焦燥
翌日。
ディーンはチドリダケの群れを相手に剣を振るう。
胞子を出そうとすればただちに吹き散らす。
仲間に被害を出さないこと。
とにかくそれを意識して立ち回った。
「はあっ、はあ……」
戦闘終了後、ディーンは肩で息をする。
少し魔法を使い過ぎただろうか。頭の奥に鈍い痛みがある。
けれどこれならと、そう思った時であった。
「ディーン」
声をかけてきたのはシグだった。彼はいつも通りのぶっきらぼうな口調で言う。
「前に出すぎ。アル姉、大変そうだった」
ディーンは息を呑む。
「…………」
誰も、何も言わない。
重い沈黙が場を支配して……
「……ごめん」
ほどなくディーンは、小さな声で謝った。
夕方。
「ただいま」
ディーンは自分達の部屋に戻ってきた。するとそこには、ご機嫌で鼻歌を口ずさむイリオスがいた。今日の彼は待機メンバーであった。
「あ、おかえりディーン!」
イリオスはニコニコと手を振る。
「ご機嫌だな」
「ああ! 今日やっと、ツキフネから一本取れてさ!」
「へえ。そうなのか」
ツキフネに会いに行くたびに「次は勝つ」と宣言していたイリオスだが、ようやくそれが叶ったらしい。
「最近さ、強くなった気がするんだ! シグやツキフネといっぱい手合わせしてるからかな!」
イリオスは無邪気に笑う。
「そうか。……良かったな」
「おう!」
そしてイリオスは、身振り手振りでツキフネとの手合いを説明する、いつもの流れに入った。
深夜。
明かりの落ちた部屋のベッドに、ディーンは座っていた。
風のない静かな夜。
イリオスの規則正しい寝息だけが、聞こえていた。
さらに次の日の朝。




