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オマケ①(新版)ギルドでのお茶会はおやつの時間のみ!

新版の一章ら辺のオマケストーリー

 

 まだ魔物(モンスター)を倒すクエストを受けられるようになる前のある日のこと——。

 〈配達を手伝って欲しい〉というクエストを達成した姉妹は、夕日で空が茜に染まる中、帰路に着いていた。目指すはギルド。達成した報酬を受け取りに行くところだった。


「はひゃう〜、疲れたぁ……」


 ふらふら歩く妹を気遣うように笑いながら、イノリはまだまだ余力のある足取りで隣を歩いていた。


「体力ないなぁー。でも、ひのちゃん頑張ってたもんねー。仕方ないかぁ……」


「……お姉ちゃんの体力がおかしいんだって。一日、街を荷物を持って行ったり来たりしてたら普通はヘトヘトよ。……ううん、体力もだけど、お姉ちゃんは良くあんなに魔法を使って平気だよね」


 体力がないと言われてムッとなったヒノリが、棘のある声で言い返した。思い返すは力尽きたヒノリが持っていた分の荷物まで風の魔法で浮かした運んでいる姉の姿だ。


(……あれ? )


 これでは何も言い返せない事に気がついた。

 悔しいが、姉への苛立ちは胸の奥にしまい込む。


「えー……んー……別にひのちゃんみたいに気持ち悪くなったりはしないんだよね」


 顎に指先を置いて下唇をツンツンするイノリ。なんでだろう? と、首を傾げている。


(……お姉ちゃんは、体力ともに魔力お化けなの……?)


 うわぁ……と顔を引き攣らせたはずのヒノリは、「まぁお姉ちゃんだから何でもいっか」なんて結論に至る。ルーくんが居れば『あるじ、そんなんでいいのカ?』と心配されるところだったが、残念ながらルーくんは今現在、召喚されていない。この場には誰もヒノリの打ち切った思考回路を止めてくれる人や召喚獣はいなかった。


「——はい、今回の報酬のお金です。お疲れ様でした」


「はーい、ありがとうございます」


 ギルドの受付で依頼の達成を報告したイノリはお金を受け取った。

 一日程、街の中を駆け回った甲斐はあったようだ。麻の袋の中には硬貨がぎっしりと詰まっていた。これで数日は宿屋の食堂で、女将の旦那さんが腕によりをかけて作ってくれる美味しいご飯が安心して食べられる。


「ん……、なんかいい匂いする……」


 一日歩いてお腹が空いているせいか、イノリの鼻腔が敏感に食物の匂いを嗅ぎとってしまったようだ。すんすんと鼻を鳴らして臭いを体内に取り込んだイノリは自分の空腹を自覚する。


「あぁ、窓口の後ろには待合室と兼ねた食事スペースがありますから。大体の人は窓口で受け取った依頼料を使い果たすくらい食事をしていますね……依頼終わりってきっとお腹が空いているんでしょうけど……」


「へぇ〜……。ひのちゃん、依頼料も入ったし、なんか食べていかない?」


「……全部、使うのはダメだからね?」


「わかってるよ。それにお姉ちゃんも全部使うつもりはないから安心して」


 ヒノリも宿屋に戻る前に空腹を満たしておきたかった。姉の意見に反対することなく、それでも窓口のお姉さんの言葉に一抹の不安がよぎったので少しだけ姉に念を押して、食堂へ向かった。


「うわぁ……!! 軽食からガッツリ系まで、しかもスイーツもあって迷うな〜!! ひのちゃんは何にする?」


「私は、スイーツ。ケーキ食べたい」


「じゃあ、お姉ちゃんもケーキ食べようかなー」


 ギルドの食堂は先に注文と会計を窓口で済ませ、その後に隣の受取口で料理が出てくるシステムになっていた。注文と会計をする窓口の近くに木の看板が置かれ、そこにはメニューが書かれている。腰を屈めながらイノリとヒノリはそれぞれ注文を決めた。


「柑橘フルーツのケーキに、木苺とベリーのチーズケーキです」


 木のトレーに木の皿の上には、水々しい柑橘の果物やそのクリームが飾りに使われた果肉入りパウンドケーキと、真っ赤なソースのかかる乳白色のチーズケーキが乗せられていた。木製のコップには、湯気を立てる紅茶が淹れてある。


「うわっはぁぁぁ〜……っ。美味しそう……!!」


「うん、うんっ。ごきゅり……」


 瞳を輝かせた姉妹は、浮き足立って席に着く。


「で、では……いっただきまーす」


「いただきます……」


 待ちきれないと席についた途端にケーキへフォークを指して一口、頬張る。


「んー!! 美味しいっっっ」


「っ……っ……!!」


 薔薇色に染まった頬でヒノリは何度も、頬に手を当てて幸せそうに微笑む姉の言葉に頷いて同意した。宿屋の店主が作るスイーツも美味しいが、ギルドの食堂の味も負けず劣らず。


「……ひのちゃんのも、ちょっと食べたい……」


「私も、お姉ちゃんのちょっと食べたい……」


 お互いのケーキを交換して、また一口頬張る。酸味の効いたパウンドケーキはサッパリとした味なので、疲れた体でも受け入れやすく寧ろ食が進んでしまいそうだった。ベリーの甘酸っぱいソースや木苺を乗せたチーズケーキは、疲れた体を甘く優しく包み込んでくれる。ちょっぴり酸っぱい味はアクセントで、飽きずにペロリとたいらげてしまった。


「……ふぅ……食べちゃった……」


「うん……食べちゃった……」


 食べ終わり、空になった皿を姉妹は揃って見下ろす。


「あ、あと一個くらいなら……」


「お姉ちゃん、ずるい。私も……!!」


 ———結果、姉妹はスイーツでお腹を満たして宿屋に帰る事になった。


「……スイーツでお腹いっぱいで夕ご飯が入らないだってぇ? 帰りが遅いと思えば……そーいうことかい」


 腰に手を当ててふくよかな女将が、鬼と化した。

 食堂のテーブルに座って、軽食を注文した姉妹は「すみません……」と小さな声で謝罪していた。


「全く……仕方ないねえ。特別に野菜を盛ったサンドウィッチとシチューにしてあげるよ。冒険者なら栄養をきちんと考えな!! 」


「はぁ〜い……」


「わぁ、やったー。ありがとうございます女将さん!!」


 項垂れるヒノリ、調子良くお礼を言うイノリに、女将はため息をこぼした。イノリが女将に軽く頭を叩かれて「あいてっ」と、声を漏らした。


「今度また同じ理由で夕食を軽く済ませようっていうなら……わかってるね?」


「は……はい……」


 腕を組み鋭く睨んでくるお怒りモードの女将を前に、頭を手で抑えていたイノリは怯えながら頷いた。


(……食事を提供する場所同士だし、私たちの健康面の心配はしてくれているんだろうけど、対抗意識もあるのかも……?)


 はわわ……と姉の後ろで怯えていたヒノリは、頭の片隅でそんなことを考えていた。


 その夜、姉妹はギルドの食堂で食べるのはお昼か15時のお茶をする時だけにしようと決めたのだった。


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