二枚目の銅版の中に生息してるってことだよね。
わたしがうっかり迷宮に入っちゃったときに見た紙粘土細工っぽい魔物はそんなに脅威に思えなかったんだけど、あれが実はめちゃくちゃ厄介な魔物だったのか、はたまた紙粘土細工もどきは前座で弱めだったけどそれ以外が強い魔物だったのか。
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