↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

魔法を使ってみる

 何事もなく二年が過ぎ、俺は三歳になった。精神年齢は、三・十・路。


 俺は一年ほど前から暇があれば書斎に篭っては本を読み漁っている。さっさと読み書きを覚えて魔法の勉強を始めるためだ。


 ただ勉強していく過程で知ったのだが、この世界は言葉がいくつかあるようだ。今俺が使っているのが人族語で、この国と周辺地域はもれなく人族語が公用語のようだ。


 後は、獣族語、風族語というのが一般的に認知度の高い言語で、他にも方言や少数部族特有の言葉があるらしい。


 やっぱいるのか人以外の種族、さすがファンタジー。いつか会ってみたいもんだぜ。


 ともあれ今必要なのは人族語一本。その人族語は割りとすんなり覚えることが出来たのだが……問題は魔法の勉強の方だった。



「魔導書がない」



 こっそり書斎を漁ってみたのだがいわゆる魔導書、魔法の教科書的なものは見つからなかった。代わりと言っては何だけど、兵法書的なものはかなり大量にあった。


 ただどれもこれも武術だの戦争だのといった事ばかり。


 一般に浸透している割には魔法と兵法の関わりがどうも薄い気がしてならない。


 仕方がないので俺は少々方針を変えることにした。



 俺は空の水差しを手に庭の端へとやってきた。


「えーっと、何て言てったっけか」


 とりあえず実践あるのみだ。何が正解かわかんないし、本当は危ないかもしれない。でも魔法だからね、好奇心には勝てなかったよ。


 俺は空の水差しに意識を向けて、使用人がたまに言っていた呪文を唱えてみた。


「えーっとたしか…水の精霊よ、我に祝福の恵みを、命の糧をもたらしたまえ、ティアドロップ」


 バシャっと音がして、気づくと手に持った水差しに水が溢れていた。


 どこからともなく出てきた水は水差しに半分収まり、入り損ねた残り半分ほどは地面にこぼれてしまった。


「何だこれ…」


 魔法が成功した。それ以上に俺の中に流れた感覚が衝撃的だった。


 何と言えばいいか、俺の中から力を持ち出していったような感じ。


「こ、これがセブンセ○シズ」


 いやいや、俺別に小さな宇宙とかわかんねぇから。


 でも、それくらいの衝撃だ。第六感?明らかに五感以外の感覚だった。


「これが魔法の感覚…手がもう一本増えたような気分だな。よし、次だ」


 2リットルの水は三歳児の身体には重すぎたので、一旦芝生の上に置いておく。そして今度は手のひらを上に向けてそこに意識を集中した。


「火の精霊よ、我に光と熱の恩恵を、灯火の明かりをもたらしたまえ、トーチ」


 唱えた瞬間さっきと似たような、俺の中から何か出ていく感覚に襲われたかと思うと、何かは俺の掌の上で蝋燭の火を十倍くらいにしたような火種を作った。


「おぉ、トーチっていうけど松明ほど大きくはないか。ほんと火種だなこりゃ――って、うわっちぃ!!」


 急に熱を感じて水差しに手を突っ込んだ。ちょっと手のひらを火傷したのか、ちょっとヒリヒリする。


「うー、あっちぃ。そりゃそうか、魔法つっても火なんだから熱いに決まってるよな」


 いやぁ、参った参った。でもすぐ水につけたし、大丈夫だよな?ちょっと赤くなってるけど、あとで水ぶくれとかできるかなぁ…


「あ、そうだ。光の精霊よ、我に癒しの慈悲を、健やかなる寵愛を授けたまえ、ファーストエイド」


 唱えると手のひらが光って痛みと赤みが消え、いつものプリティ三歳児ハンドが戻ってきた。


「おー、俺ってばやるやないかーい、はっはっはっはっは」


 ワイングラスがあったら鳴らしてるところだよ。


 やっべー、魔法テンションあがるね。


「でも俺の知ってる呪文ってこれだけなんだよなぁ」


 火と水と回復。それも明らかに攻撃力のない魔法ばかりだった。


 効果と比べて呪文詠唱も長いし、魔物と戦うってのにこれじゃあ使いどころがなさそうだよねぇ。


 せめてこう、火の玉だったりがズバンと飛んでく、いわゆる攻撃魔法が使えないと、とてもじゃないけど魔法使いとは呼べないよなぁ。


「うーん…あ、そうだ。よくラノベでも魔法に呪文は要らないって言ってるやつあるし、その方向でいっちょやってみるかな」


 そう言うので大体必要なのはイメージだ。想像力無くして魔法は無い。


 火の玉…は庭で出すには危なすぎるから、とりあえず水の玉で。


 目を閉じて集中する。目の前に、直径30センチくらいの水の玉がシャボン玉のように浮かぶところをイメージする。


「集中、集中……はっ!」


 カッ、と目を見開いてみたものの、そこには何もなかった。


「うーん、違うのかなぁ」


 何度か同じように繰り返してみたものの、結局水の玉は一度も出せなかった。


「んー、もう一回基本に戻ってみるか。水の精霊よ、我に祝福の恵みを、命の糧をもたらしたまえ、ティアドロップ」


 目の前に意識を集中して唱えると、先ほどと同じように何かが出ていく感覚と同時に目の前に水があふれた。今度は水差しがなかったので、全部こぼれて地面に吸い込まれる。


「ふむぅ。この何か持っていかれる感覚が、魔力を使う感覚なのかなぁ」


 呪文一回で出てくる水は大体4~5リットルほど。だったら、魔力をより込めればもっと水が多く出るんだろうか。


「よし、もう一回。水の精霊よ、我に祝福の恵みを、命の糧をもたらしたまえ、ティアドロップ」


 今度は体内の感覚に意識を集中してみる。何かが持っていかれる感覚、その瞬間により多く渡そうと意識してみる。


「ん?出ない?」


 何かがーーいやもうとりあえず魔力でいいや。さっきより多めに魔力が抜けていく感覚が確かにあったと思ったんだけど、さっきと違って水が増えるどころかそもそも出なかった。


「うーん、何だろう。今度は絞ってみるか。水の精霊よ、我に祝福の恵みを、命の糧をもたらしたまえ、ティアドロップ」


 今度は魔力が持っていかれるとき、意図して持っていかれないよう抑えてみた。なんとなく綱引きをしてる感覚だが、最初の半分くらいは出て行ったはずだ。


 だけど多く込めたとき同様、魔法は発動しなかった。


「うーん…水の精霊よ、我に祝福の恵みを、命の糧をもたらしたまえ、ティアドロップ」


 もう一度、魔力を意識せず唱えると、今度は水が出た。


「法則がわからん」


 何となく呪文が必要な事と決まった効果しか出なさそうって事はわかる。


 ゲームで呪文に対して消費MPが決まっている感覚。


 でもその先がなぁ、サッパリだよ。


 その筋の天才でもないと、ゼロから魔法習得なんてやっぱ無理だよなぁ。


 威力も変わらないっていうなら、練習したところで無駄に魔力を消費するだけじゃないか?


「うーん…まいっか。とりあえず魔力切れまでやってみるか。なんか新発見あるかもしれないし」


 ゲームじゃないんだから、とりあえずやれる事やってみて手探りで探っていくしかないよね。


 そうと決まればバンバン撃っていこう。回復は怪我してないから効果わかんないし、火は危ないから水魔法で。


 水なら大丈夫だよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。