新メンバー
次の日、イリオス達三人はギルドで依頼を受けてからダンジョンへ向かう。
受けてきたのは薬草採取依頼。
これは応募してきた二人に冒険者経験が無かったためである。
二人も昨日話をしたところ薬草採取で構わないと言っていたので、ひとまず第一関門はクリアである。
これでもしも「冒険者といえば魔物退治だろう」などと言われていたら、彼女らへの信頼度は大きく損なわれていたことだろう。
ディーンやコミティスも、余計な説得をせずに済んで一安心だ。
ダンジョンの入り口では、既にリラとアルタリアが待っていた。
「おはよう!」
イリオスが元気良く声をかけるとあちらも気が付いたようで、アルタリアは気さくに、リラは少しぎこちなく挨拶を返す。
「ああ、おはよう」
「お、おはようございます」
昨日のうちにある程度の情報共有は終わっている。
見た目通り、アルタリアが盾使い。リラがヒーラーだった。
「爆竹なんかを投げる時は、ちゃんと声をかけますから」
リラは攻撃魔法を使わないそうで、道具を使って援護してくれるらしい。
「じゃあアルタリアさん、リラさん。よろしくお願いします」
事前の軽い打ち合わせも終わったところで、ディーンが言う。
「…………」
と、アルタリアが何かを考えるように少し上を見る。
「あの、アルタリアさん?」
少し戸惑いながらディーンがその名前を呼ぶ。と、
「呼び方」
「え?」
戸惑うディーンに、アルタリアは穏やかに微笑む。
「アルテで良い。年上だからと気遣いは不要だ。戦闘中にいちいち『アルタリアさん』などと呼んでいたら舌を噛むぞ?」
アルタリアがそう言うと、便乗するようにリラも口を開く。
「わたしのことも、呼び捨てで良いですよ。あと……わたしも、みなさんのこと、呼び捨てにしても良いですか?」
その言葉にディーンは緊張をほどく。
「ああ。好きに呼んでくれ。アルテ、リラ」
出会う前より空気は柔らかだった。
「こっちだ! かかってこい!」
アルタリアが盾と剣を打ち合わせる。
その音にオオカミ型の魔物が気を取られた刹那、イリオスが斬りかかる。
今回遭遇した魔物の群れは四頭だったが、特に問題無く戦闘は終わった。
「だいぶやりやすいな」
「うん、そうだね」
イリオスとコミティスは確実に変わった手応えに頷き合う。
また、薬草の採取にはリラが役立った。
「そうそう、そうやって引きながら……上手ですよ、ディーン!」
彼女の実家は薬屋だそうで、薬草の扱いもよく知っている。
結果としていつもよりずっと早く依頼も終わった。
「助かったよ、リラ」
「いえいえ」
ダンジョンから出る頃、イリオス、ディーン、コミティスの三人は視線を合わせて頷き合うと……ディーンが代表して声をかける。
「アルテ、リラ。今日この後、時間は空いてるか?」
その日の夜、大衆レストランで五人はグラスを打ち合わせる。
「乾杯!」
丸テーブルを囲んで、それぞれが飲み物に口をつける。
「くー! うまい!」
よく冷えた果物ジュースに、イリオスが声を上げる。
「アルテ、気を遣わせてごめんな」
「何がだ?」
一方でいきなり謝罪の言葉を口にするのはディーン。アルタリアは何の話か分からずに首をかしげる。
「飲み物。オレたちに合わせてくれたんだろ?」
アルタリアのグラスに入っているのも、他のメンバーと同じ果物ジュースである。その言葉にアルタリアは「そういうことか」と納得する。
「別に構わんさ。私は下戸だからな」
「そうなのか?」
それこそ気を遣わせているのでは……そう思ったディーンが見ていると、アルタリアは嘘は付いていないと笑う。
「私は酒より茶やコーヒーが好きなんだ。喫茶店にもよく行くんだぞ?」
アルタリアが穏やかに笑みを浮かべていると、コミティスが声を上げる。
「もう、イリオス。一度に頬張りすぎ」
「もが?」
「返事は飲み込んでから」
イリオスは口の中のものを飲み込むと、「はーい」とニコニコ言う。
「全く、仕方のないやつだな」
笑顔のイリオスに、ディーンとコミティスも自然と口元が綻ぶ。
「…………」
そんな三人の様子を見ていたリラがふと口にする。
「あの。三人はどういう関係なんですか?」
勘繰る様子も無い、自然と溢れた疑問だった。
「オレとイリオスとコミティスは、ネーベルンって村で育った……まあ、幼馴染みたいなものだ」
ディーンが説明をすると、イリオスもそれに乗ってくる。
「俺とコミティスは家族なんだぜ!」
イリオスが無邪気に言うと、コミティスもその流れに合わせる。
「私は養子だけどね」
最後に聞こえた言葉に、リラはリアクションに困って一瞬視線を散らす。
「でも家族じゃん」
しかし間髪入れずにイリオスが口を挟む。
「……仲が良いなら何よりだ」
アルタリアはジュースを一口飲む。
「私とリラはな、今では友人なんだ」
「『今では』?」
気になる単語にイリオスが首をかしげる。
「は、はい。最初は、師弟関係だったんです。わたしが盾を習ってて……」
「色々あって辞めた後も、こうして友人として関係が続いている」
「へー。……なんかいいな、そういうの」
イリオスが言うと、リラは照れたように笑った。
大衆レストランでの親睦会は、レストランの閉店時間をもってお開きとなった。
「じゃあ、また明日」
「ああ。また明日」
三人と二人は一度ここで別れることになるが、明日の朝にはまた一緒だ。
リラとアルタリアもアーインの宿屋に移ってくることになっている。
「はー、食べた食べた!」
イリオスは満足そうに腹を叩く。
「はあ、もう……」
行儀が悪いが、あまり言いすぎるのも良くないとコミティスは注意を飲み込む。
リムフォードの街の通りはまだまだ賑やかだが、三人は宿屋に向かい明日に備えることにする。




