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イグニション前の速度より  作者: 紀
【秋の章】
72/82

収穫祭 ふみふみ Aパート

 収穫祭前夜。セイが男子年組の部屋に帰ると、男子達はもう皆眠っていた。


 ロックとギーのベッドには年少組の男子の幼子も眠っている。それぞれ額をつき合わせている。一人で眠っているヒースは少し寂しそうに見えなくもないが、孤独とは無縁そうなのっぺりとした寝顔を見せている。


 セイは物音に気をつけて、そっとベットの中に滑り込んだ。


 セイの体内には、日中の農作業に加えて、3時間の立ち仕事があった。この時期に限り訪れるその疲労は、本来なら素直に愛せる達成感があるのだが、今のセイはえも言われぬ倦怠感けんたいかんを感じていた。


『人形劇にまではいきついたけど……』


 人形劇への参加が決まった事は躍進とは評価できない。それはミフィを説得するための地味な第一歩だ。ここからまだ、ミフィの説得しうる道筋を探らなければならない。


 本来ならすぐにでも。


 しかしどうしても慣れることができないキユキとの会話に、セイはロジカルな思考や、言語的な回路を過剰に作動させてしまう。


 考えたくもないミフィの太ももに刻まれた自術印も脳裏にちらついている。


『今日は寝たほうがいいな』


 セイは今日において何かを考えるのは得策では無いと思った。明日疲れた顔で皆の前に出るわけにもいかない。


 残された時間は有限であるが長大だ。この点は明らかにセイにがある。同室で寝顔を見せている弟達もいる。セイは自分にとって手短にある安心材料を心に込めて眠りに入った。


 そしてセイは2年前の夢を見た。夜に夢見る夜の夢。セイの無意識は、セイ自身を夏の夜の砂浜にいざなった。



――お兄ちゃんはアキットの事が好きなの――


 テントの中で7歳のアキットはすでに眠りについる。


 13歳のセイは、失意の底に落ちたような12歳のミフィをテントから夜の砂浜へと連れ出した。


 ミフィが悲観的に泣き出すようなところ、セイは長い間見ていない。彼女が7歳以来のことだ。


 一言でも繰り出せば……。ひょっとしたら喋りださずともすべてを悟る妹を前にしている。事態は深刻で、慎重な話し合いの場が求められている。


 ただテントを出てすぐにセイは周囲は警戒した。海ガメはいない。


 心を落ち着かせて、セイはミフィへと向き合った。


「俺はアキットの事が好きだけど、そういう意味で聞いてるんじゃないんだな……」

「馬鹿みたい。そんなこと聞かないでよ……」

「そういう意味で好きじゃないって言っても、信じてはくれないんだな?」

「だって、そうでしょ。目が……違う。違ってた……」


『自分の直観を疑わない。なにより、その直観がほとんど外れない。……。そんなに俺は違ったか……。目が違った? ミフィには何がみえてるんだ……』


 反射的に自身の心が偽りを呟いた事を、セイは自覚した。


『いや、違うか。ミフィには見えてるんだな……』


 セイは異常な居心地の悪さを感じていた。その一つはミフィとの距離感だった。泣いているにもかかわらず、自分と遠い。二人のあいだにあるのは拒絶の距離だとセイははかった。悲しみを自分一人のものとしてもぎ取っているミフィの様子が見て取れた。


 ただ、ミフィはまだ口を聞いてくれている。セイは拒絶の距離を、ギリギリで拒絶されていない距離と認識を改めて、ここに残す言葉を慎重に選び取った。


「ミフィ、俺がミフィの事が好きだという事は信じてくれないのか?」

「信じてるよ。でも、お兄ちゃんは二人を同時に好きになるタイプで、多分、もしかしたら私よりアキットのほうが……」

「……」

「……」

「分かった。俺は多分ミフィに答えることができる」

「なに?」


 ミフィの潤んだ金色の瞳が、月明かりを強く反射していているが、まったく自分のほうに向いていない。


「多分、ミフィも納得できる。俺はミフィに勘違いを分からせることができると思う」


 わずかに余分に吸い込んだ大気は、普段は届かない鼻腔の奥にまで行きとどいて、慣れたはずの潮風の匂を感じることができた。


「ミフィ、アキットは俺からしたら……娘だ」

「ふぇ?」


 ミフィの涙は止まっていた。二人の視線が交差しているのか、セイには理解できなかった。後にも先にもミフィの目があそこまで小さな点になったのはこのときが初めてだった。



 プニプニとした柔らかい感触がセイの頬にあった。


 年少組の男子であるラルフとレオが、愉快そうにセイの頬をつついて、顔をほころばせていた。


「「セイ兄ちゃん。朝だよ」」

「あ、ああぁぁ。朝かぁ」


 寝ぼけまなこのセイが可笑しいのか、二人の幼子はまたクスクスと笑い始めていた。


 幼子とは異なる若きテノールの声が聞こえる。


「起きたか。兄貴。そろそろ俺達も動きだそうぜ」


 すでに着替えを済ませた次男のヒースが、ソファで足を組んで座っていた。そこで一体何をしていたのかと思えるくらい、手持ち無沙汰で、すっきりとしたキメ顔だ。


 三男のロックと、四男のギーも似たようなものだった。

「やばくね。晴れずぎじゃね?」

「うん。すごいね」

 すでに部屋のカーテンは空けられていた。扉を開け放ち廊下で会話している二人は、窓際にたたずみ、朝霧を払ういつもの天気を過大評価している。


 早起きの弟達に送れないように、セイもさっさと着替えた。


「行くか」


 孤児院の男子全員は廊下に出た。廊下からみえる女子年長組の部屋の窓から、光術の光は漏れていない。ミフィ達の不在は本日の予定に従ったもので、彼女達を含む孤児院の女性陣は早朝から温泉に一足先に出かけている。今日は清潔にしておくことが重要視される。


 セイ達男子も午後から温泉に入る。そのために部屋から出るとき、衣類などが入った温泉用のバケットを持って出ていた。


 ぞろぞろと玄関から出て、セイ達は倉庫へ行き、リアカーにバケットを乗せて引っ張り出して、食堂の勝手口付近に停車させた。昨日作った生の串焼き、木製のジョッキやコップ、綿布フキン、おレードルといった入用な道具が入った箱を積載する。


 皆で準備を整えると、朝のひやりとした空気のなか孤児院の庭をつっきって、門から出発した。



 石畳の路地を進めば、住宅区画を構成する村の家屋かおくが立ち並ぶ。余分な間取りがなさそうな、こじんまりとした平屋の一軒屋がならんでいる。


 軒先や屋根の上に突き立てられたのんきな風見鶏の姿がよく見えた。無回転。雲も風もない秋晴れが予感される。


 セイ達が目指しているのは村の中央広場だ。


 石畳みの路地を歩めば、次第に村人と遭遇そうぐうする。セイ達は道中や庭先に出てきている村の大人と三人ほど挨拶をした。


 中央広場が本日の収穫祭の会場となっている。普段は単純に〝広場〟と呼ばれているその場所は、直径80メートル程度の円形に開かれた土地だ。円の中心に巨大なカエデが一本生えている。


 カエデは樹高15メートル程度はあろう見事な立ち姿だ。根元には自重を支えるにふさわしい根系こんけいの隆起がある。


 四方八方に伸びる枝葉も立派ではあるものの、五指に分かてる分裂葉は一つ手に取ればうっすらと繊細で、真紅の色素が苛烈であるにもかかわず、可憐な印象を残している。散り行くすべまで熟知した、地母神の叡智を感じずにはいられない。


 セイはやはり収穫祭が好きだった。


 今にも落ちてきそうなあかい葉が、広場の地面に数枚しかないのは、前日の行き届いた清掃によるものだ。


 迷惑極まる落葉樹の悲しきさがは確かに存在するが、セイのみならず村人にも愛されているクォーサイドタウンのひそかなシンボルだ。セイは見下ろされている気分を味わう。


 カエデが根を下した地面の周辺には、たるが30本程度であろうか……たくさん並んでいる。カエデから見ると、樽の一つは痩身そうしんのように見えるが、30数本近く並んでいる樽から見ると、数の原理でカエデをふもとから圧倒しそうな勢いがある。大量の樽はカエデに対して歪な円形つくって取り囲んでいた。


 対して円形の広場の外周部には屋台や休憩所が立ち並んでいる。


 屋台のほとんどは飲食に興じるものだ。早朝ということもあり本格的にサービスを提供している様子はない。木製の骨組みや、テーブルのほうが目立ち、人が入っている屋台より無人の屋台のほうが今は多い。


 そのような屋台の人員を含んで、今会場にいるのは20人程度のだろうか。のんびり準備している様子であるが、中には熱心に準備をしている者もいる。


 要所は押さえられているのだろう。レンガ造りのコンロには火が入っているし、陶磁器でも焼けそうな大きな釜の煙突からは煙がもくもくとしている。それらの調理場は仮設ではなく、地面から石を積み上げ作られた動かすことのできない建付たてつけらた設備だ。広場の一部はもよおし事を想定した設計になっている。


 コンロでは大きな寸胴ずんどうの鍋でスペアリブやカレーが煮込まれているし、トマトソースが赤く煮込まれている鍋もある。窯の近くのテーブルにはトッピング前の生ピザが生地が待機している。槍のような巨大な串でコンガリと焼かれている鹿らしき胴体もある。設備もヒトと同様に、すでにいかんなく能力を発揮している箇所もあるが、試運転中の箇所もある。

 

 セイは広場を見渡し、例年通り、収穫祭の会場は準備段階としては充分に仕上がっていると見て取った。


 中央のカエデは不動の地位があるとして、円の内側の樽と、円の外側の屋台……。ともに立ち並ぶそれらは、普段の殺風景な広場を、二重丸の巨大なスペースに作り変えている。


 この二重の円の間に通路がある。通路の石畳は十分に広く、人が行き交うには不便がない。参加者はカエデの裾野すそのに広がる樽と、屋台や休憩場所に挟まれた円形の間を闊歩できるだろう。


 ※


 セイ達が広場へ入るとすぐに、屋台の前にたたずむ村の女性から声をかけられた。


「セイ君達も食べていって」


 この村人とのつながりは薄い。名前がマリーという事をセイは知っているが、普段は挨拶以上の口を聞くような相手ではない。しかし今日は特に柔和な対応を感じる。


 彼女はすぐ側にある簡素なテーブルの上を案内するように片手をあげた。そのテーブルにはタルトが並んでいて、タルトのクッキー生地の上には、旬の果物が宝石のように乗っている。


「はい。いただきます」


 ここに至りセイ達は朝食にありつく。


 机の上にはセイ達が食べきれないほどタルトが並んでいる。セイ達に限られた朝食ではなく、後から来る村人の分も並んでいる。


 セイ達は村人に礼を述べて、後から来る者の邪魔にならないようにリアカーを押し出してその場を去り、歩き食いをしつつさらに広場を進んだ。


 男子の年長組はみな片手でリアカーを支えての歩き食いだ。年少組は両手でタルトをつかんでほお張っていた。


 他にもすぐに食べられそうなものはある。ベーグルサンドなどが並んだ机だ。それもほどほどにしてセイ達が進むのは、単純に食べきれないからだ。


 基本的にセルフサービス。村人は無料。クォーサイドタウンの村外から来た者は参加費を払って食い放題になる。


 そして今日は同時に飲み放題だ。飲み物はもっぱらブドウ酒である。屋台の一部に用意されたテーブルの上には所狭しと酒ビンが並んでいる。ここに並んでいるのは過去に醸造じょうぞうされた酒だ。広場にいる一部の村人はラッパ飲みで飲んでいるが、このスペースにはジョッキも伏せられて並んでいる。


 前年度や前々年度に醸造じょうぞうしたブドウ酒を飲みつつ騒ぎつつも、今日において今年度のブドウ酒の生産工程を参加者が協力して進める。これがクォーサイドタウンの収穫祭だ。


 当日の飲酒についてはセイ達には関係のない話だから、セイ達はブドウ酒の前は素通りして進んだ。


 遠目の箇所にある広場の出入りには、日除けのパラソルがあり、その下ではゲート・キーパーたる夫婦が一組いる。当日参加の者から配布交換量かねを徴収するのが彼と彼女の役目であるが、いつまで持つかは謎であった。彼らはすでに酒ビンを開けている。


 酔いつぶれたら交代することになることを、長年の経験でセイは知っている。気にすることでもない。


 しかし、気になるのものがパラソルの上の横断幕であった。


 ☆ クォーサイドタウン 収穫祭  1051 オータム  です ☆

 

 横断幕には、丸文字のフォントで綴られている。1051は公国暦だ。


『去年はあんなの無かったけど……、村長あたりから頼まれたのか?』


「ルネはいつの間に横断幕を作ったんだ?」

「学問のときだな。チビ達とかキユキさんも一緒にやってたぜ」


 セイは自己主張を忘れない〝です〟の二文字から製作者を割り出してたつもりだったが、ヒースの答とはわずかな差異があった。功労者の幼子二人を見ると、彼らはベーグル・サンドに夢中だった。


 食におけるめざましい成長をセイは感じるが、食べ過ぎて嘔吐するまえに優しく注意しつつ取り上げて残りを食べた。子供用の大きさまでは用意されていない。



 広場を進むセイ達は、屋台にいるデニスの元へと辿りついた。彼はセイ達男子年長組の指導役だが、今日ばかりはおもむきが違う。剣などは持っていない。


 デニスはレンガ造りのコンロを前にして椅子に座り、天空を仰いでいた。横幅があるコンロの上には網が乗っており、下でチリチリと燃える炭には弱火が入っている。準備万端といったところか。セイ達が近づくとデニスは気がついて機嫌よさそうに立ち上がった。

 

「よお、ごくろーさん」

「おはようございます、これをお願いします」


 セイ達はリアカーに載せた生の牛串入りの箱をデニスにわたした。


 受けとったデニスは、屋台の奥にあるテーブルの上に、箱を積み上げていった。両腕で抱える程度の並の木箱が、10箱分机の上に並んだ。分担した者から別口でまだ牛串が届くという。よほど根気よく焼かなければ処理できないと推測される。机の端には、やはり調味料が並んでいた。


「お前らの場所はだいたいあの辺だ」


 デニスは樽のほうを指差した。

 円形広場の中央の方角で、カエデのふもとに立ち並ぶ樽だ。郡をなして数が多いが、セイはその一部分を目ざとく見極めた。五本の樽が横並びでグループ化して立ち並んでいる。

 セイには自分達がブドウ酒をつくるワーク・スペースに検討がついた。


 ただ、去年は自分達で樽を倉庫から運び出した記憶がある。今年も朝はやく広場に出てきたつもりであった。セイは今年に生じた変化を、デニスへの礼の中にそれとなく組み込んだ。


「ありがとうございます。もう樽が並んでますね」

「いや。俺じゃねーよ。ユンゲルの奴だ。奴が運んだ」

「ユンゲルさんが……」


『アキットがたまに海ガメの様子を聞いてる人だよな……』


 ユンゲルは樽の製造に関わっている木工職人であり、海釣りを趣味にしている村人だ。今年の夏以来、彼が海から帰ってくるたびに、アキットは海ガメの様子を尋ねに出かけていた。そのせいもあって懇意にしてくれている村人の一人となっていた。優れた釣果ちょうかを上げたときは、むこうから孤児院に魚も持ってきてくれる。


「ただ、その樽の中にセイ様専用って書いた紙を放りこんだのは俺だ」

「なに書いてるんですか……」

「なんだ? 樽の外にちゃんと貼った方が良かったか?」

「その微妙に許されそうなところ突いてくるやめて下さいよ」

「ははは、まあ楽しんで来いよ」


 デニスはそういって、酒ビンを手にとりブドウ酒を口に注ぎ込んだ。朝っぱらか飲めるのが今日という日でもある。準備のためにという建前もあるのだが、デニスのように血液はブドウ酒で出来ていると信じるタイプが、早朝の当番となっている側面もなきにしもあらずだ。


 再び歩みはじめたセイ達は、指定されたスペースに向かう前に、箱詰めされたブドウがうず高く積み上げられた広場の一角に立ち寄った。


 その場所は簡易な露天が3軒並んだブドウ専用のブースで、日除けのほろが柱に括りつけられ、その果実が直射日光から大切に守られている。


 生の牛串を失い、軽くなったリアカーの荷台へ、入れ替わる用にブドウが載せられた。中型のリアカーであるが、中々の量が積載される。セイの腰丈程度まで木箱が重ねられた。

 

 セイ達がちょこちょこと広場を移動して、最後に行き着いたのが、デニスに指定されたワーク・スペースとなる場所だった。ここは、通路を挟んで休憩もできる椅子やテーブルが程よい距離感である。箱をリアカーから樽のそばに下してセイ達は準備を進めた。



「お兄ちゃん行ったぁ! 止めて!」

 突如として長女のミフィの声が響いた。

「へっ?」

 声の方を見ると、タタっと走り出している四女のアキットがいた。

 

 髪飾りはホワイトブリム。真っ赤なワンピースはフレアのスカートであるが、重ね着されたエプロンは真っ黒だ。どきついコントラストを作っている。要所に散りばめられた黒のレースがディティールへのこだわりと立体感を演出している。足元は素足が際立つ革編みのサンダルが支えている。


 だがどこぞの人形とは思えない直線運動のアジリティがアキットにはあった。思えば普段から室内ではスリッパで起用に助走をとる妹であったとセイは悟る。今はギロリと挑発的に目元が光っていた。


 セイはアキットを凝視することなくあたりを見渡した。弟達はアキットの着地地点からさっと身を引いている。しかし逃がしきれていないブドウ箱がわずかに着地地点にかぶさっている。


 セイは細かな判断を切り捨てて、着地の失敗は惨事に繋がると予測した。足元のサンダルも不確定要素に含むべきだ。


「止まれ! アキット!」


 セイは両手を前に出してアキットを抑止した。バリアでも展開しているかのようだが、所詮はからの両手である。アキットはなおも近づいてくる。


「止まるんだ!」


 二度目の声は聞こえたのか。

 アキットはトトトっと減速してセイの直前で立ち止まった。

 セイがほっとしたのもつかの間。

 アキットは垂直に近いジャンプでセイの胸元へ飛び込んだ。

「どう、かわいいでしょ?」

「ああ。一番おいしいブドウ酒が出来そうだな」

「ありがとう」

 えへへ、と絶えない笑みに弾ある声。セイはアキットを抱きしめて受け止めた。サンダルの足がくすぐったそうに宙で揺れている。


 セイはアキットの後方にいる女性陣の中からミフィを見た。視線は他所に。ミフィはカエデを指差して、女子の幼子達に四季の妙を教えているようだった。



 すぐに残りの女性陣もセイ達のところへと辿りついた。彼女達は朝から温泉につかっており、風呂上りでエプロンドレスに着替えて、この場に登場した。


 アキットは次女のカリナの手によって、両脇に手を突っ込まれた。

「今日は姉さんに譲ってあげてね」

「うん」

 アキット振り返ってカリナの顔を見て頷いた。

 カリナに抱き抱えられてアキットはセイから離れていく。

 小さなぬくもりも離れて、地上に下ろされたアキットは、三男のロックや四男のギーのもとへと去った。


 ようやく到着したミフィはカリナに苦笑していた。

「別にいいのに」

 カリナは対話を怠るように視線をずらして、ミフィに付き合わなかった。


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