収穫祭 ふみふみ Dパート
ミーアが近くを通りがかったのは、二人が夜の予定を決めたあとだった。
ミーアはクォーサイドタウンの孤児院にキユキが赴任する直前に、代理として一時的に孤児院の保護役を務めていた女性であり、セイ達男子年長組の指導役のデニスの嫁だ。セイ達の依頼によりメイド服を用意した衣類の仕立て屋でもある。
セイ達だけでなく、ミーアも当然二人に気が付いていた。
「あら、ミフィちゃん楽しそうね」
「はい。エプロンドレス、ありがとうございました」
「ふふ。かわいいからセイ君も喜んでるんじゃない?」
「そうみたいですよ」
規律と笑顔を忘れずに。ミフィは大人の対応でミーアと話していた。
ミーアもミフィと同じシルエットの赤いエプロンドレスを身にまとっていて、二人の流し目がセイに注がれた。
「どう、私の腕は」
「そうですね」とセイは前置きして、違いの分かる珈琲職人のように、マイルドな雰囲気でミーアに語り始めた。
「年度を跨いだにもかかわらず、レースにまでこだわって規格を統一したのは、流通経路もまで把握しているプロの仕事と絶賛すべきところです。そしてエプロンの出来。ここは改心といわざるおえませんね。ミーアさん、肩紐と腰紐は幅を変えてますね?」
「えっ、ええ……」
「しかも年齢別に?」
「そ、そうね……」
ミーアは引き気味だったが、セイはミーアが笑うまでセイは喋り続ける気だ。頭に浮かんだ言葉をそのまま自然に吐き出し、自動書記のように語り続ける。
「流石です。太すぎては幼き者にとっては野暮な印象を残す。かといて細すぎては見せ所の背中のたすき掛けが作る密着感が損なわれる。微妙な調整に失敗すると背中の蝶々結びがつくるふわりとした包み込むボリューム感も出てこない。重ね着になりますから、おそらく赤のワンピースから仕上げたと思いますが、エプロンの縫製においても何一つ手を抜いてない。最後まで繊細な努力が残っているすばらしい作品だと思います」
「ふふ。おかし」
やっとのことでミーアが破顔して、セイは胸を撫で下ろした。冗談が通じるかは微妙であったが、なんとか笑うまで喋り遂げた事にほっとしていた。
しかしいつまでも続けるようなものではなので、セイは次ぎのミーアの問いには普通に答えていた。
「仕立て直しのときもミフィちゃんと一緒に来ればよかったのに」
「すみません。さすがにブドウのほうが忙しくて」
「今週はずっと?」
「そうですね。でも冬がかわりにちょっと暇になってるんです」
「そっか。ほかの子達は?」
「あっちにいますよ」
屋台のほうには既に男女ともに合流している孤児院の皆がいた。セイは頭一つ抜け出しているキユキのほうへ手を上げた。
「ああ、みんな二人に遠慮してるのね。私ももう行くわ」
「そういうわけじゃないと思うんですけど……」
「あっ、そうそう。セイ君。ミフィちゃんに、あのこと謝ってくれた?」
「何のことですか?」
「あら。余計なことだったかしら」
ミーアはミフィに向き合った。
「ミフィちゃん、ちょっといい」
「なんですか?」
ミーアはミフィに近づいて耳打ちをし始めた。ごにょごにょとミーアが囁くと、次第にミフィの目蓋がグググっと下っていき、ジトーっとセイのほうを睨めつけ始めた。頬もわずかに赤い。
『あっ』
とセイが思ったが後の祭り。セイがミフィの瞳の変化から思い出した事は、先日ミーアから夜の誘いを受けていた事だ。
ミーアの口がミフィから離れると、ミフィはそのままミーアに視線をずらした。
「もう、ミーアさん……」
もごもごと口を動かすミフィに対して、ミーアはあまり悪びれた様子もなく謝った。
「ごめんね。ミフィちゃん」
「少年少女保護規則に引っかかってる。司法機関につかまるのはミーアさんなんだから」
「未遂だし、この村だからってことで、ね?」
「はい。ミーアさんは、お兄ちゃんのこと心配してくれただけですよね?」
「もちろん。それだけよ」
打って変わって表情を澄まして、ミフィはミーアに軽くお辞儀した。
「ご迷惑おかけしました。お兄ちゃん、ぱっと見は草食動物みたいだから、ほっとくと良くないって気持ちは分かります」
「ふふ。ぱっと見のところは気になるけど、これ以上はお邪魔ね。それじゃあ二人とも楽しんでね」
「はい」
立ち去っていくミーアにセイも忘れずに一声そえる。
「ミーアさんも足元気をつけてください」
もうミーアは降り返らずに、軽く手を上げて返事をするだけだった。ヒールが高いサンダル履きであったが、ミーアの歩調は華麗で、すっと伸びた背筋は安定していた。
セイが足元の箱からブドウを拾い上げて、再びジュースを作る作業をすすめようと立ち上がると、ミフィに頬をつつかれた。
ミフィの目蓋はジトッとした半目に戻っている。
「何があったの」
「何もない。そう聞いたんじゃないのか?」
「ホントにそれでいいの?」
「いや、ミフィも知ってるだろ。ギーがミーアさんの所に泊っただけだ」
「……」
「……」
「聞いてないけど」
「いや、言っただろ……っていうか、ギーが言ってただろ?」
「お兄ちゃんが誘われたとかは聞いてない」
ミフィがそっぽを向いたがセイは悪びれる様子もなく言った。
「何も無かった。俺は無罪だ」
ミフィはわざとらしく偉そうに問い詰める。
「良いか悪いかは私が決める。弁明せよ」
セイも真剣そうに伝える。
「だから、ミーアさんは提案書を知らないから、俺のペアリングの事を気にかけてくれてって感じで、そんな感じだ」
「怪しい。感じすぎじゃない?」
「感じてないって。これが日中の表現の限界だ」
ミフィはくすぐったそうに笑って芝居めいた態度をやめた。
「うん。そんなところだとは思ってた」
樽の中で足踏みを続けるミフィと、樽の中にブドウを入れるセイは向かい合って立っている。ミフィが足踏みをするたびに、液面に波が出てきて、ブドウの芳醇な匂いが香りたち、スカートの縁が揺れ、彼女の金髪が揺る。
樽の中のジュースの嵩が、ミフィの膝からほどなく近いところにくると、セイは樽の中にブドウを入れる手を一度手を止めた。
「こんなものか? まだいれるか?」
「ううん。これくらいでいいと思う」
簀子と樽の底が、ミフィの足の下にある。その分だけ普段より背丈が高くなったミフィは、バランスをとるために、セイの肩を掴んで足踏みをした。
固形のブドウより液化したブドウの量のほうが圧倒的に多い樽の中で、ミフィの足踏みとともに充実した液体がジャブジャブと小さな波を立てていた。
セイは夏からアキットの様子をまったくミフィに聞いていなかった。アキットととは気まぐれな会話などで触れ合ったりするが、夏の海以降の彼女の事情を詳しくは知らず、外から見る限りしか知らなかった。
海での出来事を掘り返すことになるから、セイはアキット本人にも無神経に聞く事ができなかった。
ミフィからの詳らかな報告もない。
もとから妹の面倒はミフィに一任しているから、常日頃から報告する習慣など二人の間にはない。平和な日々を謳歌しているような、ミフィのざっくりとした発言などから、アキットの状態の良さを理解するにとどまっているのがセイだった。
キャパシティーを越える問題に直面したとき、ミフィは事前に必ず自分へと相談を持ちかけてくる。
それがミフィの優秀さの証であり、セイが関与しない理由の一端となっている。加えて提案書にまつわる一連の騒動が今の状態に輪をかけている。
『多分もう、今しかない』
今朝がた見た夢のせいかもしれない。
「アキットの光術はどうだ?」
普段なら絶対に口にしない言葉をセイは口にした。セイは確信的に、自分が伝えたかった事を、伝えることができると感じ取れていた。
「うん。もう大丈夫。術印が複雑じゃなかったら昔の私より速かったかもね」
「そうなのか?」
「て言ってもあの術印じゃないとダメだから机上の空論なんだけど」
「指導役が二人もいればそうなるもんなのか……」
「ううん。それも違う。多分、アキット自身の力よ。それか……」
「それか、何だよ」
「誰かさんがカメさんの特定をしたからね」
「関係ないだろ。それは。根拠でもあるのか」
「うーん、最近そんな気がしてる、としか言えないんだけど」
「ふわふわしてるな。光術ってのは」
「そのふわふわを落ち着かせたのがお兄ちゃんなの。私、ホントは納得してないんだから。アキットはネコもネコさん。ウシもウシさんで、海ガメの名前だけがカメさんとか、絶対おかしいよ」
ミフィのとぼけた振りが、そのままセイの予測に呼応する。
「ミフィはまだ勘違いしてるな。あれは多分、名前じゃない」
「じゃあ何?」
「あれはあだ名だ」
「……。……。」
「多分な。ミフィ真似をしたんだよ。そう考えると何となく名前でもないんじゃないかって気がしてくる」
「そっ…か」
知ってか知らずか。ミフィの顔から読み取れるものはセイには何一つ無かった。
セイは屋台の周辺をうろついてる皆の方をみた。
カリナ達もヒース達も、皆が屋台が軒を連ねる一角で食べ物を物色していた。ヒースがカリナから激辛カレーをあーんとされて、不気味に顔色を変え、その様子を皆が笑っている。
セイは今年の収穫祭が、ここにあると信じて、少し笑った。
ミフィを見ると自分と同じように微笑んでいる。
ふいにミフィの視線も戻ってきて、ミフィと視線が交差する。
「ねえ,反対向いて,それから振り向いて」
「ああ」
セイは不思議に思ったが、言われたとおりに回れ右をして、ミフィ入りの樽に背中を向けた。そして上半身を横にひねって振り向いた。
「そうじゃなくて、背伸びするみたいに」
「こう……か?」
セイは背中を反らしてミフィを見上げた。
ミフィは足踏みを止めて、セイの肩に手をおいて、そっと舞い上がった。
静かにジャンプしたミフィが落ちてくるまでの間に、セイは頭上を囲う紅葉の前面で舞う、彼女の金色の髪を見た。
「どう? 私とカエデしか見えなかったでしょ?」
「っっ。と、そういう裏技があるなら去年もやっといてくれよ」
「ふふん♪ 私の番はおしまいね。椅子を持ってきて」
「ああ。とってくる」
言われた通りに樽の横へと椅子を置き、セイは樽から出てくるミフィの手をとって支えた。
ミフィの膝下は赤紫色のブドウジュースにまみれていたが、肌がすぐにその液体を弾き返して数本の赤紫色の液だれをに変化させ、さらにポタリと樽の内や外へと雫を追いやった。
「ミフィ」
「なに?」
「かわいかったよ。純粋に」
「純粋に?」
「最初はそれだけだったろ?」
「そうだね」
「今も残っている」
「うん。分かってる」
ミフィが脚を綿布で軽く拭いてサンダルを履き、二人は樽の側から離れて、温泉へと向かった。
ミフィが温泉の玄関をくぐると、セイは建物の外にあるベンチでぼうっと空を見上げた。
『いや、ミフィは分かってない。それに、多分俺も分かってないのか……。俺達は恋人で、アキットは妹で娘だったはずだ。だけど今のミフィは違うのか……』
セイは弟妹からの視線にさらされ続けて成長した自分というものを、手に取るように理解できていた。
ミフィが温泉で脚を洗っている間に、セイはベンチで原因の主体が自分にある可能性について考えるために、過去を思い起こした。
8歳にしてミフィから授けられた兄という仮の姿は、セイにとってあだ名でしかなかった。9歳にして、ミフィが姉となり、孤児院の中に兄弟姉妹の萌芽がうまれた。11歳にして、他の者達がその習慣に馴染もうとも、やはりセイの中ではぬぐえない違和感は残っていた。
弟妹を友達のように感じるセイと、明らかに兄のようにして扱う年下の者達。
違和感は歳が離れるほど溝が深かった。ヒースやカリナは兄と呼んでも口先だけだが、年が下がるにつれて溝の深みが増していくのは明らかだった。
当初、この違和感自体は友か兄かという二つの思想の衝突であるとセイは思っていたし、セイにとってこの違和感は特別な障害となるような物ではなかった。
セイは孤児院の皆の事が好きだったし、兄として扱われて嫌な気持ちなど何一つ感じてはいなかったし、むしろ歓迎していた。
しかし、違和感は確かに日常で衝突を繰り返していた。兄としてのセイを信じきっている弟妹達の視線は、セイの友達感覚とぶつかりあっていた。
そしてぶつかり合った違和感はやがて粒子の如く互いを削り、塵を積もらせ、またあらたな形をセイの中に作り始めていた。
セイはすぐに気がつくことができなかった。
それゆえ11歳のときに10歳のミフィにこの違和感について相談した。しかしセイはミフィに真実を伝えきれていなかった。今にしてはっきりと思い出すことができる。自分で自分のことが分からないとは、まさにこのときの状態で、明確な自分像を、当時のセイは意思伝達ができてなかったのだ。
そしてミフィもセイの違和感の正体をセイ以上に理解することができず、架空であっても善いものとして、兄たるセイの存在を肯定した。二人が恋人になるという、方位がずれた幸せな結末が、一切を藪の中に置いてきた。
しかし、11歳からの2年間。違和感の衝突は止まることなく、塵をふりつもらせて、やがてセイの中で説明するにたやすい一つの形をとるまでに成長し、そしてセイ自身も違和感の全体像を把握することができるまでに成長していた。
ただセイは、ここまで年月をかけて理解した孤児院の皆に対する内的造形を、誰にも伝えるつもりはなかった。
弟妹というある種の本線とすべき関係がありつつも、年齢ごとに、友達という感覚が強かったり、息子や娘という感覚が混ざったりする自分の感覚がある。
セイは理解してもらう必要性もまったく感じなかった。
セイの違和感は幸せの違和感に他ならなかった。幸せゆえにセイは幸せの理解に勤めたにすぎない。
自身が結論付けた孤児院内のコミュニティーに対する関係性は突拍子もなく、兄と呼ばれる今となって主張すると場違いも甚だしかったことも、セイの口を黙らせた一因であるが、父という存在は推測の域を出ない兄以上に理解しかねる人物像を、みずから名乗りあげる気持ち悪さがつきまとった事も由縁である。
父なり兄なり何某かのフィルターを通すことで、セイはただ一人で違和感をすっきりと解決して、幸せな日々を過ごしていた。
しかし、セイの違和感が頂点で具現化した瞬間を見逃していない少女が二年前に一人いた。アキットを見る目が違うと言ったのは二年前のミフィだ。
セイは彼女に伝えた言葉と、彼女から反射された声を、一つ一つ思い出す事ができた。
※
「多分、ミフィも納得できる。ミフィ、アキットは俺からしたら娘みたいなものだ」
「むすめ?」
ソプラノよりも1オクターブ高い奇妙な声が12歳のミフィから帰って来ていた。
「娘みたいなものだろう。ギーは息子みたいにも見えないか? なんていうかその辺から下のセリアとかクロエとかラルフとかも、そんな感じがしないか?」
「ふぇ?」
「だから、俺と……」
「なに?」
絶望の縁に立たってセイに語りかけていた先ほどとは打って変わって、ミフィはぼけた感じでセイを見つめていた。一対の金色の瞳も月夜の下でいたずらに光っている。
確かに先まで勇者置き去りにされた幼馴染の修道女のような悲壮感を見せていたはずだ。
「突然正気に戻るなよ」
急転直下。ミフィの態度は反転していて、セイには呆れる暇もない。
「むぅぅっ。言わないなら怒る。また泣く」
「いっただろ。それにもう聞こえようなもんだろ。その顔は」
「じゃあ。泣く」
「わかったよ。だから、歳が離れすぎると俺とミフィの子供みたいに感じるだろ。いくらあいつらが兄だとか姉だとか言っても……」
「へ?」
「だから何回も同じことを言わせようとするなよ……」
「ダメ! ため息禁止! もう一回」
聞き逃しようがない距離まで、ミフィはセイの元へと歩み寄ってきていた。
※
ミフィが他の妹達とは異なる恋人目線だと誤解したセイがアキットへ送る視線は、セイが抱えていた違和感の産み出した弁別によって、ミフィに説明されていた。
恋人としてのミフィと娘としてのアキット。二人の妹に付加されたもう一つの属性は一人の男がかかえる二つの愛情として無矛盾で成立し、ミフィを納得させたものだと思っていた。
将来が約束できない未来を前にして、ミフィに兄としての立場を与えられたセイは、成長とともに誰よりも速く未来に到達していた。
C+という自分の半端な弱さが産み出した幻想ではないかとも思う。
死地のほとりからみた理想郷をミフィが喜んだことを、セイは不可解に感じたが、ミフィであっても自分と等価な死というものが潜んでいる当然のことに気がついたのは、あのあとミフィと強く抱きしめあったときのことだった。
※
出兵を前にしてなぜ平気そうに過ごしているのかを、以前ヒースに問われた事がある。セイは実戦の実感がわかない事や、弟妹達のまえで焦りおののく愚かさを返答にあてがっていた。
結果としてセイの父親感覚はセイとミフィの二人だけが知っている二年前の砂地にこっそりと隠した事実となっているはずである。次女のカリナや次男のヒースなどからその話が漏れきたことは無い。
セイのほうも父という新たな解釈を表に出す気持ちがもうはっきりと無くなっていた。
セイは兄として皆との関係性が固着するなら、それでいいと思っていた。虚無や仲違いがなければそれでいいとしていた。
ここにおいて、セイ自身の父親としての視点、あるいは二人の父母視点は、当時の孤児院にとって余計な障壁でしかなかった。今がよければ、今を変える必要は無い。余計な試薬や純度を落とす。ミフィが作った兄弟という解釈でセイは満足だっし、おそらくミフィもそうであったとセイは思った。
少なくとも今年海に行くまでセイはそう確信していた。
※
『二年前、ミフィに聞かれなかったら、俺は多分、今もミフィにも何も言ってない。だけど、そこを見逃さないのがミフィだ。察知の射程が半端じゃない。あるいは自分よりも遠く、速く……。ミフィはそういう所がある。ただ誤解もあるからその時はぶつけてくる。今まではそうだったけど……』
思考を巡らしても答が出てこない。
『じゃあ何でアキットの話題が出た後に気を引くような事をした……。矛盾してないか?ミフィは俺を突き放すべきなんじゃないのか? 今日はマジで単なる収穫祭なのか?』
ベンチに腰をかけて空を見上げれば、青空の中で秋の太陽が、正午前の輝きを放っていた。
予定通りすすめば、今年はもうミフィは樽の中に入らない。
ミフィのブドウ踏みはもう終わったのだと、セイは一人で思い起こしていると、ミフィが温泉から出てきた。
自然と彼女のほうをむき、必然的に太ももにも目がいって、いすわっている自術印の端っこがチラチラと見える。
『で、どうやってスカートをめくるんだよ?』
目算が立たぬまま、近寄ってくるミフィと呼吸を合わせるようにセイもベンチから立ち上がった。
「おまたせ。お兄ちゃん。私達も行こ?」
「ああ。行こう」
セイはミフィと横並びで歩き始めた。何も語らずともミフィの足取りも孤児院の皆の所へと向っている。セイはなぜか結ばれない二つの手を、おそろしく遠くから見ている気になった。
向かう先にはエプロンドレス姿のアキットも見える。
『それだけだ』
セイは必要以上に考えずミフィの手を取った。




