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イグニション前の速度より  作者: 紀
【夏の章】
37/82

羅針盤に落ちた夜 Bパート

 孤児院の庭、石造りのベンチに座る14歳のミフィが15歳セイに尋ねる。

「どう? 何か思い出した?」

「いや、今、海に着いた所だ」

「さすがに遅くない?」

「悪い。色々周辺事情とかも確かめてたんだよ」

「まだ海まで日にちはあるから明日にする?」

「とりあえず、思い出せるところまで思い出させてくれ。調子が出てきた」

「うん。わかった」


 セイは今まで思い出した事を呼び水として、さらに記憶を呼び起こす。



◇ ◇ ◇


 到着は歓声に包まれていた。きれいだった。はしゃいだ。正直、マジでびびった。ただっぴろい青一色だった。ダメだ。この辺は記憶に無い。無い事は無いんだけど感動と歓喜が強すぎるな。特別に思い出せって言われても厳しい。ミフィもアキットも喜んでただけだろ……。

 

 俺達は海で遊んだ。海水を口にして、水を掛け合って、波に漂って……、それから陸に上がって少しフラッとした。俺達ははしゃぎ疲れたんだ。川で泳いだときと同じだ。水の中は疲れる。そんな感じだった。


「ちょっと休んだほうがよくない?」

「ああ、俺もそう思う」 


 俺達は日陰に移動した。アキットがクテンって感じで秒で昼寝を始めた。午後の2,3時くらいだったか……。


「おにいちゃん、先に寝て」

「わかった。無理そうなら直ぐに起こせよ」

「うん。わかった」


 有無を言わせないような雰囲気でミフィから指示が出た。俺は素直にそれに従った。ここで譲り合うより一分でも早く復帰した方がいいと感じたて俺はすぐに昼寝を始めた。しばらくして、眠っていた俺の胸元が揺すられた。まだ、はっきりとしない視界の中でミフィから生気のない声が届いた。


「ごめん。もう無理」

「分かった。もう大丈夫。ありがとう」


 一時間くらいか? でも頭も体も思ったよりスッキリしていた。ミフィの引き際は完璧だった。それから、すぐにミフィは涎をたらしているアキットの横で眠りに付いた。


 俺はそれ以上何もする事がなくて、ただ水平線を眺めて過ごした。遊ぶのも良いけど、頭を空っぽにして見るだけって言うのも良かった。波の音を聞いてゆっくりとした時間を過ごした。ミフィはいつのまにかアキットと向き合うように寝ていて、同じように涎をたらしていた。


 かわいい。でもここは俺の夏の思い出で、多分関係ない。


 二人は寝たままだったけど、日が沈みかけてきたから俺は一人で砂浜の高い位置にテントを建てた。それから、ミフィとアキットを起こして計画どおり近くの河口に向かって塩を落とした。スケジュールは順調だった。暗くなる前に焚き火を起こして、乾麺を茹で、三人で海水のパスタとスイカを食ってって……。

 

 この辺りは違うだろ。アキットもはしゃいでただけだろ……。


 夕食が終わると暑苦しいからすぐに焚き火は消した。月がきれいな快適な夜になった。寝すぎたせいか夜の海が綺麗だったせいか分からないけど、俺達の目は妙に冴えていた。だから、今度はただっ広い砂浜の中心に、気分よく位置どりして、月夜の水平線を眺めていた。


 満月の光りで雲の輪郭もはっきりとしていた。雨は降りそうにない。だけど少し大きめの雲が月を覆うと夜の海は暗くなって、俺達は月が顔を出すのを待ち焦がれていた。


「海が光りを反射してたからね。多分、その差もあると思う」

 ミフィの言葉に反応したのは、アキットだったけど……

「そうなの?」

「多分って言ったでしょ? この世界はまだまだ分からない事も多いの」

「ふーん」


 他にも話してたけど、この程度の事しか言ってないと思う。思い出せない部分は仕方ない。 


 ともかく、俺達は月を待ち焦がれていた。だけど期待を裏切り、月とは別のものが出てきた。訳の分からない地を這う黒い影が海から出てきた。そう。波打ち際から奴が近づいて来たんだ。


 俺は正直、一体何が出てきたんだって思った。俺は万一に備えて近くに置いておいた剣を引き抜いた。


 状況判断。ここから俺は修練で身に付けた戦いの思考回路を動かし始めた。


 まず、戦うわけにはいかない。逃げ一択だ。ミフィもアキットも戦えない。1対1は分が悪い。俺は知っている。こういうときは殿しんがりが必要だ。俺は、アキットとミフィを背中に置いて、先んじて黒い影の様子を見た。


 〝ガルフ〟じゃない。〝ガルフ〟がいるのは遥か南の防衛線だ。海から来るなんて聞いたこと無い。何より〝ガルフ〟より背が低すぎる。


 奴が余裕の動きを見せている内に俺は思考回路を加速させた。


 犬とか野生の動物の中には、意図的に逃げる奴を追いかける習性をもつ奴らがいる。目を離すのも良くない。見落としている事はないか。力んで無いか。足が少し震えてる。


 俺は少し余分に膝を落として、大地を掴む足に活を入れた。


 チクショウ、砂地か……。

 

 そして、俺と奴はジリジリ距離をつめ合った。ジリジリと、着実に。確実に。ああ。これは嘘だ。一度前に出た俺は一端ジリジリ下がった。


「おにいちゃん」

 ミフィの脅えた声が背中から聞こえた。ミフィは俺の思考が整ったタイミングを見逃さずに声をかけたんだろう。俺は一瞬だけ振り向く。


 なるほど。見落としはあった。


 ジリジリ下がれる状況じゃない。アキットがミフィの腕を掴んで目を閉じている。


 俺は両手に剣を握り締めて今度こそ奴とジリジリ間合いを詰め合った。


 俺は慎重に、少しづつ距離を詰めた。相手は、ズズズっと何かを引きずるように近づいてくる。ひたすら不気味な動きだった。馬鹿みたいだけど、俺はあの時、命の危機を感じていた。

 

 俺は冷静に伝えた。

「アキット。そのままでいい。深く息を吐け。深呼吸しろ。ミフィ。一緒に逃げる隙を見逃すな」

「分かった」

「分かってるな?」

「……。……。分かった」


 ミフィの声は小さかった。ミフィは冷静だった。刺激を与えない事を心得ていた。ただ、俺は真剣に伝えたし、ミフィも馬鹿みたいに険しい声だった。


 今度こそ俺と奴はジリジリと距離を詰め合った。すり足で、少しづつ、着実に。

 互いに様子見する奴と俺の動き裏切るように、月にかかった雲が流れて俺達の姿は砂浜に浮かび上がった。一度目を疑ったが、象徴的なその甲羅から、俺は奴をそう呼ぶのが相応しい気がした。


「こいつ、カメか?」

 後ろに立つミフィに確認をとる。ミフィからも見えたらしい。

「嘘……でしょ?」

 ミフィの声にも困惑が混じっていた。当てにならない呟きは端的で完璧な情報を俺に送った。こいつはミフィにとっても未知の生物らしい。だとしたらまずい。


 アキットも確認したんだろう。第一声が聞こえる。

「すごい! おっきい!」

「ダメ。静かにして」

 ミフィはアキットを後ろから抱くように捕まえて離さなかった。多分。カメと向き合う俺の視界にアキットが飛び込んで来なかったから、そうだったはずだ。


 アキットは嫌そうに

「離して」

とか言ってた。


 俺はとりあえず

「落ち着け。近づくな」

とか言った。


アキットは

「うぅぅん、ぅぅぅ」

と呻っていた。多分、ミフィの拘束から逃れようとしているんだろう。捕まえられた年少組の奴等は稀にこの声の後に逃げ出す。


 さらにアキットから

「うぅぅ……」

と拗ねているような声が聞こえた。これは脱走が失敗に終わったと時の声だ。不測の事態は起こらない。ミフィの拘束は完璧だったのだろう。


 海ガメは遅かったから事態は止まったかのように思えた。しかし、ミフィの一言が時を動かした。


「お兄ちゃん 何とかならない?」

〝何とか〟の意味もすぐに分かった。

「お、お、おお、俺だよな……」

 俺がやるのか?って言いそうになって止めた。俺しかいない。当たり前だ。前にいる奴に当たりたく無いけど、当たり前だ。目は口ほどにものを言う。

「ダメ?」

 譲歩のダメ押し。俺はミフィの提案に折れるしかなかった。


 剣の先でつついてみる。まず思いついた方法がこれだ。

『噛ないよな』

とか思いながら俺は剣の切っ先をカメに向けた。傷つけるつもりは無かった。このカメが安全かどうかの確認をしようと思った。出来れば鳥みたいに、さっさと逃げてくれとは思っていた。


 アキットが叫ぶ。

「カメさん切っちゃダメ!」

「いや、つつくだけだから」

「カメさん、つついちゃダメ!」


 とりあえず、剣が物騒に見えるっていうのは分かる。俺の手元が狂って、少し刺さる可能性もある。ありえない話じゃない。刺さったところで暴れだすかもしれない。手負いの獣ほど厄介なものは無い。俺も冷静じゃ無かった。


 仕方なく俺は自分の恐怖心の方を殺した。幸い、今の所、何もされていないというのも一つの安心材料だった。

「回り込む。一緒に動け」

「後ろから見てみよ?」

ミフィの声はアキットへのものだった。俺達はカメの背後をとるように一緒に動いた。


 俺達に目もくれてないので、俺は足元の砂を掴んで、尻尾に向かって砂をそっと下手投げした。

「かけちゃだめ! カメさんにいじわるしないで!」

 それくらいは許してくれって心底思った。右手の剣が物騒か?。いまさら、鞘を取りに行くのか?。そこにはカメがいるんだが……。


 結局、尻尾に砂をかけても海ガメは特に反応しなかった。ただ、気持ち俺達から逃げているだけのか?。遅いから分からない。結果としは前に進むだけのカメだった。


 次ぎ手段は砂をかけてみるというものだった。痛くも痒くもない安全なコミュニケーション。苦くも甘くも無いけど、いくらかクスリになってくれ。俺はそう思って、しゃがんで砂を掴み、カメの後ろ脚に、手に、甲羅に、下投げでそっと手の中の粉を放った。


「ダメーーー! バカバカバカ! もうキライ! 絶対キライ! セイお兄ちゃん大っキラ。んぐっ」


 大声は止めてくれ。刺激するかもしれないだろ。そう、思う前にミフィが右手でアキットの口を塞いでくれた。


 アキットがわめいていた所で俺が止まる事は無かった。コイツが安全か否かが知るべき事だからだ。嘘だ。俺の傷は深かった。なにより憎しみ満ちたアキットのあの目は記憶に焼きついている。


 俺は傷つきアキットの瞳で抉られて、止まっていた。だけどその目が俺に覚悟を集めた。結末を二つ用意した。コイツが安全か、俺がやられるかのどちらかだ。


 少し格好はつけてたと思う。ここまで遣り合って何も起こってないから多分、大丈夫だろうとも予測していた。安全圏に近づいて調子に乗った若き日の俺がそこにはいた。


 ともかく、最後にやらないといけないことは決まっている。ラストミッションはリアルコンタクトだ。つまり物理的な接触だ。俺の右手には今だ剣が握られている。つまり左手でカメと触れ合う必要がある。アキットを野放しにすると、絶対触りに行くからこのミッションは外せない。


 俺は海ガメに近づいた。甲羅に、ほんの一瞬、チョコンと手で触った。ついでに、カメの手とか頭とかもちょんって触った。噛んではこない。


 やっとカメが動いたから、俺は鞘を拾って剣を収めた。それから鞘にしまった剣をカメの口の前でゆっくり動かしたりしてみた。噛んではこない。


 頻度を上げる。しゃがんで、多角的に、あらゆる角度に回り込んで、慎重に慎重を重ねて何度も何度も海ガメに触ってみた。しゃがんだ状態で反復横飛び。カメの周りを動いた。噛んではこない。

 

 アキットは

「うぅぅ」

と唸っていたが怒鳴る事は無かった。触るのは良いらしい。

 

 十分にカメと接触したあと、俺は一度立ち上がって深呼吸した。

「お、おにいちゃん大丈夫?」

「あと少し待ってくれ」

 ?。ミフィは俺と目が合うと直ぐにそっぽを向いた。


 最後に、これだけはどうしても嫌だったけど、俺は海ガメの口の近くまで自分の手を出して素早く引っ込めた。もう一度、出して引っ込める。出して、そして、引っ込める。段々と出している時間を長くしてスッと手を引っ込める。出して引っ込める。このでかいカメは最後まで噛み付く事は無かった。


「お、おにいちゃん、いけそう?」

 俺はまたミフィのほうを見た。するとミフィはまた直ぐにそっぽを向く。よく見るとミフィはプルプルしていた。


 ……今になって思う。気のせいか? ミフィ……お前笑ってただろ?


 まあいい。緊迫した場面ってのは傍から見たら往々にしてまぬけだ。いずれにしても確認は終わった。俺はこのカメは安全だと結論付けた。

「多分、大丈夫。このカメはそこまでヤバイ奴じゃないと思う。牛くらいは安全だと思う」


 アキットはミフィの拘束から放たれてカメを撫で回した。

「おお」

とか言って嬉しそうにカメと握手していた。

「顔と口の近くには手をやるなよ。誰だってうっとうしいだろ?」

「うん」

 先の憎しみに満ちた目が嘘みたいに消えて、よく開かれた目は月明かりをくまなく反射していた。アキットは手に足に甲羅に尻尾を撫でて、そして頭を、多分、頭と呼ばれる所を小さな手の指だけで優しく撫でていた。

 

 俺は再び剣を抜いてすぐ傍で一緒にしゃがんで油断なく見守っていた。俺は心底、アキットの頭はイカレてるんじゃないかって思って見守っていた。


 鳥でも猫でも犬でも兎でも、かわいい動物はクォーサイドタウンの近くに溢れている。それぞれねずみの駆除とか牧羊犬――こいつはついでに牛さえも煽るけど、それでも一定数、活躍もしている動物もいる。食べるために殺すこともあるけど、それでも俺は単なる肉のかたまりには見えないし、かわいいものはかわいかった。

 で、このでかいカメは何なんだ。何でこいつなんだ?

 

 答えなんか見つかるわけも無く、邪魔するわけにもいかず、俺は見守るだけだった。守れているのかも分からなかったけど。


 しばらくカメは砂浜を彷徨って、アキットも一緒も一緒について行きながら撫でいた。


 それからやっと、カメは向きを変えて海に帰って行ってくれた。アキットも追いかけて海に入ろうとしたから腕を掴んで止めた。しばらく暴れるから俺は怒鳴って止める。

「止めろ!」

「セイお兄ちゃんジャマ! んぅぅ離して。はなして! かえぇっちゃう!」

 アキットは暴れて、俺の手を叩いたり、掴んでいる指を一本ずつ離そうとしたけど、俺がその手を離す訳もなく、押し問答が続いた。


 「お兄ちゃん!」

ミフィが俺の方を見て頷いた。

 俺は夜空に向かって深呼吸して心を落ち着かせた。

『最低限の力で……』


 俺はアキットの頬をビンタて、アキットはその場で泣き崩れた。すぐにミフィがアキットに駆け寄って抱きしめていた。


 アキットがひとしきり泣いた後で、ミフィが未知の生物の危険性だとか、夜の海の危険性をそれっぽくアキットにアキットに分かりやすく説明した。しばらく話しを聞いて、夜の海の危険性の話は、川の危険性を元にした作り話だと分かった。

「いい?。あとお兄ちゃんを叩いたらダメ。孤児院の皆も叩いたらダメ。叩いていいのは、他の弟や妹のために1回だけよ。お兄ちゃんはちゃんとそれを守ったでしょ?」

 ミフィによる必死の説得と握手の催促により、アキットは俺に和解の手を差し出した。今だ気は昂ぶっていたのだろう。だがこいつは好かん、とでも言いたそうな顔での握手だった。


「お兄ちゃん、また来ようって……」

俺の耳元でミフィは囁いて、俺はほとんどそのままアキットに伝えた。

「アキット、また会いに来よう」

「えっ……。うん!」

アキットの笑顔は半分は海の方を向いていたし、コクンと動く頷きはぜんぶ海に吸い込まれた。先に見えた戸惑いは、アキットも多分、この場所がそうそう来る事ができる場所じゃない事を分かっていたんだろう。夜の海に飛び込もうとするわけだ。 

 

 実際、俺にはアキットのその笑顔より眩しい何かがあった。当時の俺はもう孤児院の皆が好きだった。俺がそのとき特別な意味で好きなのはミフィで、普通に好きなのは弟と妹だった。


 ただ、あいつら以外でいうと俺が好きなものは〝薄い恋愛小説〟だった。


 アキットも孤児院のみんなの事は好きだった。だけど、アキットがもう一つ好きなものは、あの馬鹿でかいカメなんだって。俺にはそれが少し羨ましかった。アキットは俺より何か偉大なものを好きになっている気がした。


 だから、俺は。〝薄い恋愛小説〟を手放さないと心に誓った。俺も俺なりに、もう一度ちゃんと読もうと、ちゃんと〝薄い恋愛小説〟に向き合ってみようと、このとき思った。あのときの海への遠征は間違いなく成功だと思ったし、俺のやり方は間違ってなかったって思ったからだ。


 それから、俺達三人はテントに帰った。アキットはテント中央に陣取り直ぐに眠りについた。はしゃいでいたけど、やっぱり疲れていたんだと思う。


 俺はテントの天井を見上げていたらミフィから血の気のない高い声が届いた。

「お兄ちゃんはアキットの事が好きなの?」

「はぁ?」

 俺はずいぶん間抜けな声を出したと思う。この後、夜の海で俺とミフィの2回戦目がはじまったんだけど、この時アキットは寝てたからここから先は関係ない。


 アキットはテント内で満足そうに涎をたらして寝ていたから多分関係ない。もう少し思い出すと、テント中央に陣取り、一晩中、俺とミフィの間にきっちりと一つの仕切りをつくっていたから関係ない。

 涎と水。涎と海。関係があるのか。いやないな……。ないだろ?……多分。だからこれが、アキットの二年前の海のすべて。

 起きて直ぐに帰ったわけだし。


◇ ◇ ◇


 孤児院の庭、石造りのベンチに座って二年前の海を思い出していた15歳のセイは思う。

『今の所で何か手がかりがあったか?。分からないな……』

 孤児院の庭でベンチに座る14歳のミフィはセイに再び尋ねる。

「なにか思い出した?」

「いや。分からない。俺達は、まともにやってのけたんじゃないか?」

「うん。だと思うんだけど……」

「正直、ミフィ以上の記憶力があるかって言われると自信はないんだけど、一応、全部話してみるか?」

「うん」


 それからセイは思い出した夏の海への旅路を全部ミフィに話した。それは、ミフィが見たものと全て一致していた。


 ミフィはセイの話しを聞いて真剣に結論を下す。

「やっぱり、ずっと一緒だったから私と同じね」

「そうか……」

「それじゃあ、また何か注意事項が出てきたら伝えるから」

「分かった」


 話しこんだセイとミフィは修練を行なわず、直ぐに温泉に向かった。

 温泉へ向かう道中ですれ違ったルネに

「若者の家族湯離れは深刻です」

と呆れるように見送られた。

 ルネに加えて、アキットの着替えが入ったバケットの術印も光っており、行動を共にしているロックとギーの足元をそれとなく照らしている。

 セイはルネ達が帰ってくるタイミングが遅いことから何となく思う。

『そういえば、最近、少し遅かったような……。いや、確かアキットの点灯時間が800秒くらいだから、関係はないのか……』


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