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調和と大地の迷宮  作者: 旅燕
シプレ編

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49/60

焦がれるもの

 次の日の朝。

 待ち合わせ場所である冒険者ギルドの前には、栗毛の少年が落ち着かない様子で待っていた。


「カルス!」


 そしてそんな彼に向かって、イリオスは声を上げる。


「あっ! イリオスさん!」


 栗毛の少年もといカルスは、イリオスの声にぱあっと顔を輝かせたところで……その後ろにいるもう一人の人物に気が付く。


「……その方は?」


 カルスがきょとんとしていると、イリオスの同行者である白い髪の少年は右手を差し出す。


「はじめまして。オレはディーン。イリオスの幼なじみで、同じチームのメンバーだ」


 挨拶を受けて、カルスは無邪気に笑う。


「ディーンさんですねっ。よろしくお願いします!」


 カルスとディーンは握手を交わした。



 冒険者ギルドの演習場のすみっこで、イリオスとカルスは二人並んで走る。


「カルス! まずは走るぞ!」

「はい!」


 邪気がないところがそっくりだと、ディーンは思う。

 しばらく二人は演習場の隅を往復し続け……やがてカルスがバテてくる。


「あ、あの、イリオス、さん……」

「どうした、カルス? もうちょっと頑張ろうぜ!」

「っ……! は、はい!」


 カルスはなんとか足に力を入れる。



「よし! じゃあ次は柔軟だ! これはしっかりやるんだぞ! 大事だからな!」

「は、はいっ」


 走り込みの疲労が抜けない中でも、カルスは頑張る。


「ん? カルス、それ以上曲がらないのか?」

「は、はい……」

「良かったら押してやるよ」


 イリオスは前屈をするカルスの背中側に回ると、その背中を押す。


「え、イリオスさ……いたたたた!」

「うわっ! ごめん、押しすぎた!」



 柔軟が終わったところで、次は木刀を握っての剣の練習だ。


「良いか、見てろよカルス。こうして……こうっ!」


 イリオスはキレのある動きで木刀を振り回す。


「わあ、すごいです、イリオスさん!」


 カルスに褒められて、イリオスは「サンキュ!」と笑顔を浮かべる。


「よし。じゃあ、カルスもやってみろ」

「えっ。あっ、はい! こうして……こう?」

「あー、そうじゃなくて……こう!」

「こ、こう?」


 二人が剣の稽古に取り組む姿を、ディーンはじっと見守っていた。



「はあ、はあ……!」


 やがてカルスは、疲れ果てて地面に座り込む。


「ん? どうした?」


 その隣で元気良く素振りをしていたイリオスが声をかける。


「す、すみま、せ……ちょっと、休憩を……」

「うん。分かった」


 カルスはなんとか立ち上がり、震える足を引きずって演習場のベンチにたどり着くと、息を整える。


「おつかれ」


 と、そこにディーンが冒険者ギルドの売店で買ってきた飲み物を差し出す。


「え、あ……貰って、良いんですか?」

「ああ」


 ディーンはカルスの隣に座る。


「イリオスさん、なかなかハードですね……」


 カルスが休憩に入った今も、イリオスは剣の素振りをしている。


「あいつは、まあ……元気が取り柄だからな」


 幼なじみを見ながらディーンが言う。


「なあ、カルス」

「はい」


 カルスは飲み物の容器から口を離す。


「どうしてカルスは、イリオスに剣を習おうと思ったんだ?」


 ディーンの質問に……カルスは笑顔を浮かべる。


「すごかったんですよ、イリオスさん! 魔物との間に、サッと入り込んでおれのことをかばってくれて!」


 そして……照れくさそうに言う。


「カッコよかったんです。あんな風になれたらって思って……それで、イリオスさんに弟子にしてほしいって、お願いしたんですよ」

「……そうか」

「はいっ」


 カルスは素振りをするイリオスを見て……そして言う。


「おれも、イリオスさんみたいなすごい剣士になるんです!」

「そうか」


 ふと、ディーンとカルスと視線が合って……イリオスが手を振る。カルスも笑顔で手を振り返した。

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