進展と停滞
リラがアルタリアの家を訪ねることが無くなって二年が過ぎた。
しかし二人の交友は途絶えることなく、今日もいつもの喫茶店で言葉を交わす。
内容は取り留めのないものだ。
薬屋であったちょっとしたハプニングに、騎士団の活動中に酔っ払いに注意した話など。
そして最後、そろそろお開きになりそうなタイミングで……リラは口を開く。
「そういえば。今日はですね、アルテに報告しなくちゃいけないことがあります」
二人が友人になってすぐに、さん付けは取れていた。
「ん? どうした?」
リラの顔から深刻そうな様子は伺えない。アルタリアはリラックスした様子で報告を待つ。
「実はですね。そろそろわたし、冒険者になろうと思っているんです」
その言葉に……アルタリアは目をぱちくりとさせて、そして「おお!」と声を上げる。
「ついにか!」
「はいっ」
リラは笑顔でその決断に至った経緯を話す。
「というのもですね、先生からそろそろ独り立ちしても大丈夫とお墨付きをいただきまして」
「そうかそうか!」
リラの報告をアルタリアは心の底から喜んで受ける。
リラはアルタリアのもとに通うのを辞めた後、ヒーラーになるための勉強をしていたのだ。
「では今日は、私がおごろう」
「え?」
「リラの独り立ち祝いだ! ダメとは言わせないからな?」
アルタリアは伝票を奪うと、リラが遠慮する前に支払いに向かう。
そうか、ついにか。
支払いをするアルタリアの横顔は少し寂しそうだった。
その日の夜。
寝支度を整えたアルタリアは自宅のバルコニーで物思いにふける。
――そろそろわたし、冒険者になろうと思っているんです。
彼女が前に進んでいるのは知っていた。喫茶店での雑談でも、彼女の努力について聞かされることも多かった。
嬉しいのは嘘じゃない。誇らしく感じたのもそうだ。
しかし……はにかんだリラの顔に、さみしさと、わずかな焦燥を感じたのも事実だ。
「……リラは、進んだ」
その事実を噛みしめるアルタリアの胸に問いかけが浮かぶ。
では、私は?
「…………」
騎士としての腕前は間違いなく上がった。
それに対して、変わっていないものもある。騎士団における階級だ。リラと出会った三年前からひとつも動いていなかった。




