シプレでの最初の夜
その日の夜。
宿屋ニバンボシの食事はビュッフェスタイルで提供される。
食べ物も飲み物も取り放題というこの形式を、イリオスとシグは大いに喜んだ。
「……イリオス、一度に取りすぎ。おかわり自由なんだから、そんなに山積みにしないの」
皿にたっぷりと盛りつけられた食事を見てコミティスはため息をついた。
その後、男子部屋に一行は集まって、いつも通り一日の総括を行う。
「思ってた以上にこの街のダンジョンは厄介だな」
ディーンが言うと、コミティスが頷く。
「うん……対応を間違えると大変なことになりそうだよね」
リムフォードのダンジョンにはトラップと呼べるようなものはなかったが、この街のダンジョンは違った。
情報屋で聞いたところによると、いずれも致命的なものではないとのことだが、無視もできない。矢のトラップなどは当たりどころが悪ければ死ぬこともありうるのだから。
「罠に対応できる人員を補充する必要があるかもしれんな」
アルタリアが提案する。
「……そうだな」
勉強を重ねれば既存のメンバーでも対応できるだろう。しかしそれまでダンジョン探索を止めるわけにもいかないだろう。
資金面の心配はしばらくないとはいえ、無限でもないのだから。
また勉強をするにしても、指南役がいるといないとでは大違いだ。冒険者ギルドでの講習も、そう頻繁には開催されていないようだし。
「だとすると、補充すべきは後衛ができる人員だな。前衛は既に充実しているから」
今のアルモニアの人材は剣士が三人に盾使いが一人と、前衛に偏重している。魔法剣士のディーンを中衛として位置付けても、後衛はコミティスとリラの二人だけと、バランスが極端だ。
「みんなは、仲間を増やすことはどう思う?」
流石に人員の補充は全員の意見を聞く必要があると判断し、ディーンは会議に参加していないメンバー……イリオス、リラ、シグ、月船に質問する。
「別に良いんじゃない? 仲間が増える分には」
能天気に言うのはイリオスだ。
「えっと、そうですね……わたしは、良いと思います。罠は無視できないですし」
リラは少し戸惑いながらも、意見はしっかりと言う。
「おれも良いと思うけど。あんまり変な人が来たら、途中で切れば良いし」
シグも人員補充の意見に賛成する。
「皆さんにお任せします。ダンジョンを知っている皆さんの方が、実情に沿う意見を出せると思うので」
ダンジョンに入ったことすらない月船は一歩引いた態度だ。
「分かった。みんな、意見ありがとう」
ディーンはお礼を言うと、コミティスとアルタリアに視線を戻す。
そしてどんな人員が良いかを協議したあとで、ディーンは帳簿を閉じた。
「今日はこんなところだな。それじゃあ、お疲れ様」
初日の夜はそうして終わった。




