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調和と大地の迷宮  作者: 旅燕
リムフォード編

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後始末

 やがて十分ほどが経つと、全員が後始末に動けるようになった。

 シグとコミティスは疲れた顔で見張りに立ち、リラはイリオスの傷の具合を確かめ、ディーンは頭痛を押しながらも魔石だけは回収しなければと大ネズミの遺骸と向き合う。


「……よし、採れた」


 魔物の素材で一番価値が高い魔石は、一抱えもある大きなものであった。


「こんなに大きな魔石、初めて見ました」


 リラが袋に入った魔石を覗いて言う。


「誰もこんなの見たことないって」


 シグは疲れの滲んだ声でツッコむ。


「……俺たち、勝てたんだよな」


 イリオスが確かめるように聞く。その質問には誰も答えないが、今息をしていること。それが証明だった。


「……依頼どころじゃ、なくなったな」


 ディーンは魔石が入った袋を担いで立ち上がる。


「みんな、今日はもう撤退だ。オレたちはもう、これ以上探索を続けられる状態じゃない」


 壊れた装備、削れた魔力、残り少ない矢。

 誰も異論を唱えず、五人はその場を後にした。



 五人が冒険者ギルドに戻ったのは昼過ぎだった。


「おう、おまえら。今日は早いな。……随分と疲れた顔をしているが、どうした?」


 禿頭の受付に対して、ディーンは依頼書を差し出す。


「これ、申し訳ないけどキャンセル処理してもらえませんか? ちょっとアクシデントがあって」

「アクシデント?」


 禿頭の受付が聞き返す。


「ああ。大変だったよ。でっかいネズミが出てさあ」


 イリオスが言うと、禿頭の受付は目を見開く。


「でかいネズミ……まさかチドリムか?」

「はい」


 ディーンが頷くと、禿頭の受付は難しい顔になる。


「そうか……となると、今討伐できそうな連中は……いや、その前に……」


 ぶつぶつと呟き始める禿頭の受付。だが、すぐに気を取り直すとカウンターごしにディーンの肩を叩く。


「よく生きて戻った。依頼のことは気にするな。後のことは任せておけ」

「後のこと?」


 イリオスが問い返すと、禿頭の受付は力強く頷く。


「ああ。おまえらは生きて帰っただけで十分だ。討伐はこちらに……」


 真剣な眼差しにイリオスはきょとんとする。


「討伐? それならもうしたけど」

「は?」


 禿頭の受付はわけがわからないという顔をしている。ディーンは論より証拠と、戦利品の入った袋をカウンターの上に置き、中身を見せる。


「は?」


 禿頭の受付はしばしフリーズした後……ガタンと椅子をひっくり返して立ち上がる。

 そして袋の口を下ろして魔石を見る。


「……おまえら、ちょっと裏に来い」

「え?」

「良いから来い」


 有無を言わせない言い方であった。



 ギルドの応接室に通されたアルモニア一行。リラとアルタリアに初めて会った時に使った部屋よりグレードが高い部屋なのはすぐに分かった。

 毛足の長い絨毯が敷かれた部屋には絵画や花瓶が飾られている。

 思っていたより大ごとらしい。イリオス以外はそのことを察した。イリオスは……ソファがふかふかだと喜んでいる。


「みんな!」


 しばらく待っていると、ギルドに呼び出されたアルタリアもこの部屋にやってきた。


「随分と危険な魔物相手に立ち回ったと聞いたぞ! 怪我はしていないか!?」


 やや取り乱した様子のアルタリア。だが、全員無事だと分かるとはーっとため息をつく。


「おまえら、待たせたな」


 禿頭の受付が応接室に入ってきた。その後ろにはにこやかに笑う老齢の男性がいた。


「この人はうちのギルドのギルドマスターだ」


 そう言って紹介されたギルドマスターは人の良さそうな笑みを浮かべている。一行は少し緊張するも……


「ほほ。そう緊張しなさんな。ただ長く生きているだけのじじいだよ」


 と、ギルドマスターに言われて肩の力を抜く。


「チドリムを倒したと聞いたよ。どれ、魔石を見せてごらん」

「はい」


 ディーンはここまで持ってきた魔石を机の上に置き、袋の口を下ろす。


「ふむ。間違いなくチドリムの魔石だね。これほどの大きさの魔石を持つ魔物は、うちでは他にいないからね」


 ギルドマスターは鑑定のための道具を取り出してそれを見る。


「うちのギルマスは、魔石鑑定士の資格を持っているんだ」


 禿頭の受付が補足をする。やがてギルドマスターは鑑定道具をしまうと言う。


「これは良い三等魔石だね。大きさも申し分ない」

「三……!」


 三等という言葉にイリオスとシグ以外の四人が反応する。


「三等魔石? だと何がすごいんだ?」


 イリオスがきょとんとする。空気を読まない発言にディーンとコミティスが頭を抱える。


「ほほ。この大きさの三等魔石なら、この街の五日分の蓄えになるね」

 要するに、この魔石ひとつでリムフォードの街を五日間支えられるほどのエネルギーを秘めているということだ。


「うちは基本的に買い取りはしていないんだけど……チドリムの魔石は別だ。ふむ」


 ギルドマスターはさらさらとメモ用紙に何かを書き込む。


「この程度で、どうかな?」


 そしてアルモニアにメモを突き出す。ディーンがそれを手に取り開いて……息を呑む。少し遅れて、そのメモを覗き込んだ仲間達も。


「少し、待ってくださいね」


 ディーンはそう言うと、仲間達の方を向く。冒険者ギルドに売却するかどうかの相談だ。


「……お待たせしました」


 ほどなくアルモニアは結論を出した。


「買い取りを、お願いします。後は、この件はできる限り内密に」


 この街の冒険者ギルドは信頼できることは分かっている。下手なことをしてチドリムネズミを倒した件が広まれば、余計な揉め事を招く可能性も考えられた。であれば、冒険者ギルドに恩を売るついでに口止めもした方が良いだろう。

 そういう結論だった。


「ほっほ。分かっておるよ」


 ギルドマスターは禿頭の受付に目配せする。彼は金を持ってくるために部屋を退出した。

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