十四話「レアアイテムとってきてくれませんか!?」(依頼主)
これは、依頼主の裏話。
♪
♪
♪
ルバルダン国内、某貴族屋敷にて、真っ白な小さいテーブルの上に勉強道具を広げる少女のソワソワ——スリッパを脱ぎ捨て、椅子の下で足の指をモジモジと——している様は、勉強に集中していないのが丸わかりだ。
国内のギルドに【ダンジョンボスモンスターのレアアイテムの採取】を依頼してから丸1ヶ月。少女の元にはレアアイテムが届いたという情報が全く入ってこない。それ以前にあまり依頼を受けてくれる冒険者もいなかった。
少女が心落ち着かないのは、もうすぐ勉強の休憩時間が迫っているからである。お茶の時間の午後15時、執事が紅茶とお茶菓子を運んでくるのだが、依頼についての報告は、いつもその時間に行われているのだ。
「お嬢様入りますよー。……はぁ。お嬢様。いい加減、僕が来るたびにその期待の眼差しを向けるのはやめてくれません?もう一ヶ月ですよー依頼をギルドに出してから。レアアイテムが届いた時はちゃんと報告しますから、勉強に集中してくださいって」
数度部屋のドアをノックして入室してきたのは、呆れた目線を主人に向ける燕尾服の青年だった。細身でまだ少年らしさが残る顔立ちをした藍色の髪の青年には、少女の姿が、飼い犬が帰ってきた主人をドアの前で尻尾を振って待っているように見てしまい、午後のお茶の準備をしながら眉間を指で摘んだ。
「でも……。今日がその日かもしれないでしょう?」
頭に金の刺繍入りのリボンをつけた少女が、程よく巻かれた髪ごと首を傾げる。人の悪意を知らなそうな顔立ちで、ほわわーんとコスモスの花が浮いていそうな桃髪の少女だった。
「お嬢様、この間受けてくれた冒険者からはレアアイテムが取れなかったと連絡がありましたよー。次いでに依頼を降りるそうです」
「えぇ!?そ、そうなの!?ど、どうしてなのかしら。あんなに報酬は弾んだのに……。冒険者とは、冒険と報酬に目が眩むものではなかったというの……?」
「深刻そうな顔で、失礼なことを言わないでくださいね。課題を倍にしますよー?フレアお嬢様」
「それは困るわ、ロイ」
フレアは課題倍増を企む執事へ満面の笑みを浮かべ嗜めようと試みる。彼女の専属執事であるロイは、やれやれとため息を零した。もう少し真面目に勉強をしてもらいたいものだ。
「全く。なんだって、あんなレアアイテムを欲しがるんです?」
フレアが欲しがっているレアアイテム。それは、ダンジョンのボスから稀にドロップできるという……。
——ボスモンスターの額にあるという結晶
「だ、だって。結晶なら加工して手元に置いておけるでしょう?そうしたら、私も冒険に行った気分にいつでもなれると思ったのよ」
両手を組み、緑色の瞳を夢や期待に輝かせ、フレアは「それにダンジョンで冒険者様が取ってきたものだもの。なんてロマンチックなの!」とフワフワな絨毯の上、裸足でぴょんぴょん飛び跳ねた。
ロイは頭痛がするのか頭を押さえた。眉間に皺が寄る。
「……装備と訓練ゼロのまま、いきなりダンジョンに一人で向かおうとした行動力を思えば、レアアイテムを手に入れるくらいで、もうあんな無茶と危険な事をしないでいてくださるなら……こちらとしても有難い話ですね」
「ふふっ、でしょう?」
諦め、気落ちした執事を目の前に、コロコロと鈴を転がしたような笑い声をあげた一人の少女の夢が詰まった依頼を、いのりたちが受注したのは、この次の日のこと。
14話は、夢見る行動派のお嬢様、フレアこと私が頂いてしまったわ!




