撒かれた種
夕食の後、いつも通りイリオスたちの部屋で反省会が開かれる。
もちろんシグも招かれており、ベッドに腰掛けてディーン、コミティス、アルタリアの会話を眺めている。
今日議題に上がるのは、やはりというかシグのことだ。
とはいえ彼の動きに問題は無かった。連携に慣れていない様子こそ見られるが、慣れの問題だろう。
あとは六人体制になったことで、チームの運用も大きく変わるだろうという話になったことくらいか。誰か一人に過度に頼ることがないよう、工夫していこうという話になった。
「じゃあ、今日もお疲れ様」
ディーンが帳簿を閉じる。イリオスとディーン以外の四人……コミティス、リラ、アルタリア、シグが部屋を退出する。
四人を見送ったあと、イリオスは部屋の鍵を閉めた。ディーンは帳簿を手に取り、片付ける。
と、イリオスが思い出したように言う。
「今日はシグ、すごかったな」
「ああ」
ディーンもその意見に同意する。
「明日は俺が手合わせを挑もうかな。どう思う?」
「ああ。良いんじゃないか? 受けてもらえると良いな」
「おう!」
イリオスは良い笑顔を向ける。
一方、廊下を進むコミティス、アルタリア、リラ、シグの四人。
「…………」
アルタリアは静かに考え込んでいた。
やがて廊下の分かれ目で、コミティスが片手を挙げる。
「じゃあまた。おやすみ」
そう言うとコミティスは一歩足を踏み出す。
「ああ、待ってくれ」
それをアルタリアが呼び止める。
「……アル姉?」
シグがそう言い、リラがきょとんと首をかしげる。
「ああ、すまない。コミティスと話したいことがあるんだ。リラ、シグ。おまえ達は先に部屋に戻れ」
リラとシグは顔を見合わせると……分かったと頷く。
「あまり遅くならないようにしてくださいね、アルテ」
「ああ、分かっている」
リラとシグはそれぞれの部屋に向かっていく。
「……どうしたの?」
取り残されたコミティスがアルタリアに聞く。
「少し、気になることがあるんだ」
コミティスとアルタリアがやってきたのは、誰もいない宿のロビーだ。
「それで、気になることって?」
コミティスが聞くと、アルタリアは少し考えて……それから言う。
「今日の件がな。悪い意味で噂になっている」
「今日の件?」
何のことか分からずにコミティスが問い返すと、アルタリアは言う。
「手合わせの件だ」
するとそれだけでコミティスは「ああ……」と納得の声を漏らす。
「しばらくは注意して見てやった方が良いだろうな。おそらくは、私よりおまえの方が適任だろう」
「うん。そうだね。教えてくれてありがとう」
コミティスはアルタリアの忠告を素直に聞き入れた。




