はじまり
それから数日。
アルモニアはガーゴイルを討伐したチームとして認知され、他の冒険者から見られる目にも尊敬の色が入り混じるようになった。
ガーゴイルの魔石はメトラ商会に卸したが、特に何が起きるでもない。
その日の夜は当日の探索組のためにささやかな祝勝会を開き、そしてアルモニアは日常に戻っていった。
夕方。
宿屋ニバンボシの廊下を難しい顔をして歩くディーン。
「あ、ディーン」
部屋に入ろうとしたところで、たまたま隣の部屋から出てきたコミティスと目が合う。
「ああ、コミティスか」
ディーンはさっと表情を変えるも、コミティスはその前の表情をしっかりと見ていた。
「……何かあった?」
コミティスが声をかけると、ディーンは少し考えて……
「良ければ少し、愚痴に付き合ってもらってもいいか?」
ディーンは部屋にコミティスを招く。そして、一つの箱を持って、机の上に置く。
箱の中身は、冒険者ギルドで依頼品を収めると渡される納品書だ。そのうちの三枚をディーンは並べる。三枚ともがディーンが探索組として、ダンジョンに入ったときのものだった。
「ここ数日、採集の調子が悪くてさ」
コミティスはディーンが並べた納品書を見る。
「前は『四』が多かったんだけど……今日なんて、ひどいだろ?」
ディーンが言ったとおり、納品書に書かれた依頼品の査定結果は、「三」や「二」の評価が多い。今日の査定は半分が「二」の扱いになっていた。
シプレの冒険者ギルドの査定は五段階評価で、「五」が最高評価になる。
「……そっか」
納品書を見て、コミティスも難しい顔をする。
「おかげで、収入も落ちてて……ちょっと気を引き締めないとダメだな」
査定結果が「二」以下になると、依頼の報酬金も下がる。この状況が続けばチームにとって痛手になるのは間違いない。
ディーンが気に病むのも当然のことであった。
「……ディーンは、悪くないよ。実務で忙しい中でも、よく頑張ってると思う」
コミティスが言うと、ディーンは眉を下げながらも笑う。
「気休めでも、そう言ってもらえると気が楽になるよ。聞いてくれてありがとう」
そしてディーンはカルスの特訓を見に行くと言って、部屋を出る。
廊下でそれを見送ったコミティスは、ディーンの姿が曲がり角に消えたあと、少し考え込んで……それから、ゆっくりと歩き出した。




