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イグニション前の速度より  作者: 紀
【夏の章】
44/82

ファントムペイン・スピーカー

 間近で海を見て、皆が一応の落ち着きを取り戻したとミフィは判断する。

「よし。それじゃあ。……、集合ぉぉぉ」

 ミフィの号令により、皆は波打ち際から緩やかな砂浜の坂を上って、セイが待機していたリアカーのもとに集まった。引き続きミフィの指示が飛ぶ。

「私達が子供達の相手をしておくから、年長組の男子とキユキさんはテントの設営。予定通りお願いね」


 それからセイ達はリアカーを引いて少しだけ街道を戻った。そして道から少しそれて雑木林の中へ少し入った。森から海の方を見てヒースが尋ねる。

「ここら辺なら海ガメから見えないっすよね?」

「うん、大丈夫かな」

 二人は砂浜に上がってきた海ガメから、テントが見えないような位置であることを確認し合った。アキットによる事前の指示である。海ガメが見慣れぬ建造物を前にして警戒心を持ってしまい、砂浜に上がって来なくなることを防ぐための配慮だ。

 

 セイ達はリアカーから鎌を取り出し軽く下草を刈って地ならしをする。そして事前に練習したテントの設営を思い出しながら作業を始めた。

 竹のように軽い木材を三脚のように組み上げる。天井側に位置する木材には互いを安定させるために切り込みもある。さらに革紐で括ることで強固にする。

 その三脚を2台作り、そられに橋を架けるかのように天井を支える木を乗せ、テントの骨組みを作る。

 あとは大地と骨組みにシートを被せテントを1台を作り上げる。

 5人は、練習どおり滞りなくテント6台を組み上げた。


 ヒースが、スンスンと鼻から空気を吸い込んで問いかける。

「キユキ姉、この風だと杭はいらないよな?」

「そうね。時期もいいし、大丈夫だと思う」

 

 二人の結論をセイが破る。

「一応、打っておきませんか?」


 夏季の気候の安定性は公国民の体に染み付いているし、嗅覚からも疑いようがない。

 ロックの感覚もその予測を感じていたから、セイを咎めた。

「なんでだよ。疲労とリスクを比べて、ここはリスクをとってもいい所だろ。風の匂いも季節も天気が崩れるなんて言ってねーぞ」

「……。寝相が悪い奴がいるかもしれないだろ?」

「……」

 瞳孔が開いたような瞳に様変わりしたロックは、黙ってリアカーのほうに歩き出し、金槌と杭を持ってきて、一人で三脚の固定を始めた。


 カーン、カーンと乾いた打撃音が辺りに響く。


 作業を始めたロックであるが、キユキはそれを止めたいと感じていた。キユキは遠慮がちにであるが言うべき事をセイに伝えた。

「でもセイ君、三点屹立きつりつが二つもあれば、寝返りくらいで崩れるとは思わないんだけど……」

「ええ、俺もそう思います。それに庇護欲が働いている相手のときは大丈夫なんです。本能的な〝それ〟のおかげか知らないですけど、大人しく寝ています。俺が言うのもなんですけど、かわいいものです。でも、それが途切れている相手だと彼女の寝相はときどき容赦がないんです。もうずっと昔の話しで確証はないんですけど」


 キユキはここぞとばかりに土足で踏み込む。

「じゃあ、ミフィちゃんとセイ君のテントだけで大丈夫ね?」


 セイは少し眉間に皺を寄せて天を仰いだ。

『この人は少年の感情をなんだと思ってるんだ? いやミフィが洗いざらい喋っているのか? 一応ギーとかもいるわけなんだが……』

「ああ、ごめんなさい」

「いえ、大丈夫です」


 ヒースが勢いをつけてセイの肩に組み付く。

「二人の事とか今更気にしなくてもイイッすよ。なっ兄貴」

「あぉおいっ。って。はい。俺達は別に大丈夫です」

 セイは表情を切り替えて穏やかにキユキに答えた。

「ごめんね。でも突然、彼女なんて言ってるから、なにかおかしくて」

 キユキもここまで来てあまり遠慮するのはどうかと思い、最後に穏やかにふふっと微笑んだ。


「ええ。ですから、ここから冗談めいた話になります。いや、違うか。もう冗談にならない話になっているのか……。隠す事でもないですから事実を言いますけど、俺は昔のミフィとしか寝た事はありません。あくまで寝ただけです。小さかったからですね。俺も、ミフィも。寝ていただけです」

 愛想を撒くように、キユキは笑う。

「ふふふ。大丈夫、そんな三回も言わなくても」

「いえ、大事なのはそこじゃ無くて、ミフィの妹ってこと考えると、やっぱり〝彼女〟って言った方がいいのかなって、思ったりもしてます」

 喋り終えたセイは、視線をロックのほうに流した。


 その瞳を追いかけて、キユキもロックの光景を視界に入れる。


 額から流れる汗。打点を捉える深刻なまなざし。カーン、カーンと、金槌と杭が作る警鐘けいしょうは、キユキの耳から心の深部にまで入り込み、新たな鼓動を生み出した。

「だって……そんな事……あるわけ……」

 ギーがロックのそばにポツンと立っている。その姿はどこか寂しそうにロックを見下ろしている。伏し目がちなその瞼は、祈りが無残に朽ちていった信者の哀惜を感じさせるようにも見える。


 キユキから笑みが消え去った。

「う、打ち込みましょうか」


 5人は三脚の足元に杭を打ち込み、杭と三脚の脚をきつく革紐で結んだ。


 作業中、ヒースに一抹の疑問がよぎる。

『気持ちは分かる。俺達の血は繋がってない。本能的な〝それ〟ならば起こるはずはない。しかし何なんだよ……この説得力は。……そして、さらっと大事な事を三回野に放つ。他の妹と寝て無い事がそんなに重要なのか?』


 キユキと男子年長組はテント6台を無事に組み上げた。



 十四時。セイが再び砂浜に帰って女子と年少組をテントに呼び寄せた。


 一堂がテントに集まり、キユキがミフィに最終確認を取る。

「じゃあ、後の事はよろしくね。もし起きてこないようだったら十七時半には起こしてね」

 キユキがテントに入ると、アキットも遅れぬように後に続いたが、

「みんなも気をつけてね」

と年少組の幼子達に軽く注意を与える事も忘れていなかった。


 キユキとアキットは、海ガメが夜に来ることは理解しているので、今の内に寝ておく算段だ。


 残った者達は水着に着替え始めた。

 男子はその場で服を脱ぎ始める。天井が低いから着替えにくい事を知っているし、あらかじめ水着をズボンの下にはいている。服を畳んでテントの中に入れる。

 女子は特に目もくれる事無くテントに入って着替え始める。膝を折り小さくなって着替えるが、彼女達もまた服の下は既に水着であり、服も畳む。

 水着は男子は腰紐がついているハーフパンツや短パンのようなズボンで、女子はそれに加えての着丈きたけが腰まであるノースリーブだ。色は赤や青や紺色などで水に濡れて透けないものをおのおの選んで着ている。それは水着というより濡れてもいい服に近かった。


 皆は再びテントから砂浜に向かったが今度は海を前にして誰も走り出さなかった。幼子達の一部はしっかり年上のものに捕まえられていたせいもある。


 

 年長組みの前にそれぞれセットになっている年少組の幼子達が立って横に列を作っており、その横の列と相対するようにミフィが立ちテキパキと指示を出す。

「最終確認を始めるわね。カリナはクロエ、ヒースはラルフ、ルネはセリア、ロックとギーはメイから目を離さない事。私はレオを看るから。あと波にさらわれた子が出ても自分の担当の注意を離さないこと。救助にはお兄ちゃんに向かってもらうから。ヒースがキユキさんを起こしにいってね。私とカリナが救命処置をするから。ルネとロックとギーは2次被害が起きない用に他の年少組の子から目を離さないでね」

 それからトーンを上げて、ゆっくりと年少組の幼子達に伝える。

「みんなもお兄ちゃんとお姉ちゃんから離れちゃダメだからね。波はあっという間にみんなをつれてくんだから」

「「「「「はーい」」」」」

 年少組の幼子達は素直に答える。 


 列の端っこでセイがいぶかしむ。

「ミフィ、それじゃダメだ」

「なにがダメなのよ?」

「みんな分かってない。溺れるって事を何一つ分かってない。特に年少組は分かってない」

 ミフィは冷めた目でセイを見てから幼子達の方へ向き直る。

「分かってないわけ無いわよね。今日まで沢山、海のこと約束してきたんだから。みんなも約束、守れるよね~?」

「「「「「うん」」」」」


「ほらぁ」

「いや、分かってない。恐怖を前にしたときのそれに想像が及んでいない」

「じゃあどするのよ?」

「水難訓練を提案する。きっちり可視化して、溺れたらどうなるか見てもらう。今、ここで、これ以上分かりやすい教訓はない」

「ああ、そっか。ちょっと待って」


 セイとミフィの会話に退屈し始めたギーが隣にいたカリナを見上げる。

「カリナ姉ちゃん、水難訓練スイナンクンレンって何するの」

 カリナはギーに向けて微笑んで、サラリと答えていく。

「見て」

「うん」

「聞いて」

「うん」

「触るの」

「ふーん」

 

「いや感じるんだろっ!」

最後に怒鳴ったのはヒースだった。

 よしよしとギーの頭を撫でようとしたのだろうか。カリナの動きかけていた手は数センチで止まっていた。カリナはつまらない存在のようにヒースを見つめた。


「はい!」

と雰囲気を変えるようにミフィが声を響かせて皆の注意を引いた。

「じゃあ、これからみんなに溺れたときに、どうすればいいかを知ってもらうから。誰かが溺れたら大変な事になるけど、そのときにどういう風に動けばいいか、今から私たちが劇みたいに見せるから、それを覚えて、もしものときはみんなその通りに動いて欲しいの。できる?」

「「「「「?」」」」」

 5人の年少組はミフィの長文に処理能力が追いついていない。どーする?、何するの?、などと口々に言い始める。

 

 ミフィはすぐに失敗を悟った。 

「ごめん、お兄ちゃん、もう少し分かりやすく言えばよかった」

「いきなりだったからな。理解のそばまでは来てると思う」


 ルネが、やれやれです、と首を振ってから年少組の幼子達に噛み砕いて説明した。

「いいですか? 誰かが溺れると直ぐに帰ることになるです。そうならないようにするために今から最後の練習するです」

 ロックがもっと短くした。

「何か始めるときはいっつもそーだろ? しばらく見とけって事だ」

「「「「「うん」」」」」


 カリナが付け足す。

「そう。見て、聞いて、触るの」

「だから、感じるんだろ!」

 カリナは煙にいぶされたような顔でヒースに舌打をした。


「ヒース。お願いね」

「は? 何をやるんだよ?」

「溺れる役よ。行ってきて」

「マジか……」

「ヤなの?」

「嫌じゃねーけど。そんな上手くできっかなぁ」

「下手でもいいから。時間も押してし。急いで」

「わぁーったよ」


 ヒースは駆け足で泡立つ波打ち際まで向かった。腰のあたりまで海水につかると、少し泳いで沖に出て、溺れる真似をし始めた。

「だ、誰か!! た! た!  助け!!……」


 必死で手を振るヒースからは、とりあえず慌てふためいている様子が伝わってくる。


 ミフィはサンプルを指差して年少組の幼子達に向けて語り始めた。 

「いい、大体あれが溺れ始め。苦しそうでしょ。でも皆は助けに行っちゃだめなの。どうしてか分かる」

「「「「「?」」」」」

 幼子達は互いに顔を見合わせたり、ミフィに向けて不思議そうな顔を向けていたりした。


 ヒースの一人演技は続いている。

「く、くるし、誰か……、たうけてくれぇぇ」


 ミフィはセイに近づくと、耳打ちをして指示を出した。

「お兄ちゃん、二次被害を起こして来て」

「分かった」


 年少組の幼子達に向けてミフィは講義の続きを始めた。

「いい、例え溺れたとしても助けに行っちゃダメなの。よく見てて。ああいう風に、助けに行ったヒトも一緒に溺れるときがあるから」


 ヒースの近くまで泳いで行ったセイは立ち泳ぎを始めて、ヒースに伝えた。

「ヒース、助けに来た奴も一緒になって溺れる場合だ。再現するぞ」

「ああ、そういうことか。分かった」

「始めてくれ」


 ヒースはがむしゃらに手を動かしつつ飛沫を散して、セイにのほうへと近づいた。

「あ、兄貴、たすけ」

「い、今、たすけ」

「あ、あに、あにき、いきが」

「やめろ、あば、あばれるな、おちつ」

「たすけ、たすけて、たすけ」


 セイとヒースは上半身を海面近くで無様に動かし、くんずほつれつしている。が、ヒースはセイ右腕だけに自由を与えて、左腕を体ごと抱きこんだ。

 セイは血相を変えた表情を作って叫び声のボリュームを上げた。


「はなれ、はなせ、俺まで、くっ」

「水、くるし、足が、もう」


 波音に負けぬず、砂浜の皆に声が届くように、セイとヒースは声を張り上げた。


「あにきっっ!!」

「ヒースっっ!!」

「あにきっっ!!!!」

「ヒースっっ!!!!」

「あにきーーーっっ !!!!!!」

「ヒースーーーっっ !!!!!!」


 カリナが悲しそうに呟く。

「汚い絵図らね」

「ええ。やらせた私も後悔してるわ……」

答えたのはミフィで、二人の間にはやるせない空気が漂った。


 ひとしきり互いの名を呼び合ってから、ぶくぶくと長男と次男は海面下へと沈んで行った。二人は海中に姿を押し留めるため、潜水を開始した。


 砂浜から見ている者達には、楽しげな波音の響きだけが残って、それはある意味において静寂に等しかった。


 ミフィはパチンと手を合わせて気を取り直し、年少組に解説する。

「と、まあ、あーいうふーに、お兄ちゃんでも溺れているヒトはすっごく助けにくいの。溺れていて、慌てて、バタバタってしていたら、いつの間にか一緒におぼれちゃうの。だから、もし溺れて、それからお兄ちゃんが助けに来てくれたら、大人しくジぃーっとしておくの。そうしたら、お兄ちゃんが息ができるようにプカッって浮かしてくれるから」

「「「「「うん」」」」」

よろしい。とでいったような納得の笑みをミフィと幼子達は交換した。


 やがてセイとヒースは海面から顔を出して、たっぷり空気を味わってから、皆がいる砂浜へ帰って来た。


 カリナはしれっと、ブラボー、と言い手を叩き二人を迎える。

 ミフィは、ちょうどいいか、といった具合に次ぎの指示を出す。

「次ぎ、カリナ。溺れてきて」

「わかった」


 カリナはトプンと海面に沈んで潜水し、それから、少し沖で顔をだし無表情で両手を振った。

「誰かー。助けてー。溺れてるー」


 ヒースが苦言を呈する。

「おい、ミフィ姉。あれは大根すぎるだろ?」

「確かに、ちょっと酷いわね……。カリナー! ちょっと帰ってきてー!」


 しっかりとミフィの声は届いていたのだろう。カリナはまたトプンと沈んで海面下を潜水して、浅瀬にたどり着くと姿を現し、皆がいる砂浜に上がって来た。


 ミフィはパターンを分類する方針にしたらしい。幼子達に向けて語り始めた。

「まあ、こんな感じで、一見溺れているように見えても溺れていない子もいるわ。でも油断しないでね。平気かどうか何て遠目で見たら分からないでしょ? いつも平気で帰って来るから溺れてないんだろうな、とか思わないで、溺れてるって思ったら直ぐに私達に知らせること」


 言われるまでも無く、ルネが要約して幼子達に口を開けた。

「誰かが溺れてたら〝あーー!〟です。〝あーー!〟。できますか?」

 ばっちり人差し指も伸びている。


 年少組はキャッキャと騒ぎながら声を上げてるルネの真似をした。

「「「「「あーー!」」」」」


 辺りの様子を見たカリナは無意味に頷く。

「順調」

 ミフィとカリナは見つめ合う。

「……」

「……」

 どうしたベイビー。とでも言いたげなのかどうか、変化の乏しいカリナの表情からはつかめないが、ミフィには伝わったのか。彼女は次の指示を三女のルネに向けて与えた。


「まあいいわ。次ぎ、ルネ。行ってきて」

「任せるです」

 

 ルネは髪を濡らさない平泳ぎでスイスイと優雅に沖に出る。それから半円を描いて皆の方へ向きを変えて実演を始めた。


 ルネは 

「おぼれるぅー」

と叫び、そしてザブンと水の中に潜る。


 そして再び海面から顔を出して

「ですぅー」

と叫び、再び沈む。


 海面から顔を出したり引っ込めたりして叫ぶ。

「助けてぇー」    

「ですぅー」     

「息ができないぃー」 

「ですぅー」

「もうすぐぅー」

「ですぅー」

「おぼれるぅー」

「ですぅー」     


 これにはロックが苦言を呈する。

「〝です〟しか耳に残らねー……」

顎と顎がずれるくらいの引きようであった。


 少しミフィが砂浜のほうへと顔を背けたが、直ぐにセイに指示をだした。

「んっ。ふぅ。お兄ちゃん。さくっと助けてきて」

「ん? ああ。わかった」


 セイにはなんとなくミフィの不自然な様子が伝わっていた。

『ミフィ、さき笑ったよな?』

しかしセイは訓練の進行を優先し、黙って沖に向けて走り出した。ルネをわきに抱えて泳いで帰ってくる。


 ルネが最後まで演技しきる。

「はぁ、くるしかったですぅー」


 ミフィが年少組に解説する。

「と、誰かが早く見つけると、こういう風に無事、帰って来れるってわけね」

「「「「「おおぉぉ」」」」」


 年少組の感嘆の声からまずまずの結果だとミフィは頷いた。


 当然のようにミフィは次ぎの指示を四男のロックに与える。

「じゃあ、次ぎはロック。ほどほどでいいから溺れてきて」

「俺は2分は潜れるぞ。きっちりやるよ」

「そう。じゃあ任せるわ」


 ロックがクロールで颯爽と波を乗り越え沖に出た。

 しかし、突然止まり、溺れる演技を開始する。

「あ、かはっ、はっはっ、うっ」

「ゴホッ、が、はっ、まっ」

 ロックは鬼の形相で手足を動かし溺れる様を皆に見せ付けた。


 危機に瀕したときの対抗心が顔に表れている。ここでは終わらないと激しく舞い散る飛沫は高く跳ね上がっている。


「くっ、はぁ、うぅ。かはっ。はぁ。はぁ。」


 しかし、時間の経過と共に、どこか悲しい、どこか絶望めいた表情がロックの顔から滲み出てきた。生へ執着する手足の動きも弱くなり、次第にその力を失って行く。

 ロックの演技は、肺活量に物を言わせて、猫背の背中を海面に浮かせて漂うことで終わった。

 年長組の皆はロックの完璧な演技に面食らっており、同じように見ていた年少組の顔は青ざめ半歩後ずさる。

 

 ミフィは年少組の様子に気がつき、ハッとしてから海に浮かぶロックに向けて叫んだ。

「ちょっ、ロック。ストップ。ストーップ。もういい! 帰って! 直ぐに! 帰って来てー!」


 ロックの耳は海面から下にあった。それを目ざとく見つけたセイは最小限の伝達事項をミフィに伝えて動き出そうとした。

「多分、聞こえてない。行って来る」

 

 しかしセイよりも早く動き出したのはカリナであった。彼女は足元から手のひらサイズの巻貝を拾い、ロック目掛けて振りかぶり、左腕を軽くしならせた。

 カリナの投擲とうてきにより螺旋の巻貝は山なりの放物線の軌道で飛んでいき、ロックの背中に落ちるように当たり、ベチッと水気のある音を立てた。


 ロックはビクッとしてから海面下から顔を上げて、あたりをキョロキョロと見わたした。直ぐに近くで浮かんでる不自然な貝殻に気が付くと、ロックはその貝殻を掴み、つぶさに見つめてから、スイスイと泳いで砂浜に帰って来た。

「俺の救助はねーの?」

ロックは不思議そうにミフィに尋ねたが、ミフィは腕組みをしてロックを咎めた。

「やりすぎよ! ほら、みんな怯えてるでしょ?」


 ミフィはバッと手を広げて、身を寄せ合う年少組の幼子一堂をロックに示した。


「は?」

と言ってロックが年少組の幼子達をみると、彼らは

「「「「「生きてるの?」」」」」

「「「「「もう幽霊かも……」」」」」

などと言い半歩後ずさった。


 自分を指差したロックに、ミフィは頷いて答えた。

「水難訓練だから恐怖心を持ってもらう事も大事だけど、これじゃあ育ちすぎよ」

「わ、わりぃ」

「実際こうなるより全然いいんだけどね。少しは自分の才能を自覚してね」

「おぅ……」


 とぼとぼロックとぼとぼと皆が作っている列の端へ移動を始めた。がふと何かの視線に気が付いて顔を上げると、カリナと視線が交わった。

 ロックは右手に持っている貝殻を見つめてから、もう一度カリナをみると、彼女のクッキリとした笑顔がそこにあった。

 ロックはあわてて受け持っている年少組の幼子の側まで帰り、引き続き砂地を掘り穴を作った。すぐに貝殻を置き埋め立てて、ロックはその上に右足を乗せた。


 不自然な三男の様子を、同じく三女のルネが不思議そうに尋ねた。

「なんで埋めるんですか?」

「こういうものでも武器になんだよ。今日はみんな仲良くやろぜ」

「?」

 ルネに向けたロックの眼差しは真剣なものだった。


 ミフィは、ふぅ、と軽く息を吐いてから、気を取り直してギーに向かう。

「ギーもやる? 泳げるんでしょ?」

「うん 兄ちゃん達と川で練習もしてきたよ」

「じゃあ、みんなに近くで見せてあげたいから、足のつく所でやってくれる?」

「うん。行ってくる!」


 ギーはバタ足でパシャパシャとゆっくり沖にでて、海底に足をつけて砂浜の方へ向き直る。

「ミフィねーちゃーん! はーじめーるよー!」

「いいわよー! 気をつけてねー!」

 元気よく手を振るギーにミフィも元気よく手を振り返し、眩しく微笑んでいる。


 ヒースがセイを横目に苦言を呈する。

「いや、あれじゃ姉と弟のお遊戯だろ……」

「はは。まあ、いいんじゃないか」

 セイは微笑ましい二人に対して穏やかだった。


 幼いゆえに、まだキーの高い声が皆に届く。

「はぁ、はぁ、はぁ、んっ」

「あっ、うっ、はぁ、ダメ、や」

「く、くるし、ん、んん」

「ふっ、んっ、らめぇ」

 海水にも快晴にも溶け出しそうなギーの銀髪が、飛沫と共に乱れて、その数本は額や頬に張り付いている。


 ヒースがじっとりと汗を流しながら、小声でセイと話し始めた。

「なあ、兄貴、俺は何かヤバイものを見ている気がするんだが」

「確かにヤバいな」

「これがショタってやつか?」

「いや、多分、あれは最近の勢力を広げている男の娘ってやつじゃないのか?」


 クォーサイドタウンは田舎町であるから、都会の流行からは少し遅れている。


 だが、ミフィとルネも顔を赤らめ息をこらしてギーが溺れる様を見ていた。


 カリナが最短経路で苦言を呈する。

「姉さん」

「へっ?」

 ブンと首を振りミフィはカリナの方を見る。


 ロックがぶっきらぼうに口を開く。

「そろそろ最後までやった方がいいんじゃねーの?」

 もう一度ミフィの首がブンと振られた。


 さらにもうもう一回振り回してセイに指示をだした。

「そっ、そうね。おっ、お兄ちゃん。急いで! 泳いで!」

 ピッとミフィはギーを指差したが、セイの思考は冷静であり、水面下の状況を把握していた。

『いや、泳ぐには浅すぎだろ?』


 セイは黙って走り出し、浅瀬の波を足でバシャバシャと掻き分けて、泳ぐこと無くギーに駆け寄る。それからギーをお姫様だっこして砂浜に帰って来た。

「こうやってお兄ちゃんが溺れた子を砂浜に上げるでしょ? で、ギーは溺れすぎて意識不明って事で一回ここに寝て。お兄ちゃんは力尽きてるかもしれないから休憩ね」


 セイもギーをミフィの指示に従った。


 結果、セイは少しはなれて体育座り。ミフィの前には意識不明の重症患者のように横たわったギーが寝そべっていた。


 ミフィはギーの側で膝をついて説明を始めた。

「で、皆はギーに近づかないでね。これからギーの命を助けるために蘇生に入るから。あと、このときヒースはキユキさんを呼ぶために走っていなくなっている、と。ヒース、今はテントで二人が寝てるから、邪魔にならない様にアッチの岩をテントだと思って走って帰って来て。それでキユキさんを呼んだ事にするから」

 ミフィは自分達がいる砂浜から少し離れた位置にある、磯を形成している岩場を指差した。


「あぁ……」



 上の空で答えたヒースを、ミフィはせきたてた。


「ほら、行くぅ」

「あっ! 読めたぞ! くそぉぉぉぉ」

 ヒースは足場の悪い砂地に負けないように、太ももを高く上げて、岩場を目指して走り出した。


 ミフィが近くに控えていたカリナに指示する。

「カリナ軌道確保」

「了解」


 うおぉぉぉぉ、と段々と小さく遠のいていくヒースの叫び声が砂浜に響く。


 カリナは寝転ぶギーの顎と額に手を添える。

「ギー、もうちょっと上を向いて」

「こっち?」

「そう」


 ギーは自身のつむじの方向へと頭を傾けた。やたらと顎が上に向いた、不自然な仰向けの形となる。


 ミフィの指示が続く。

「それじゃあ、得意のヤツ、始めて」

「見て、聞いて、触って」

「感じて」

「……」

「……」

「見て、聞いて、感じて。1、2、3」

「呼吸は無かったって事で」

「呼吸確認、呼吸なし」


 ぅぉぉぉおおお、と皆に近づくヒースの叫び声が聞こえる。


「じゃあ人工呼吸。はじめて」

「わかった」


 カリナがギーの鼻をつまと

「へ」

と言ってギーの口が開き、パチリと目が開いた。


 カリナはそっとギーに囁いた。

「口呼吸」

 ギーパチリと瞬きで頷き、はぁ、はぁ、と静かに呼吸をはじめる。


 「目も閉じて。意識不明だから」

重ねて与えられた指示を受けて、ギーの瞳は閉じられた。


 カリナもゆっくりと瞼を下ろして、自身の口をギーの口に近づけはじめた。


 おおおお!!!!!、とけたたましい叫び声が皆の元に到着する。


「まぁぁぁったぁ! 俺はテントまで走ってきた! 今、ここにはキユキさんがいる仮定だ」

 ミフィはパチクリと瞬きしつつヒースを見る。

「でも今キユキさんいないし」

「今まで散々、仮の話でやってきただろ! 何でここだけ現実的なんだよ!」

「もう、うるさいわね。練習が進まないでしょ」

「いや、見過ごせない。ちゃんとやれ」

「ちゃんとやってるでしょ? キユキさんはここからクォーサイドタウンまでの搬送役よ。蘇生はちゃんとここでやらないと。それともヒースは何か変な事でも考えてたの?」

「考えてない。ちゃんとやれって言ったんだ」

「ちゃんとやるの?」

「当たり前だ」

「そんなにちゃんとしたいんだ?」

「ふざけてるのか?」

「そ。流石に手前で止めようと思ってたんだけど。カリナ、ギー。ヒースがちゃんとやりたいって」


 ギーがバチっと瞼を開けて声を上げた。

「えー! ヒース兄ちゃんがカリナ姉ちゃんとチューするのー!」


「「「「「えー!」」」」」

幼子達も釣られて叫ぶ。


 カリナが細くキレ長い目を使い、冷静に周囲をサーチした。

 一つ。三男のロックが少し嫌そうな顔をしている。二つ。ルネが出来のいい陶芸作品を見るかのように横一文字の目で頷いている。三つ。幼子達は期待や恥じらいなどを表情に浮かべて刮目している。


 そのさなか、ひときわ不自然にニヤリと歪んだ口元をカリナは捉えた。薄気味悪い鎌のような両目をもって、長男のセイと長女のミフィは俯いている。


『他者可動式、連携誘導。謀られた』

 カリナは瞬きは、一瞬で事態を飲み込んだ。ギーによる叫び声こそが、セイとミフィが水難訓練の中に仕込んだ罠であると理解した。


 一瞬眉を歪めるが、カリナは冷静さを残している。未確認の最後の一人に視線を走らせた。

『ヒース』

 カリナが一瞥をくれたヒースは、氷の中で固まっているかのように動いていない。

『危うい。飲まれる』


 カリナの視界は暗転し、思考の脈動が加速をかけて、周囲とは乖離した時間軸の中へと突入する。周囲をさらに見るが、回答が見つからない。あるのはセイとミフィの歪んだ口元だけだった。……。


 ヒースは固まったまま一切動かない。しかし、引き延ばした時間の中で、声なき声がカリナの脳裏でこだました。


――兄貴は兄貴でイカれている――


『まだ返せる。キスにはキスで。イカれた答で……』

 未来の縮図がカリナの瞼の裏で展開した。同時に進路も生まれている。


 カリナは周囲の観察を怠らず、騒ぎの隙間から、ゆるーく、ゆるーく、首を左右に振り始めた。


 やや不自然な動作からか、動きに応じて歓声はなりを潜めていき、静寂に塗り替えられていく。気が付けば、皆が自然と次ぎの発言を、カリナに明けわたしていた。


「ううん。違うの。ヒースとギーがチューするの」


 声に甘みを、瞳には真心を。カリナは花束を送る様にギーの唇にプニッと人差し指を当てた。


「「「「「へ? えー!」」」」」

幼子達は釣られて叫ぶ。


 固まっていたヒースの時が動き出す。

「だぁー! もう! なんでだよ!?」

全身からフルサウンドを響かせるような叫び声だった。


 ギーは自分の唇のほうを見てしょんぼりとカリナに告げた。

「なんか嫌な気持ちがするぅ……」

「気のせい」

 カリナは素早く被せ気味に遮った。

「これは大切なこと」

 そして、有無を言わせぬ菩薩のような笑みを送る。


 もはや頷いているカリナを前にしてギー誘発されるように頷いた。

「う、うん。わかった」

 ギーからは砂浜に寝転がり、瞳を閉じる選択肢しか出てこなかった。


 年少組が騒然としていたが、ルネはOH、NO、とでも言いたそうに首を横に振っている。ロックはドン引きしている。


 ミフィが、はぁ、とため息をついて、やっつけ仕事を片付けるように口を開く。

「じゃあ、ヒース……。続けて」

「〝じゃあ〟じゃねーよ! おかしいだろ!」

「ヤなのー?」

「嫌だよ!」


 ギーが薄目を開けて儚げにヒースに問う。

「ぼく、死んじゃうの?」

「お前も止めろ!」


 体育座りをしていたセイが、ははは、と少し笑い終刻を告げた。

「終ろう。ミフィ。切り替えしたカリナに軍配だ」

「ちぇぇ。あと少しだったのに」


 カリナが無表情に兄と姉を非難した。

「二人が一番ふざけてる。ちゃんとしたら」

 ヒースが続く。

「そ、そうだ。ちゃんとしろ」


 カリナの声は出遅れた援軍には無慈悲だった。 

「さっき固まっていたのに、もうイキり出すの?」

「うっ」

 カリナを除く年長組はこぞってニヤリとしてヒースを見た。


 ミフィが表情を切り替えて続きを始める。

「はい。じゃあお兄ちゃんが寝て」

「ああ」


『ったく。これで〝普通にできますよぉ〟みたいな空気で始めるんだろ? 』

 ヒースはどこか冷静であったが、どこか棘のあることをブツブツと心で呟いた。


「で、溺れたけど、なんとか引き上げられた人がここにいると。まずは気道を確保ね」

 ミフィはセイの顔を空に向け、額と顎にそれぞれの手を当ててグイとつむじ方向に動かした。

 正中線が首筋をぬけて鼻あたりまで真っすぐになる。

「それから呼吸があるか確認ね。見るのはお胸やお腹が動いているかどうかね。聞くのは息の音。この二つを感じるの。簡単に言うと、見て、聞いて、感じるって事ね。これを3秒間する。1、2、3」

「ここで……呼吸が無かったら、さらに7秒。6、5、4、3、2、1。呼吸があれば私達は経過を観察するわ。で、呼吸がないときね。こうなると、もう、ほとんど危ないんだけど、一応、ここからの手順もあるの。それじゃあ、呼吸のない場合ね。コホン。呼吸なし。心肺蘇生に入る」

 ミフィは目を瞑っているセイの口に自身の口を近づける。

「「「「「ああ」」」」」


「このとき!!」


 ミフィが語気を込めて叫び皆を睨む。

 皆の沈黙を確認してミフィは続きを喋る。

「私は適度に息を二回送る」

 一回、二回、と言いながらミフィはセイの口に口を被せる。

「これが終わると次ぎは心臓マッサージね。カリナ、解説を始めて」

「両手を合わせて、みぞおちの上に。腕を一直線にして適度な力加減で30回押す」

 カリナはセイのみぞおちの上には手を置かず、少し空中に浮かせて数回のジェスチャーをしめした。

「で、心臓マッサージが終わるとまた人工呼吸、それが終わると心臓マッサージ。これの繰り返しね。これを5分くらい繰り返して起きなかったら死んじゃうの。死ぬって言うのは、みんなならもう分かるわね。大人になって30歳くらいになったときに起こる、冷たくなって動かなく成るやつね。溺れたときの練習はこれでお終い。みんな分かった?」

「「「「「うん……」」」」」

 年少組の幼子達は気落ちした声を返した。

「じゃあ、あと最後に、みんなにホントの事を教えてあげる」

 ミフィはそれでも声を止めなかった。

「私もカリナもお兄ちゃんもヒースも、実際に人口呼吸とか心臓マッサージはした事がないの。だから、さっき見せた人工呼吸も本当はどれくらい息を吹き込めばいいのか知らないし、心臓マッサージもどれくらいの力で胸を押せばいいのか知らないの。だから溺れた後で、どうにか生き返るとか、私達がいるから大丈夫だとか思わないでね。気をつけて遊んで欲しいっていうのは、こういう事をしなくて済む用にして欲しいって事ね。ルネ、ロック、わかりやすくお願い」


「ヤバイ状況になっても私達じゃ助けられないです」

「自分の身は自分で守れって事だよ。まあ、俺らも注意はすっけどな」


「よいしょっ、と」

と言って、カリナがロックの右足をもち位置を少しずらした。さらに地面を掘って貝殻を取り出し、ロックの両手に握らせる。

「どこから何が飛んでくるか分からない世界だからね」

カリナとロック。互いに両手を取りあって、ゆっくり上下に握手。握手。

「うげぇ」


「っんっ」

 ミフィが皆に背を向ける。

 突如として振り返る長女の姿は誤魔化しきれない疑問を皆に生んだ。皆は不思議そうにミフィを見る。


 セイが実情を明かす。

「おいミフィ、お前がそこで笑ったらダメだろ」

「だって、お兄ちゃん。〝うげぇっ〟て、〝げ〟に〝う〟までついたんだよ?」

「いや、笑うところはそこじゃないだろ……んグっ」

「ほらぁ」

「止めろ。変な笑いの種を撒くな」

 セイは不機嫌に答えたがミフィにつられて笑い始めた。


 三男のロックが手元から貝を砂地に落として、いじけたような声で訴えた。

「んだよ。俺はちゃんとやったのに」


 これを慰めるのは次男のヒースだ。

「お前のこと笑ってるわけじゃねーから。あの二人が少しイカれてるだけだ。おい。もういいだろ。そろそろちゃんと遊ぼーぜ」


 切り替えるために声を張ったヒースを三女のルネが横一文字の目つきでじっと見ている。

「なんだよ?」

「なんにも無いですよ♪」

「くっ。もういいだろ。遊ぶぞ!」


 ミフィもこの提案には同意した。

「そうね! それじゃみんな行こっか?」

皆はそれぞれ波打ち際へと動き出した。


 ただ、カリナとクロエは貝殻を再び埋めるために、その場に残っおり、セイもその場に留まっていた。 

「なあカリナ」

「なに?」

「どこから気がついてた?」

「虫のしらせみたいのは最初から」


『それで見て聞いて触って、だったのか』

セイは特異なスタイルでの横槍に今一つ実感が沸かなかったが、あるいは可能性としては存在するのでは無いかとも思えた。


「あっ、でも」

「?」

「ヒースの射程はもっと広かった」

「ん? あいつは固まってなかったか?」

「衝突時刻の誤認。でも注意の矢文は届いてた」

「マジか……」

 セイは腕組みして少し首を傾けがっかりそうに呟いた。

 カリナはクスリと一つの声を落とす。

「マジだよ」


 クロエが貝殻を埋めて満面の笑みを浮かべ、それから波打ち際に走り出し、カリナもそれに続いた。


 セイはぶらりと歩き始め、浜辺に散る皆が見やすく、救助に向かうに程よい位置に移動した。

『俺はさらに成長したヒースに提案書の事を伝えないといけないって事か……。無傷で終われるのか? 無理か……。いや、何とかなるか……。この調子だと、ぎりぎりまで引っぱっても、ヒースの告白はないって思ったほうがいいよな……。って言ってもなぁ……』


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