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第十五話「夢と冒険、どちらもロマンと読むみたいです」

後書きはまた誰かが貰っていきました。

 

 ♪



 ♪

 ♪



「え!!本当なの!?ダンジョンに向かってくれる冒険者さんが見つかったのね!」


 細い猫足を持つ純白の椅子から勢いよく立ち上がったフレアが、その顔を花が咲く如く、嬉々としてほころばせた。待ち望んでいた報告に心が躍っているらしい、小さな白いテーブルに手をつき、小さく数回跳ねて、ピョンピョンはしゃいでいる。



「はい。今朝がた、ギルドから受注を確認したと連絡がありましたよー。はぁ、よかった。僕も他の人もひと安心ですよーホント。またお嬢様が単身でダンジョンに潜るんじゃないかってこちらは毎晩毎夜眠れなくなるくらいでしたから」



 胃の辺りを押さえるロイに対し、少女は不服気に唇をすぼめる。


「む。(わたくし)はモンスターに何もできないってわかったばかりなのよ?あんな無謀なことはもうしないわ。残念だけれど」


 最後に笑顔になって一言付け足さなければ、一応の反省と計画の断念はしていそうなだったものだ。



「頼みますから、やめてくださいよ?在庫の箱は後何箱あったけ……」


 胃薬の在庫を頭の中で数えるロイを置いて、フレアは窓を開けてバルコニーに立った。


 湾曲した乳白色の手すりに肘を付きながら、依頼を受けてくれたという冒険者に想いを馳せる。どんな人なのか、男の人であれば出会いの予感に胸が高鳴り、女の人であれば憧れが募のるし、いいなと素直に思う。


 なんにせよ。今度こそ、レアアイテムが手に入るといいのだけど、なんて昼間の街中を見下ろして考えていた。




            △▼



 一人のお嬢様の夢や期待、憧れ、希望、が詰まった依頼を受注した いのりたちは、国の外にある塔型ダンジョンへと足を踏み入れていた。


 ダンジョンの中は、地下ダンジョンのように岩壁というわけではなく、外壁にタイルが貼り付けられた建物の内側、粘土質の土壁だ。


 階段を登る際の壁には通気口としての役割を担う四角い穴が空いていて、さらに燭台に火が灯り、ダンジョン内の明るさは充分にある。


 螺旋階段を登りきり、扉を開くと新たな階層の空間が待っていた。見通しが悪くなっているが次の螺旋階段まで迷路の如く分岐通路や道幅などもまちまち。ただし、モンスターだけでトラップがないところが良心的。



「うーん、レアアイテム。すぐ手に入るといいね」


 道を間違えた姉妹たちが元の道をてくてく引き返していた。


 いのりのレアアイテムへの期待を寄せる発言に、ひのりが言葉を返す。


「そんなに簡単に入手できたら、レアじゃないから、どうなんだろう。ねえ、リア、どのくらいで出てくるものなの?」


 冒険者としてセンパイのリアに、首を傾げた ひのりが尋ねる。が、しかし、聞く相手を少々間違えた。


「……生まれてこの方、いや、冒険者になって以来、レアアイテムなんてドロップしたことがない、あたしに聞いてしまうか……ひのり」


 ずーん。


「!!ご、ごめんなさい……リア」


「いや、いいんだ。むしろあたしがいる事で、レアアイテムが出なかったら……んにゅ!?」


 申し訳なさそうに眉尻を下げるリアの頬を両手で掴んだ いのり、その心中は「またそんなこと言うんだ!」だ。


 この手の話になるとリアはいつも自分のせいだー姉妹に申し訳ないーなとど落ち込んでしまう、そんなことは全くないし、姉妹がリアに対して——そりゃあ少し、残念な体質ではある気がするが——悪い感情を抱くわけがない。


 これは、まだまだコミュニケーションが足りませぬなぁ。と顎髭の長い学者のようなイントネーションで、ふむりふむりと いのりは心の中で勝手に解を出した。


「むが、むが、いにょり?」


 当惑するリア。

 いのりは、ニッと悪戯な笑みを浮かべた。


「ふふふふー!スマイル、スマイル!!今日レアアイテムが手に入らなくても明日も明後日もあるよ!まだまだルペーニ島への船が出るまで時間があるから大丈夫!きっとドロップできるから♪」


「こ……根性論じゃにゃい?……それ」



 まさかドロップできるまで一か月間ダンジョンに挑戦し続ける気なのだろうか、リアは頬をいのりに引っ張られたまま、ごもごも口を開く。



「今日が失敗してダメなら明日!明日がダメなら明後日!絶対そっちの方が成功したときに、達成感をいっぱい感じると思わない?お得だよ!!」



 結局、いのりのお茶目な笑顔に頷くことで頬が解放されたリア。ダンジョン内の階段を登りながら「それじゃあ、ボスの部屋まで行ってみよう!」と張り切って先行する、前を歩く姉妹を見上げた。


「わふっ」


 ひのりの側を歩くルーくんが、彼女に敵探知を知らせた。


「あ、お姉ちゃん。前方からモンスターの気配。うん、この距離なら片手間にいけそう」


「ほんと?じゃあひのちゃん、お願い」


「ん、任せて!」


 ルーくんと契約していてテイマーであるひのりは三人の中で一番索敵に向いていた。矢を放つ ひのりは、弓を武器に持つが故に長距離攻撃にも特化しつつあり、さらに弓を構える姿勢や表情も凛々しく様になってきているようだ。


 目の前で和気あいあいとしている姉妹の姿の微笑ましさに、リアはパーティ内最年長の立場から温かい眼差しと笑みを向ける。



「そういえば、ひのちゃんとも昔、宝探しやったことあるよね。お姉ちゃんが宝を隠して、ひのちゃんが見つける探検者ごっこ!」


「わっ、懐かしい……」


「宝探し?二人とも、ごっこでそんな危険なことを!?」



 モンスターを倒し終わった三人はダンジョン内を進んで——塔型のダンジョンの階段を登って階数を増やして行った。思い出話に花が咲く。


「え?ううん、すごく安全安心なお家の中だよ?」


「おままごとっていう遊びをしていたの。それで!最終的にお姉ちゃんが宝物を持ってて!散々家の中を探させたくせに。あれはすごく悔しくて泣いて怒った記憶がある……」



 ひのりに今でも根に持っていそうな視線を刺さるように浴びた いのりは「あー、そんなことあったっけね」と気まずそうに黒目を逸らす。ちょうどゲームで遊びたいときに、幼い ひのりが遊んでとせがんできたので、いのりとしては両者が楽しめるよう子供ながらに策を考え出したつもりだった。結果として妹を泣かせてしまったけれど。



「あはは……っ。ほら、ちょっと宝探しは色々準備が大変そうだったから。で、でもお家の中を大冒険してる感じだったんじゃない?」


「もう、怒ってないですー」


「ひのちゃん、まだ根に持ってない?」


「持ってないっ」



 思い出をひっくり返しては当時の気持ちが蘇ってしまう ひのり。幼い自分が感じた悔しさに、少しだけ意地けてみる。姉が言う通り大いに楽しく、十分に大冒険だったのもなんだか、上乗せして口惜しい。しかも、仲直りした後は二人仲良くゲームで遊んで、結局楽しくていい思い出になっているのが、やっぱりちょっぴり悔しかった。



「……あははっ。あは、あははっ♪二人とも、可愛らしい子供だったんだな」


 暫く付いて行けず、やりとりを見守っていたリアが、あまり変わらない二人の幼少期を想像できてしまって、それが随分とまぁ可愛らしい想像だったのか、頬を桃色に染めて可笑しそうに、愛おしそうに笑った。


 リアのそんな笑い声に、仕草に、姉妹の喧嘩ムード、ひのりの意地っ張りな時間も、直ぐ緩和されて……。


「ぐるるるる………わうん!!」


「るーくん?」


 空気が和らいだのも束の間、るーくんの索敵範囲にまたしてもモンスターがかかる。いのりたちが視認できる範囲でも敵が出現していた。


「少し数が多い!二人とも、視認外にもモンスターがいることを考えて、余力を持って戦闘するんだ!」


 腰を落とし、剣を構えた1番戦闘経験のあるリアが、二人へと指示を出す。


「「らじゃー!!」」


「たぁああああああああああ!!」


 リアがモンスターを倒すのが切り火となり、姉妹もモンスターへと駆け出した。いのりは炎の魔法でモンスターを焼失させ、ひのりはルーくんとのタッグでモンスターを消滅させながら弓矢で全員の援護を。


 パーティメンバーは三人、されどチームワークが強い三人組であるのが、他の冒険者が見ても一目瞭然だ。


 順調に、ボス部屋まで攻略した姉妹たち。ボスモンスターを苦戦しながらも討伐。


——けれどこの日。パーティの誰にも、依頼されたレアアイテムをドロップすることはなかった。



「レアアイテムだもんね。ボスの傾向がわかったのは良いことだし、また明日、挑戦してみよう!!」


「……そ、そう……だな!」


 失敗しても諦めない、七転び八起き精神の いのりに対してリアの表情が曇っていたのを心配したひのりは、小さくなった小型犬サイズのルーくんを胸に抱きしめ、顔をモフモフの毛並みに埋めるフリをしてひっそりと見つめる。


 リアが悩んでいる。すごく、悩んでいる。ひのりはそう思い悩んで難しそうな顔付きで小さく唸った。


「ん?どうかしたのか?ひのり。そんなに、あたしの顔を見て……」


「へあ!?ううん。なんでもないよ」


 明るく笑っているが、リアは絶対落ち込んでいる!とひのりは頭を悩ませた。

 何かを言っても、逆効果になる気配しかない。そんな彼女に、なにをしてあげたらいいのだろうか。


 なんだかリアの落ち込んでいる姿には、酷く既視感があって。ひのりも自分が姉の足を引っ張っているのではないかと、異世界に来てから落ち込んだものだ。


「——!もしかして」


 それなら、やるべきことは一つしかない。雷が体に落ちたように、発想が舞い降りた ひのりは姉たちの腕をグイっと思い切り引っ張る。ごちんっ☆いのりとリアの頭がぶつかる音とともに、うめき声があがり、困惑気味な顔をした いのりとリアは頭をさすっては、目尻に涙が浮かぶ。


「「あう!!」」


「い、いたぁ……。どうしたの?ひのちゃん」


「ひ、ひのり?」


 うん。絶対これ。これしかない!衝動的になったひのりは止まらない。姉たちの顔を見上げて、かわいらしく愛らしく、妹の特権だというかのように、


「もう一回!今日はもう一回!!上に行きたい!!」


 幼い子供のような声音で、30階ほどある塔の上を指さし、我儘を言った。


「え……。ひのちゃん。なにか悪いものでも食べたの?」


 妹にもう一度30階分の階段を上がる体力があるようには思えず、いのりは怪訝双な顔で、本気で心配になってしまう。明日は雨か雪か、雷か。上から下まで、ひのりを観察し触診すれば、ベチリと叩かれてしまった。


「食べてないよ、もう!!」


「お、落ち着こう、ひのり。もう夕方だ。今からもう一度行くなら帰りは夜だ」


「行こう!それでも!」


 輝く瞳で、ひのりは姉たちを見上げた。

 そんな活動的なひのりが珍しく、いのりたちは困惑してしまい。


「お願い、お姉ちゃん、リア。私、どうしても今日はもう一度挑戦したいの……!」


「わふ!!」


「こんにちは!えぇと…花冠×ツインテール少女、オフィーリアです。(カンペ)えっと……その、久しぶりに登場できましたっ。本編には出ていなくてもこの話の後書きはオフィーとお兄ちゃんが頂いちゃいましたよ……!」


「え?!ちょ、引っ張らないでくれよオフィー。こほん、俺はエイン。森の家に住んでいて、冒険者をしてる。後書きはとりあえず貰っておくよ」


「えへへ、やっぱりオフィーがお兄ちゃんと後書きを頂いちゃえましたね……えへへ…♪」


そういえば7月7日は、いのりの誕生日ですが投稿が間に合わなそうなので、こうして後書きにひっそりと記述するのです。7月7日は、いのりのお誕生日ー

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