噂
昼過ぎの宿屋。
イリオス達の部屋で三人は集まり、話し込んでいる。
冒険者ギルドで仲間の募集については既に聞いてきた。
あとはテーブルに置かれている用紙に必要事項を書いて、ギルドに提出するだけだ。
「どんな人が良いだろうか」
まずはディーンが問題提起をする。それに対して声を上げるのはイリオスだ。
「はい! 強い人が良い!」
「後衛はもう一人欲しいよね」
しかしすかさずコミティスが割り込み、イリオスの発言を流す。
「そうだな。じゃあ一人は後衛で確定、と」
「あれー?」
首をかしげるイリオスを無視して、ディーンはさらさらとメモを書き込む。
冒険者のパーティとして一般的な人数は五人程度。つまりはもう一人くらいは募集することも確定している。
「オレが魔法剣士で、イリオスが剣士で、コミティスが弓使いだから……と、なると……」
「あと一人は前衛かな。その方がディーンも、動きやすいよね?」
コミティスの発言にディーンは頷く。
「じゃあ、前衛一、後衛一だな。性別とかも指定できるみたいだけど」
「そこは別に、無しで良いんじゃない? できる限り早く来てくれたほうが助かるし」
「そうだな」
自分の主張をスルーされたイリオスは、話にも割り込めずに聞き役に徹するしかない。
「良い人が来てくれると良いね」
「そうだな」
しかし二人のこの発言には満面の笑みで頷くのであった。
冒険者ギルドに募集を出した翌日。
三人は並んでギルドへと向かう。
当然というか、イリオスはご機嫌である。
「すっごい剣士とか来てるといいな」
――おまえみたいな剣士がそう何人もいてたまるか。
あの後も、先輩冒険者から受ける空気は変わらず冷たい。
ただ、本人が気付いていないし気にも留めていないようなので、ディーンも特には気にしないようにしていた。
冒険者ギルドに着いた三人は、いつもの禿頭の受付に話を聞きに行く。
「ああ、少し待ってろよ」
用件を聞いた禿頭の受付は、カウンターの奥に向かう。
やがて戻ってきた禿頭の受付。
「まだ、応募は来ていないな」
その言葉にイリオスがガクッと頭を垂れる。
「そんなー」
「ま、昨日今日ですぐに応募がある方が珍しいさ」
禿頭の受付はイリオスの肩をぽんぽんと叩く。
「そういうもんか」
「そういうもんさ」
ディーンとコミティスにもがっかりする気持ちがないわけではない。
しかし先にイリオスに落ち込まれて、自然と口元を緩めるのであった。
冒険者ギルドの受付を離れた三人は、いつも通りに今日の仕事を受けるため、依頼掲示板へと向かう。
「今日は、何にしようかな……そろそろ奥にも行ってみたいけど」
「もう。焦らないの。ダンジョンは逃げないんだから」
先に行きたい気持ちを出すイリオスを、コミティスが押さえつける。
ディーンがそんな二人の様子を眺めている時であった。
「あのチーム、募集始めたんだな」
ふとそんな声が聞こえて、ディーンはそちらを向く。
そこにはこちらに体を向けて話す冒険者達がいた。
「まあ人数的にもな」
自分達のことだろうか。ディーンは思わず聞き耳を立てる。
「剣士は、強いよな」
「ああ、あれは成功するんじゃないか?」
聞こえてきたのは称賛の言葉。その言葉に、ディーンは少し誇らしげな気持ちになる。しかし次の瞬間だった。
「問題は……だよな」
「ああ。ちょっと中途半端だもんな、今の構成」
――中途半端?
ディーンはそれがどういう意味か考え……そして。
「……あ」
イリオスは違う。褒められていた。
コミティスも違う。彼女は後衛で、中途半端という言葉は当てはまりにくい。
となると残るは……
「……? どうした? ディーン」
ふいにかけられた言葉にディーンはビクッと揺れる。
そちらを向くと、イリオスが不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「ああ、いや。何でもない」
ディーンはとっさに取り繕う。
――……違う。きっとオレたちのことじゃない。
イリオスが取ってきた依頼書を見ながら、ディーンは自分に言い聞かせる。
今日の依頼は薬草採取である。
もうこの仕事も慣れたもので、四回目だ。
見つけて、掘り起こして、傷付けないよう鞄にしまう。
「…………」
禿頭の受付が薬草をじっと見つめる間の空気感も、幾分か和らいでいる。
「うん、悪くない。依頼達成だな」
そして今回も問題無く依頼達成となった。
禿頭の受付は金を数え、支払いをする。
「ほらよ。……採取の腕を上げたな」
何気無く漏れた言葉にディーンは顔を輝かせる。
「あ、ありがとうございます!」
そして財布に金をしまっている時であった。
「あの……」
「ん、どうした?」
禿頭の受付のところに別のギルド職員がやってきて何かを告げる。
それを聞くと……禿頭の受付はニッと三人に笑いかける。
「ちょうど良いな。募集の件、進展があったと」
「ほ、ホントに!?」
イリオスがガタンとカウンターに手を付いた。
そうしてイリオス、ディーン、コミティスの三人はギルドの応接室に通される。
「お待たせしました。こちらアルモニアの皆様です」
応接室に先にいたのは、金の髪の美人と、白く裾の長いジャケットを羽織った少女だ。
「アルタリアだ」
「り、リラです」
アルタリアはその背に盾を背負い、白いジャケットの少女リラは……見た目通りならヒーラーなのだろう。年齢はそれぞれ二十歳と十五歳だった。
――盾使いにヒーラー。バランスの良い構成だな。
ディーンはそう考える。
「俺はイリオス」
「ディーンだ」
「コミティスです。よろしく」
それぞれ握手を交わすと、椅子に座った。




