順風満帆
翌朝。
イリオス、ディーン、コミティスが先に食事を摂っていると、遅れてリラとアルタリアも食堂にやってきた。
「おはよう」
「おはようございます……」
リラはこの時間に起きることに慣れていないのか、まだ少し眠そうだ。
やがて宿の女将がリラとアルタリアの分の食事を持ってテーブルにやってくる。
「いらっしゃい、新しいお客さん! うちはおかわり自由だから、好きなだけ食べていってね!」
「は、はい」
「ああ、ありがとう」
食事を置くと女将は立ち去ろうとするが……それをディーンが呼び止める。
「女将さん」
「ん? どうしたんだい、ディーンちゃん」
ディーンは女将のアドバイスを受けてチームに新メンバーを迎え入れたこと。この二人がアルモニアの新メンバーであることを簡単に説明する。
「リラです」
「アルタリアだ」
二人の紹介を受けて女将はニッと笑った。
「そうかい、そうかい! また若い子が増えたね! でも、大人も一緒だから安心だ!」
そしてトーンをひとつ落とす。
「でも、こういう時こそ無理はしないこと。お互いにゆっくり慣らしてから。ね?」
その言葉にディーンはゆっくりと頷く。
「はい。肝に銘じておきます」
女将は再び笑顔に戻る。
アルモニアは軽めの依頼をこなしながら少しずつ新メンバーと足並みを揃えていく。
アルタリアの盾にリラの治癒術。この二つが揃ったことでチームとしての完成度はさらに上がり、また宿や食堂での一幕なども経て、二人は徐々にアルモニアの一員として馴染んでいった。
「……ああ。今回も悪くない」
鑑定道具をしまった禿頭の受付は、口元を緩ませる。
「ありがとうございます」
このやり取りももはや慣れたものだ。
報酬の支払いのために金を数える禿頭の受付。そのさなか、彼はふと思いついたように口を開く。
「そういえば……新入りも馴染んできた頃だろうが、そろそろ先に進まないのか?」
「先に?」
ディーンが問い返すと禿頭の受付は頷く。
「あのダンジョンには……知っているだろうが、地下に進む階段がある。その先には行かないのかということだ」
その言葉にぱっと反応するのはイリオスだ。
「おっちゃんは、そろそろ行ってもいいと思う?」
分かりやすい目の輝きに、禿頭の受付はふっと笑いを漏らす。
「さあな。それくらい自分で考えろ」
そして「報酬だ」と金を差し出した。
その日の夜。
ディーンが帳簿を閉じるなり、剣の手入れを中断したイリオスがそのそばに行く。
「終わった?」
「ああ」
ディーンが頷くと、その途端にイリオスは目をキラキラと輝かせる。
「今日のおっちゃんの言葉、聞いた? 俺たち、そろそろ先に進んでもいいって!」
その言葉に苦笑いを浮かべるのはアルタリアだ。
「落ち着け、イリオス。彼はあくまで、進むかどうかは自分で考えろと言っていただろう?」
その言葉にイリオスはハッとして、それでも喜びを抑えきれない様子で頭をかく。
「でも……その……」
小さく口籠ったあと、リラが顔を上げる。
「わたしも……分からなくはない、です。最近、わたしのお仕事がない時も増えましたから。……戦っていないわたしが言うのもなんですけど」
次に視線が集まったのはコミティス。彼女は少し考えて、頷く。
「うん。イリオスじゃないけど、最近は物足りないと感じることも増えてきた。……ただ、準備はきちんとしてからね」
その言葉を聞いたディーンは納得したように頷く。
「じゃあ、明日は情報収集だな」
ディーンが周囲を見回すと、全員が頷いた。




