知られた勝利
冒険者ギルドに戻ったアルモニアの五人。疲労の残る顔で扉を開けると……イリオスたちの姿に周囲が静まる。
「……ん?」
視線はこちらに向いている。
イリオスがどういうことかと周囲を見回しているときだった。
「ああ。おかえりなさいませ。アルモニアの皆さま」
イリオスに声をかけてきたのは、ルクス商会の制服を着た男性であった。
「皆さまのご活躍は耳にしておりますよ。よろしければ、ガーゴイルの魔石はぜひ我がルクス商会に……」
その言葉に状況を察したアルタリアは、イリオスを軽く押しのける。そしてルクス商会の使いに言う。
「悪いが、今は余裕が無い。話は後にしてくれ」
アルタリアの発言に、ルシオンがあっという顔をする。
しかしもう遅い。ガーゴイルの討伐は否定されなかった。
冒険者ギルドがざわめき立つ。
「……ええ。ではまた、改めて」
ルクス商会の使いは丁寧にお辞儀をすると、その場から去っていった。
夕食後、男子部屋にて。
「噂は聞いているよ。まずは……イリオス、リラ、アルタリア、ツキフネ、ルシオン。ガーゴイルの討伐、おつかれさま」
ディーンが言うと、それぞれが誇らしげだったり、はにかんだり、はたまたいつもの愛想笑いだったりで反応を返す。
「それで……こいつの扱いについてだが」
ディーンはテーブルに置かれた革の袋に軽く手を乗せる。中身はガーゴイルの魔石だ。
「ルクス商会に卸したほうがいいと思うよ」
ただちにそう進言するのはルシオンである。
「思いっきりバレちゃったからねえ。わざわざ使いまで出してるんだ。彼らにも面子ってものがあるから、潰さないほうが良い」
ルシオンの意見に対して、反論を述べるのはアルタリアだ。
「私は反対する。あのルクス商会のことだ。どうせ買い叩かれる。私達が命がけで回収したものだぞ? 相応しい扱いを受けられる場所に卸すべきだ」
相応しい場所というのは、すなわちメトラ商会のこと。
アルタリアの意見を聞いて、ディーンはイリオスとリラに目を向ける。彼らもまた、この魔石のために命を賭けた二人だからだ。
「俺は、アルテの言うとおりかなって思う。今回は大変だったし、買い叩かれるって分かってて持ってくのもちょっとなあって思う」
「わたしも……チームとしてお金になるのなら、メトラ商会のほうが……」
イリオスとリラはアルタリアに同調する。続けてディーンが月船に目を向けようとした時だった。
「ああ、もう。分かったよ。一対三じゃどうしようもないね。うん。メトラ商会に卸そう」
人数差を理解したルシオンが折れた。
「ツキフネは?」
それでも一応、ディーンは月船に問いかける。しかし彼女は、
「皆さんが良いのなら」
と穏やかに言うだけであった。
続けてディーンはシグとコミティスにも目を向けて……異論が無いと判断すると、チームとしての決定をくだす。
「分かった。それじゃあこの魔石は、メトラ商会に持っていこう」
ルシオンは仕方がないと肩をすくめる。そんな彼を、月船はちらりと見た。




