危うい信頼
夕食の後、男子部屋にて。
コミティスとアルタリアは、待機組にルシオンの探索での働きを伝える。
罠で困ることはなかったこと。
戦闘に介入したのは一回だけだったこと。
解体や採集を手伝ったこと。
そして冒険者ギルドでの査定結果。
全部を聞いて、ディーンは頷く。どうやら彼の中では結論が出た様子だ。
「みんなは、どう思う?」
しかしそれを口に出すことはなく、ディーンはまず他のメンバーの意見を求める。
「私は、冒険者としての彼を判断するには経験が不足しておりますので、皆さんにお任せします」
月船はすぐにそう言って一歩引いた。
「とりあえず、罠への対応という点では問題なかったんですよね」
そう確認するのはリラだ。
アルモニアが特に求めているのは罠への対応なので、ここで問題がなかったというのは大きな加点だ。
「戦闘については……一回しか参加しなかったとは言いますけど、わたしも状況によってはお仕事がないので」
情報を整理したリラは小さく頷く。
「わたしも、実際に探索に出たみなさんの意見に任せます」
リラもそう言って、権利をみんなに委ねる。
「おれは、別に良いと思うよ」
そう言うのはシグだ。
「戦闘で困らなかったから、それで十分」
簡単に結論を言って、それ以上の理由は語らない。
「俺は、正直もっと頑張れるんじゃないかとも思ったけど」
一方でイリオスは少し悩んだ様子を見せる。
「けど……ルシオンの話も聞かないうちから決めつけるのは、失礼だよな。……うん。罠とか採集とかでは大丈夫だったし、俺も良いと思う」
コミティスとアルタリアは……ディーンと目が合うと、黙って頷く。
「決まりだな」
その場にいる全員が、もう一度頷いた。
翌朝、待ち合わせ場所である冒険者ギルドの前に向かうと……
「やあ」
ルシオンは大きな荷物を脇に置いて立っていた。
「話は決まったかな?」
ニコリと笑うルシオン。
それを見て……一行は思わず苦笑い。でももったいぶらずに結論を伝える。
「ああ。採用だ」
ディーンがそう言うと、ルシオンは「やった!」とガッツポーズを取る。
「いやー。良かった! 今まで泊まってたとこ、撤収しちゃったから。これでもし断られたら、どうしようかと思ってたよ!」
そう言ってルシオンは荷物を背負う。
「で、キミたちはどこの宿に泊まってるの?」
「宿屋ニバンボシだよ」
「ああ。良い宿屋って評判だよね。キミたちについてくことにして正解だったよ」
ディーンは余っている一本の鍵を、ルシオンに差し出す。それを見たルシオンは、素に戻った様子で……きょとんと首をかしげる。
「これ、なに?」
「オレたちが使ってる部屋の鍵だよ。ベッドが一つ、余ってるから。もちろん、ルシオンが個室のほうが良いって言うなら無理強いはしないけど」
その言葉にルシオンは目をぱちぱちとさせて……思わず呆れ笑いを浮かべる。
「……キミ、さあ。ボクが悪人だったらどうするの。明日には部屋が空っぽになってるよ」
「あっ」
しかしルシオンはディーンが手を引っ込めるよりも早く……その鍵を奪い取る。
「せっかくだから使わせてもらうよ。個室なんて取ったら、お金がもったいないしね」
そう言って、宿屋ニバンボシがある方向に足を向ける。
「ほら、行くよ!」
ルシオンはニコニコと笑いながらそう言った。




