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調和と大地の迷宮  作者: 旅燕
外伝 リラとアルタリアの物語

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34/60

挫折

 次の朝。

 いつもと同じように家を出たアルタリア。

 少し冷える日だった。

 貴族街を出て、仕事へと向かおうとしていたその時だった。


「……アルテさん」


 聞き慣れた声にアルタリアは振り返る。そこには顔を伏せたリラが立っていた。


「どうした?」


 リラはこんな風に突然やってくるような子じゃない。

 アルタリアは、何かあったなと思いつつ、しかしそれを声には乗せない。

 いつも通りの気取らない口調でリラに問いかける。

 リラは震える声でこう言った。


「わたし、もうやめます。わたしには、才能が無かったみたいです。せっかく時間を作ってくれていたのに……ごめんなさい」


 そして最後に……リラは精一杯の誠意を込めてアルタリアの顔を見る。


「今まで、ありがとうございました」


 返事は、聞かない。

 アルタリアが戸惑いその背に声をかけるが、リラは足を止めない。

 逃げるように人波へと紛れていく。



 それから一ヶ月。

 その間のリラは抜け殻のようであった。

 鮮烈に残る手合いを時々思い返し、これで良かったと家の仕事を手伝う日々。

 もう母にさみしい想いをさせることもない。

 でも何故か、母の顔をまっすぐ見られなかった。

 父のことは思い出さないようにしていた。思い出したら、泣いてしまうから。

 母は、そんなリラのことを心配そうに見つめていた。



 夕方。リラは母と共に店を閉める準備を始める。

 何事もない日々に少しずつ身体は慣れ始めている。もう夕方の走り込みに出ることもない。

 ふと、ドアチャイムの音が鳴る。


「いらっしゃいませ」


 母が客の応対をする。カウンターの裏で作業を進めるリラには関係無かった。その声を聞くまでは。


「傷薬を一つ。包帯を二巻」


 記憶にあるままの声に、リラはばっと顔を上げる。思わずカウンターの方を見る。

 頼まれた品を準備する母の前にいたのは、見知った女性であった。

 リラと顔が合うと……彼女は心配するでもない、いつもの口調で言う。


「明日のこの時間。あの店で待っている」


 そして母から品物を受け取ると、アルタリアはそれ以上何も言わずに去っていった。

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