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調和と大地の迷宮  作者: 旅燕
外伝 リラとアルタリアの物語

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39/60

未来の自分が

 その日の夕方。

 いつもの喫茶店の前に行くと、シグは既に待っていた。


「あ、ホントに来た」

「お前な……」


 人を呼び出しておいて全く。仕方のない子だ。


「店の前にお前がずっといたら迷惑だと思って、回収しに来ただけだ」


 アルタリアはそう言うが、シグは気にしない。


「はいはい。じゃ、パフェよろしくねー」

「あ、おい! 全く……」


 先に入っていった少年を追いかけてアルタリアも店に入る。


「で、どうして泣いたの?」


 注文を終えるなり、シグは直球で聞いてくる。


「…………」


 少しの躊躇い。だが、アルタリアも弱っていたのだろう。普段の彼女なら関係無いと突っぱねるだろうが、そうはしなかった。


「……二年くらい前だったか。手合わせしたのを憶えているか?」

「憶えてるわけないじゃん。アル姉とはしょっちゅう手合わせしてるし」

「…………」


 確かにそうだが、言い方というものがあるだろう。


「で、手合わせがどうかしたの?」

「手合わせ自体が問題なわけではない。その手合わせを見ていた子が……」


 そこまで言われるとシグは「あー」と手を叩く。


「あのどんくさそうな子ね」

「お前な……」


 確かにそうかもしれないが、やはり言い方というものが……


「で、その子がどうしたの?」


 アルタリアは一瞬ためらうも、その言葉を口にする。


「……冒険者に、なるんだ」


 それからは止まらなかった。


 彼女は成長した。

 それに比べて自分はどうだ?

 ずっと足踏みしている。進める気配が無い。未来が、見えない。


 途中で届いたパフェを食べながら、シグは聞き続けた。



 一通り話を聞いた後、シグは言う。


「で、アル姉はどうしたいの?」

「私は……」


 シグの直球な質問。

 答えは、出なかった。

 それを見てシグは首を傾げて……それから言う。


「『未来の自分が、誇れる選択肢を取れ』」

「え?」


 シグは口元を緩ませる。


「誰かさんがいつも言ってる言葉。じゃ、パフェごちそうさまー」


 そしてもう用は済んだとばかりに、店を出ていった。


「…………」


 未来の自分が、誇れる選択肢を。


 確かに何度も言った憶えがある。わけあって自暴自棄になっていたシグに、何度も何度も。


「未来の、私が……」


 それは内勤として要人警護をする日々か?

 いや、違う。

 現状のまま停滞し、環境を嘆く日々か?

 いや、違う。

 その時、アルタリアの頭の中に一人の少女のはにかむ顔が思い浮かぶ。


 ――独り立ちしても大丈夫とお墨付きをいただきまして。


 それは未来へ向かって羽ばたく者の顔。

 未来の自分が誇れる道を選んだ者の顔。

 そして彼女の顔を思い出したことで、アルタリアは一つの結論に至る。


 その未来を、守れたら。


「はは……」


 アルタリアは小さく笑う。

 道は、すぐそばにあった。

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