祝杯と確認
その日の夜。
「乾杯!」
大衆レストランで、アルモニアは打ち上げを行っていた。
全員が無言でジュースを飲み、余韻を噛みしめる。
「ぷはっ! 生きてるって感じがするー!」
グラスから口を離したイリオスがそう表現する。誰も大げさとは言わなかった。
なお、あの後救護院でちゃんと診てもらった結果、彼の左手は問題無く動く状態に戻っている。
「……今日ここにいられるのは、みんなのおかげだな」
この街での出来事を噛みしめつつ、ディーンが呟く。
「はー……まだ実感が湧かないです。これ、夢じゃないですよね?」
「頬をつねってやろうか?」
「遠慮しておきます。覚めたくないので」
リラとアルタリアは軽口を叩く。
「ん。おいしい」
シグはマイペースに食事をしている。楽しみ方はそれぞれだ。
「それにしても……」
コミティスが何気無く口を開く。
「もう、この街のダンジョンの攻略も、終わっちゃうね」
その言葉に一行はそれぞれ手を止める。
「じゃあさ」
しんみりとした空気の中、イリオスが口を開く。
「この街のダンジョンの攻略が終わったら……次の街のダンジョンに行かないか? もちろん、ここにいるみんなで!」
その無邪気な反応にアルモニア一行はくすりと笑う。
「良いですね。楽しそうです」
「……ああ。きっと楽しい旅になるだろう」
リラとアルタリアがすぐに同意した。
「ん。おれも行こうかな」
シグも深く考えずにそう言う。
「ふふ。付いていくよ」
コミティスは穏やかに笑った。
「イリオス」
最後に残ったディーンは、幼馴染に目を向ける。
「おう! なんだ?」
イリオスは明るい声でディーンの呼びかけに応える。
「オレも一緒に行く。……良いな?」
その目にイリオスはニッと笑う。
「もちろん!」
屈託のない声。宴はまだまだ始まったばかりだ。
それから……
ディーン、コミティス、リラ、アルタリア、シグの五人は西門広場にいた。
アーインの宿屋は今朝引き払ったところだ。女将には別れを惜しまれ、弁当を押し付けられた。
「みんなー!」
イリオスが元気良く手を振りながら、一行のいる場所に駆け寄ってくる。その後ろから和装の少女がゆっくりと歩いてくる。
「イリオス、その人が?」
コミティスが問いかけると和装の少女は愛想の良い笑みを浮かべる。イリオスが交流を続けていた少女……月船も、アルモニアに加入することになったのだ。
「穂永月船です。至らぬ身ですが、よろしくお願いいたしします」
そう言って会釈をする月船。
「こちらこそ。新しい仲間が増えて嬉しいよ」
そう言ってディーンは新たな仲間に右手を差し出し、握手を交わす。
「優しそうな方ですね」
少しホッとしたようにリラが言う。一方で
「……そう? おれはあんまり好きじゃないかも」
シグのあまりにもはっきりとした言葉に一行はぎょっとする。
「シグ」
アルタリアがシグを睨む。するとシグはふいと視線をそらした。まあまあと取り持つのは当事者である月船だ。
「人間、相性もありますから。もちろん、シグさんに気に入っていただけるよう、できる限りの努力はしますが」
大人の対応を見せる月船。
「シグ」
「…………」
その様子を見てディーンは肩をすくめていた。
「喧嘩するほど仲が良いってやつ?」
「違うと思うよ」
イリオスのボケにコミティスがツッコんだ。自然と空気が緩んだところで……イリオスは「よしっ」と荷物を背負い直す。
「じゃあみんな、行こうぜ!」
七人体制となったアルモニアは次の街へ向けて出発した。




