鮮烈
報せから少しの時間が過ぎて。
「あ、あの」
十二歳のリラは、詰め所の前でそこから出てきた兵士に話しかける。
「またか」
その兵士は少し困ったような顔をすると、リラの視線に合わせて少しかがむ。
「お嬢ちゃんの言いたいことは分かっているよ。でも……盾の扱いなんて、お嬢ちゃんが習うようなものじゃない。それも、冒険者になるためなんて」
「…………」
その目は優しい。本気で目の前の少女を心配している。
「だから……ね? お父さんもきっと、君が元気でこの街で生きてくれることを望んでいると思うよ?」
兵士はリラの頭を軽く撫でると去っていく。
「…………」
みんなこうだ。あの兵士などかなり優しい方で、リラを鬱陶しがる兵士の方が多かった。
みんなが言う。
女の子のやることじゃない、と。
「……それでも」
リラは肩にかけたカバンの肩紐をきゅっと握る。
その日もリラは詰め所に向かう。
「いってきます!」
自宅である薬屋を出て、懲りずに何度でも何度でも声をかける。
もうリラの姿を見ただけで逃げるように去っていく兵士がほとんどになっていたが、それでも諦めない。
そして夕方。今日もダメだったかとしょぼくれていた時であった。その少女を見かけたのは。
詰め所を出てきたその少女は凛とした姿勢で、金の髪は夕暮れを浴びてキラキラと輝いている。そして背中には……盾を背負っていた。
その美しさにリラは一瞬だけ見惚れていたが、すぐに我に返って、そして声をかける。
「あの!」
少女はリラの呼びかけにくるりと振り返る。そして声をかけてきたのが年下の少女と気付くと、柔和に微笑む。
「どうした? 私に何か用か?」
同じ女性でも思わずはっとしてしまう美しさにまた一瞬リラの思考が飛ぶが……すぐに背を折り、いつものセリフを言う。
「わたしに、盾を教えてください!」
その言葉に少女は驚いた表情を浮かべた。
しかし……すぐに柔和な表情に戻り、ほんの少しだけ悲しげな目で言う。
「……やめておけ。女が習うようなものでは、ない」
そう言うと少女は背を向け、立ち去っていく。
その後ろ姿にリラは呆然とする。
じゃあ、お姉さんは?
人波に紛れていく少女の背中には、夕日を受けた盾が輝いていた。




