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精霊魔法と光族

「さて、まずヌシには魔法の成り立ちから教えていくの」


 最初の授業でクリムゾンが言い出したのはそんな言葉だった。


 覚えて来いと言った呪文は何だったのか。


「まあ案ずるな、本格的に魔法を教えるのは半年は先のことになろうからの」


「え、そんな先の話なの?」


「ワシが教える魔法は一般的な魔法とは異なるの。だが宮廷魔導師辺りや魔族の連中なんかはこのレベルの魔法を使うの。ヌシは才能があるからもう少し早くやれるかもしれんが、基礎をみっちりやらんとの」


「えー、才能あるんなら別にいいと思うんだけどなぁ」


「バカもん、才能があるからこそ基礎を疎かにするなど愚の骨頂だの。ヌシのような者に応用から教えでもして成長が歪んでしまえば、その才能を十全に引き出すことはならんの。そうなれば大きな損失となるの」


 魔法の歴史よりバンバン派手な魔法を教えてもらったほうが俺としてはうれしいんだけどな。


「まったく若いモンはすぐ結果を求めるの。ヌシは顔に出やすい、黙ってワシの話を聞くが良いの。きちんと覚えないと、次のステップには進んでやらんからの」


「はいはい、わかりましたよ、師匠」


 何て言ってみたものの、クリムゾンの魔法についての教義は結構面白くて惹かれるものがあった。


 まず俺も使ったことのあるティアドロップやトーチの魔法なんかは一般的に『精霊魔法』と呼ばれ、人族の世界的に魔法といえばこの精霊魔法となる。


 精霊魔法は全て詠唱が必要となり、これは魔法の成り立ちにより決められた事で、詠唱によって精霊と対話をすることで魔法を発動させている。


「詠唱の頭には必ず火の精霊よ、水の精霊よなんて言うであろう?あれが精霊と人をつなぐキーワードなんだの」


 人、というか、生物全般は魔力を持っており、それを精霊に渡すことで魔法を使うことができる。その際、魔法を使ってもらう相手、内容などをまとめたものが詠唱となるのだ。


「詠唱とは古来よりの契約文なんだの。一語一句違えられぬし、渡す料金…つまり魔力も決まっておるの。それを超えて魔法は使えぬし、安く買い叩くこともできぬの」


 以前俺が中庭で色々試したとき、魔力を増やして威力を上げようとしても、逆に減らして威力を落とそうとしても魔法が発動しなかったのは、魔法の契約とやらから逸脱していたって事みたいだ。


正式な注文で正式な料金さえ払えば正しい結果を行使してくれるのか。なんというか、精霊ってお役所仕事っぽい?


「ちょっと待って、それって呪文さえきちんと唱えられるようになれば、世の中魔法使いだらけになっちゃうじゃん」


「ま、有り体に言えばそうだの。もちろん、唱えられたところで使い方がわからなければ無駄になる魔法も多いがの」


「えー、マジか。何かちょっと魔法のイメージが崩れるなぁ」


 俺の中の魔法のイメージは、変幻自在の自由を体現したようなものの方が強い。生きるための自由度を広げられてこその魔法だと思うのだ。


 しかし精霊魔法はそれとは真逆、コマンド式RPGの呪文みたいなもの…しかも詠唱は長く、威力もステータス依存というわけではなさそうだ。


「だが実際は魔法使いと呼ばれるものはそう多くはおらんの。魔法そのものは生活に根差しておるのはヌシも知っておろうが、それでも魔法使いと呼ばれるものの数が少ないのはなぜだかわかるかの?」


「うーん、俺が見た事があるのは三つだけだし、他の魔法は使える人が少ないから?」


「ま、大雑把だが当たりかの。世に魔法使いが少ない理由は大きく二つ。一つは魔法使いとして生きていけるほど魔力を持った者が少ないことだの。もう一つは、強力な呪文は魔力ある者が唱えれば幼子でも発動してしまうからの、危険なものとして大衆の目に届かぬものが多いの」


 なるほど、そもそもセイフティがザルすぎて使う側が気をつけなきゃいけないんだな。


「だから専門機関でもないと魔道書なんかはないのかな?」


「生活魔法なんかの魔道書はそこそこ出回ってるはずだがの。ヌシが知っておる魔法が三つだけというのも少なくて驚いたほどだの」


「そこは、うちの父の魔法嫌いから来てるのかもなぁ」


 生活魔法を使えたところで魔法使いとは呼べないってことか。


「ちなみに、魔法使いって人たちはどれくらい魔法が使えるの?」


「そうさの。冒険者として使えるレベルになれるのは百人に一人といったくらいかの。そのレベルで使える術士は少ないから、常に引く手数多だの」


 おぉっ、意外や意外。生活に根付いてるだけあって魔法使いは多いかと思ったけど、意外に需要過多なんだな。ならなおさら魔法をしっかり覚えなければ。


「まぁそれはヌシらでの話だがの。他の種族になれば割合も変わってくるが…ま、そこは追々だの」


 気になるところではあるがそこから先は脱線が過ぎるだろう。


「元々魔法というものは一部の種族と精霊の特権だったの。それを精霊との契約で魔力さえあれば使えるようにしたのが〈光族〉(オラリア)と呼ばれる存在だの」


 オラリアはもとより特殊な技能として精霊と対話することが出来たらしい。そして、魔法の力を他の種族にも使えるようにするため契約によって精霊魔法の『呪文』を生み出したのだとか。


「あらゆる種族の呪文を?でも、種族ごとに言葉って違うんだろ?」


「もちろんだの。ありとあらゆる言葉に呪文は存在するの…そこは神話みたいな話だから、なんとも言えないというのが正直なところだの」


 全ての言語に同じように呪文が与えられた…というのが建前だが、どう考えても分母の大きい種族のほうが有利だよな。


「そうとも言い切れんの。さっきも言ったが精霊魔法というものは定められたの魔力があって初めて成り立つの。元々人族のように数の多い種族は魔力が少ない傾向にあるから、そもそも魔法使いになれる者が少ないの。逆にエルフなんかは種族としては少数だが魔法使いとしては優秀な種族だの」


 ふーむ。種としての弱さを数でカバーってのはよく聞く話だな。にしても、やっぱりファンタジーな世界だけあって人は弱い側か…繁栄具合を考えたら圧倒的格差ってわけではないんだろうけど。


「さて、それでヌシへの魔法の稽古じゃがの」


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