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第十八話「ルペーニ島へGO!第一島人は海ウサギと兎族でした」

海の音といえば?

 


 ♪


 ♪

 ♪



 エメナルド色の海の上空を白い鳥が飛ぶ。

 潮風が少女の髪を揺らし、優しく太陽の光が包み込む。

 波同士がぶつかり、消えていき、穏やかな音を立てた。


 絶好の出航日和だ。


「リ―アー!だいじょぶだよー。海、きれいだよー?」


「怖い。怖い、こわい、こわい。悪いけど、いのり。本当に波は穏やかなのか?何か海の中にモンスターとかがいるんじゃないのか……?」


「あははっ。大丈夫だよ。リアは怖がりだなーもー!船から落ちるなんて、どれだけ身を乗り出せばできるの?」


 あははっと屈託なく笑ったいのりに続いて、ひのりもリアを元気付けようと口を開く。


「リア、今日は波も穏やかだし、天気もいいから。船が急に揺れることもないと思う。心配なら、手をつないでおこうか?」


 すっかり怯えて船の柱に抱き着いて離れないリアを、いのりとひのりが手を差し伸べて海がよく見えるデッキへと誘う。


「うう、手を、離さないでくれよ?絶対!絶対だからな!?」


「うん、うん!任せて、任せてー!」


「ほ、本当に怖いんだからな……?うう、じゃあ……」


 自信満々のいのりが頼もしくて、リアがゆっくり手を伸ばした。姉妹二人に挟まれて、固く手を結ぶ。

 潮風が当たるデッキまでは、直ぐだったが、その間にリアの手は手汗でべっしょり濡れていた。


「海は、きれいだと思うんだけど。あんまり近くに行くのは……」


「え?手すりあるし、もう少し行っても大丈夫だよー」


「い、いや。あたしは遠慮しておくよ。二人で楽しんでくれ」


 デッキの中央の柱の周りに置かれた木製の椅子へ腰かけたリアは青白い顔で二人の手をはなすと、再び柱に抱き着くようにしがみついてしまった。こういうときに限って、気を緩めたときに限って、海の中へと落ちるのが目に見えているらしいリアは、そこからテコでも動く気はない。


「そう?わかった!怖くなったらまた呼んでね!いつでも駆けつけるから!」


「リア、ルー君と一緒にいれば安心だから。お姉ちゃんの言う通り、何かあったら、すぐに呼んでね」


「ううーありがとう。いのり、ひのり。はぁ……すまない」


 背中の紐が交互になって縛られている、腰にベルトを付属した翠色のワンピースをひるがえし、いのりが船の端へと駆けよっていく。短い茶髪をハーフで緩くお団子にまとめて涼し気に結い、太陽のチャームが付いた桃色の紐がカチューム代わりに頭上を飾っていた。


 その姉を追って、ひのりはルー君にリアのお守りを頼み込み、「わふん!」と契約獣が頼もしく頷いてくれたのを確認してはリアにルー君を預け、海を見に少女に背を向けた。姉同様、舟に乗っての観光に心が躍っているらしく、ひのりの服装も普段の冒険者然としたものではない。薄紫色のジャンパースカートと白いシャツを着こみ、黒く長い髪を左右でハーフツインならぬハーフのお団子にして月のチャームが揺れる白いシュシュで結んであった。


「ホントに、海、苦手だったんだね。リア」


「みたいだね。うーんでも、折角なら楽しんでもらいたいなー。ね、ひのちゃん」


 手すりに手を置いて、太陽の光を反射する透明な海を眺めながら、姉妹は度々背後を振り返る。ルー君を膝に置くリアも普段の鎧姿ではなく、青と白の肩が落ちたワンピースで、裾がひだでレースをつくっていた。銀色の髪は編み込んだハーフアップにして青いりぼんで飾られている。腰には常に帯刀しているが、それ以外は神獣と戯れる少女なんて絵画にもなりそうな具合だ。


「うん。でも、私、こういうときに落ちるのがリアな気がするの」


「あははっ、たしかにーっ。モンスターがばあんって出てきちゃったりして……んえ?なにあれ!!」


「え……!!」


 まっさかーと会話に花を咲かせて船の上を満喫していた姉妹はぎょっと目を開く。


「いのり!?ひのり!?どうしたんだ!なにかあったのか!?」


 二人の様子に慌てて——へっぴり腰でめっちゃくちゃ臆病風を吹かせながら、駆け付けたリア。抜刀して構え、ひのりが指さす方へと視線を向けた。


「白い、ウサギ?」


「ああ、なんだ。海ウサギか」


 リアがほっとしたのか剣をしまい、手すりに手を置こうと、して、手すりがなかった。

 ガコンっと思い切り二の腕を手すりにぶつける。


「い”ったあああああっ」


「落ちなくてよかった……。じゃなくて平気!?リア」


「うわあああああ!?あ、よかった。落ちるんじゃないかと。じゃなかった。痛そう……。ていうかウサギが海をはねてるよ!?」


 わちゃわちゃ。


「いたた。海ウサギだから、海を跳ぶんだよ。野ウサギはモンスターしかいないから気を付けた方がいいぞ。あたしも、本で読んだことしかなくて、実は海ウサギを見るのは初めてなんだけどな」


「ふむ。いるか、的な感じなのか」


「イルカ、野原にいないけどね」


「イルカ?」


「あのくらいの大きさで、細くて、海の中を泳いで跳んで、イメージカラーは青の動物かな」


 あまり日常で見ることがなかったためか、いのりの説明もだいぶ雑だった。ほとんど伝わらず、リアもイメージが難しく、目を閉じて眉間にしわを寄せた。


「あれくらい、可愛い動物で賢そう」


 いのりも空に指で描いて見せるが説明力が皆無で結局お蔵入りになってしまった。ひのりは、あとで紙に描いて見せてあげようと思った、まる。


「おーい、嬢ちゃんたち、こっち来てくれー」


「なんだろう?」


 船員に呼ばれた三人。どうやら貴重な文化財が残る島であり、民俗文化が色濃い島であるルペーニ島が近いらしい。入島する前には島の住人が、海ウサギでお出迎えをするついでに、乗客の人数を確認したり、島を荒らさないように事前注意を行うとのことだ。デッキの中央には数名の乗客が集まってきていた。


「はい!みなさん来てくれてありがとう!!島に入る前に、ボクから注意事項を話させてください!」


 乗客の目の前に海ウサギから降り立ったのは、ルビーのように赤い瞳、乳白色の髪、人懐っこい甘い顔つき、そしてなにより


「えへへ!じゃあ話すね!!」


 長い頭から生えるウサギの耳、ショートパンツから見えるのは小さなウサギの尻尾が特徴だった。


「りあ。あの子……」


「ひのりも初めて見るか?多分。あの子は海ウサギをテイムする兎族の少年みたいだ」


「あの子が、兎族……」


 少年の背後には10匹ほどの海ウサギがぴょんぴょん跳ねている。もしかしてあの数を全部あんな小さい子がテイムしているのだろうか。ひのりは、素直に関心してしまう。後で聞いたら、コツとか教えてもらえるかなと観光気分だった心に、ほんの少しだけ勤勉さが生まれていた。








エイン「ざざーんかな(波がよせてかえす音)」オフィーリア「海、はまだ見たことないので、お兄ちゃんのザザーンでお願いします!」

いのり、ひのり、リア「パシャンパシャン(海ウサギが跳ねる音)」

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